蜜蜂マヤの冒険
次の日の朝、広域警戒網の試験運用をしてみることになった。
以前までは、土竜穴を扇状に掘り進めて、バッタの群体を歩哨として配置していたんだけれど、これには幾つか欠点があった。
1つには 歩哨のバッタが天敵に捕獲されて数が減っていくこと。
やっかいなのは鳥類で、上空から飛来してきたのを察知した瞬間に、すでに嘴に捕えられて餌にされてしまう。他にも、カマキリや野生の土竜による被害も多数でた。
2つ目は、歩哨のバッタが持ち場を放棄してしまうことだ。
群体をコアが単体指示して配置に着かせているけど、その命令は
「この周囲に留まって、脅威となる生物が視認できたら、所定の土竜塚に避難せよ」
である。
初めのうちは問題ないけど、やがてバッタの中の「この周囲」が広がっていく。中継地点の土竜塚から10m以上離れると、リンクが切れてバッタは自由になる。そしてどこかに飛んでいってしまう。
稀に元の場所に戻ってきて、リンクが再接続することもあるけど、それは滅多に起きない。
徐々に歩哨の数は減っていくことになる。
最後に、偶然でも故意でも土竜塚を踏み抜けば、侵入者扱いになる。
一見、撃退ポイントが入って美味しいように思えるけど、侵入者が居る限り、ダンジョンの中で設置ができなくなる。また、探知や鑑定に優れた者が調べれば、その土竜穴がダンジョン化していることに気がつくかもしれない。
敵に与える情報はできるだけ少ないに越したことはない。
というわけで、新しい広域警戒網を構築してみた。
まずノーミンが、森の生き物を召喚するドルイド呪文で、蜜蜂を呼び出す。
「森に住みし我等が同胞よ、この呼びかけに答えて姿を現したまえ、サモン・ウッドランド・ビーイング!(森の生物召喚)」
ちなみに雀蜂にする案もあったけど、副産物として蜂蜜が期待できるので、蜜蜂になりました。
召喚の魔方陣から現れた群体(蜜蜂)を、召喚者であるノーミンの許可をもらいつつ眷属化した。もしこのときに召喚者の許可がなければ、術者とのLVによる対抗勝負になるらしい。
スウォーム(ハニービー):蜜蜂の群体
種族:昆虫 召喚ランク1 召喚コスト10 眷属化コスト5
HP1 MP1 攻撃0 防御0
技能:飛行 特技:混乱付与(毒)
備考:混乱付与(毒) 3mx3mx3m内にいる敵に状態異常(混乱)を付与(確率低)
ごくまれに敵を毒状態にすることがある。
バッタ(蝗)と蜜蜂の大きな違いは、その帰巣本能にある。
社会性のある蜜蜂は、本能的に巣のあるダンジョンまで戻ってくる。これはリンクが切れるほど離れても有効だ。
ダンジョンに戻ってきさえすれば、再度リンクできるので、周囲の情報を聞きだせる。
蜜蜂にとって、蜜の取れる花の位置と、外敵の襲来は、なんとしてでも巣に持ち帰るべき重要な情報なのである。
「養蜂するんなら巣箱が必要だな」
今は群れて飛び回っている蜜蜂を見ながらノーミンが呟いた。
「巣箱か、すぐには用意できないねー」
それでも蜜蜂が翅を休める場所は必要だね。リンゴ部屋から外に通じる通路の途中に横道を拡張して、そこを養蜂箱の設置予定場所に決めた。
「コア、通路に短めの分岐と6マス部屋を拡張して」
「ん」
「親方チームでそこの壁に細い横穴を幾つか掘って」
「ん」 「キュキュ」
巣箱ができあがるまでは、壁の穴で我慢してもらおう。
養蜂部屋に移動した蜜蜂の群体は、さっそく壁に開いた穴に潜り込んで巣を造り始める個体と、外に建材と蜜を採集しに行く個体とに分かれた。
「しかし女王蜂がいないっすよね」
ワタリが珍しく鋭い意見を呟いた。
「こっそりディスられたっす」
確かに女王蜂がいないと、蜂蜜を大量に溜め込まない可能性が高いね。
「コア、群体(蜜蜂)に「同族支配」をカスタムできる?」
「むりぃ」
やっぱりそうか。もしできたら女王蜂が含まれた群れが呼び出せるかと思ったけど、これができたら戦士長あたりを族長に格上げできちゃうから無理だよね。
「そしたら、コア、群体(蜜蜂)に「巣別れ」をカスタムできる?」
「・・・できたぁ♪」
おっと、これは成功したのか。呼び出された群体には女王蜂候補の個体が混ざっていた。
すぐさま、周囲の働き蜂が、女王蜂候補の周りに集まって、巣つくりを始めた。
「よしよし、これで行けそうだね」
あとは養蜂箱を用意すれば、蜂蜜が採集できるようになる。
甘味としても、お酒の原料としても、薬用としても使えるから、今から楽しみだ。
「はにはにー」
DPの推移
現在値: 1270 DP
眷属化:群体(蜜蜂) -5
拡張:1マス廊下、6マス部屋 -20
召喚:群体(蜜蜂)カスタム -15
残り 1230 DP
召喚リスト その52
本文参照のこと




