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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第6章 エルフ編
127/478

解答者の中に正解の方が

 「ここすごいね、治癒と安眠の薬草が群生してる」

 6人は情報にあった地下墓地の分岐の部屋で、薬草の採集に勤しんでいた。


 「半分ぐらいにしておけよ、枯渇させるとギルドが煩いぞ」

 「わかってるって、それより見張りしっかりね」

 「それこそ今更だな。俺は採集はしない」

 「薬草と毒草の区別がつかないもんね」

 「さあ、本命は次だ。そろそろ切り上げて下に行くぞ」


 方針が決まると行動は素早かった。

 採集した薬草を各自の荷物に分配すると、戦闘準備をして探索モードに移行する。

 警戒・罠探知・魔法探知をこなしていくスピードは、リーダーが指示する軍隊と違い、家内制冒険業とも言える手際の良さだった。


 「ここ、階段との境に落し格子の罠があるね。作動装置は別の部屋みたい」

 「玄関ホール自体に罠は無し。扉も鍵なし、罠無し、紋章も無し」

 「準備できたら偵察班だすよー」

 「ちょいまち、位置変える」

 「防御呪文かけたよ、持続は10分ね」

 「扉開けまで5秒・・3・2・1・ゴー」


 召喚の呪文と同時に両扉の片方が、ほんの僅か押し開かれた。

 「フェレット偵察班、いきまーす」

 召喚された2匹のフェレットが、扉の隙間から奥に侵入していく。

 「いつもフェレットだが、趣味なのか?」

 「どこにも潜り込めるし、ネズミより早いし、最終兵器あるからね」

 「なるほど、奥が深いな」

 「ぶっちゃけ、偵察任務ならどれでも一緒かな。趣味で選ぶか、細かな能力の違いに拘るかは、術者次第だよ」

 「術者の同調が乱される、少し静かに」

 「「「 ほーい 」」」


 放たれたフェレットは、廊下の両端を並行して走っていく。十字路で左右に分かれて、そのまま片扉の前にたどり着く。

 カリカリと爪で引っかいて、何も起こらないのを確認すると、再び十字路で合流し、1匹が正面奥の両扉に接近した。残りは交差点で待機している。


 「いくよ」

 術者の合図で、両扉に接近した1匹が、床に這いつくばるようにしながら、扉を爪で引っかいた。


 カチッ ドシュドシュドシュッ  カパッッ ガラガラドッシャーン


 槍衾と落とし穴と落し格子の罠が作動した。だが、まだ正面の扉は開いていない。

 「えげつない罠だな。これ作った奴は相当根性悪いぞ」

 「同感、後ろの落し格子にも罠があるみたいだから、触らないようにね」

 「落下したフェレットは、水面に着水したよ。下の水牢?はかなり広いね・・・あっ、リンク切れた」

 「下にも何かいるのは確かか。うかつに飛び込むのは止めとけよ」

 「フラグ立てないでくれ。夏とは言え地下水は御免だね」

 「後ろの罠は解除できそうか?」

 「5分5分かな。魔法推奨」

 「ほいな、閉ざされし扉よ、我が歩みを妨げることなかれ!ノック!」


 落し格子は、ガラガラと音を立てて天井に戻っていった。

 「もう一丁、ノック」

 今度は正面扉に開錠の呪文を唱えた。両扉が勢いよく開いた。


 「奥の部屋にスケルトン2体、剣盾持ち、例の紋章有り」

 「視界が狭い、片側全部押し開け」

 「偵察班侵入、陽動よろ」

 「やっぱ弓はダメね。骨に弓矢、ぬかに釘、蛙の面にモニョモニョね」

 「モニョモニョが気になるー」

 「骸骨戦士接近中!」


 剣と盾を構えたスケルトンが前進してくるが、槍衾が邪魔で前に出てこれないようだ。


 「偵察班、奥に到達。扉に接触作動の罠は無し」

 「フェレットに石の扉は押し開けられないだろうしな」

 「どうする、膠着したよ」

 「属性チェックだ。火・風・水・光の順番で単体攻撃!」

 

  「了解!」x4


 「ファイアーアロー!」

 「ウィンドカッター!」

 「ウォーターボール!」

 「サクレッドフレイム!」

 絶妙に詠唱時間をずらした魔法攻撃が1体のスケルトンに集中した。


 「防ぎやがった、火属性は耐性以上持ちだな」

 「風は効果あり、あれ?倒した?」

 「水は・・不明。先に倒れた」

 「光は魔力の無駄だった」


 「残りに属性チェック、水・光・・・あ、視界外に逃げやがった」

 「知能高い?」

 「コントロールされてる可能性大」

 「ネクロかー」

 「高位アンデッドかも」

 「どうする?」

 「・・・よし、撤退だ。依頼は果たした。この先は次の依頼を受けてからの方が効率が良い」


  「らじゃあ!」x5



 騎牙猪兵の突撃の機会を伺っていた僕らは、退却を始めた冒険者に肩透かしを受けた。

 「あれ?こないね」

 「びびりー」

 

 しかも戻ると決めたらすごい速度だ。これは阻止できそうにないね。

 「逃がしちゃっていいんすか?」

 「最初から一当てしたら退却する予定だったみたいだね。侵攻する速度といい、撤退を決める潔さといい、あれがプロの冒険者かあ」

 

 「情報を小出しで持って帰られると面倒だな。やはり包囲殲滅の方が良くはないか?」

 ロザリオが罠などのネタばれを心配している。


 「まあ、その辺は逆に利用もできるから問題ないよ」

 情報に頼って実際の探知をおざなりにしてくれれば、罠に掛けるのは楽だから。


 「さらに12体とかに分裂しなかっただか?」

 「いや、あれスライムじゃないからね。そっくりだったけど、人族の4つ子?6つ子?」

 女性二人も顔つきはそっくりだったから、血縁なんだろうね。


 「だが、装備もわざと同じにしてあったし、攪乱戦法としては良く考えてあったな」

 ロザリオの言う通り、実際に戦闘になったら、戦い辛い相手だったと思う。前衛も中衛も魔法を使っていたし、まだ何か隠し球を持っていそうだったね。


 次に来たときの対策を考えておこう。

 「しーゆー」



 6人組は、勢い良く階段を駆け上ると、外に脱出した。

 「脱出成功!」

 「まだ油断するな。安全圏まで離れるぞ」

 「お家に帰るまでが、冒険です」

 「あっ、倒した素材回収してない。依頼どうするの?」

 「大丈夫、ほらきた」

 「フェレット大活躍だねー」

 ウインドカッターで倒した新種スケルトンの骨の破片を咥えて、偵察フェレットが追いついた。


 そのまま丘を下ると、南へと進路を変えて、しばらく行軍する。やがて適当な木立の開けた場所で、休憩を取ることにしたようだ。


 「損害も無いし、依頼も達成したし、悪くないね」

 「俺としては、もう少し奥まで行きたかったがな」

 「ああ、そうね。十字路の左右の扉は、開けてみたかった」

 「いやいや、あのデストラップはやばいでしょう。あの先、あれが続いていたら、どこかでくらうよ?」 

 「戦闘中は探知に神経使えないからなー」

 「そうだな、ただの地下墓地にしては守りが過剰だ。水牢といい、落し格子といい、逃がさない意図が見え隠れしているな」


 リーダーの意見に他のメンバーが考え込んだ。


 「その構成だと貴族の隠れ屋敷?」

 「暗黒邪神教団の隠し神殿」

 「対女エルフ騎士のエロ豚トラップ」

 「変態貴族の爛れた避暑地」

 「デストラップ・ダンジョン」

 「・・・そのどれかだとして、情報提供者を身包み剥いで殺さなかった理由は?」

  「うーん・・・」x5 


 「館の主人が心優しい守銭奴だった」

 「後で生け贄に使うつもりだった」

 「エルフでも女騎士でもなかった」

 「口止め料を渡して偽証させた」

 「不殺の呪いがかかっている」

 「・・・発想はすごいが、現実的じゃないな」

 「だよね」x5


 「まあいい、調査結果を報告すれば、ギルドが結論を出すだろう。それで新しい依頼が出れば俺らで受ければ良い」

 「そだね」x5


 小休止で体力を回復させたあと、簡単な食事をとって、6人はビスコ村へと戻っていった。


 それを離れた場所から監視するエルフの兵士の姿があった・・・



 ベテラン士官の報告を聞いた女騎士が、溜め息をついた。

 「そんな重要な情報を隠匿していたと知られたら、軍法会議ものだぞ」

 「なに、部下は口の堅い奴らで固めてある。俺達が黙っていれば誰にもバレやしないさ」


 「・・・しかし身包み剥いで放逐か。オークやエルフに対する扱いと大分違うな」

 「種族差別主義者なのか、軍隊嫌いなのか、人族殺しが禁忌なのか・・・」

 ベテラン士官の呟きに、女騎士が頷いた。


 「確かにオークもアイン分隊も喧嘩腰で侵入していったろうからな。迷い込んだ冒険者とは扱いが違って当然か」

 「だとすると、少人数で潜り込めば生存率はあがるか?」

 だが、女騎士は首を振った。


 「大人数で押しかけるよりは良いだろうが、正体不明の相手の慈悲にすがっているようではな。風向きが変わったらバッサリ殺されるかもしれんよ」

 「それもそうか・・・」

 「それに長老会議は、行方不明者の捜索も、オークの丘の再調査も許可しなかったよ」

 「事なかれ主義も極まれりだな、そいつは」

 「というわけで、ほとぼりが冷めるまで大人しくしていてくれ」


 そう話す女騎士に、ベテラン士官はニヤリと笑った。

 「つまり、まだ諦めてはいないわけだ」


 その質問に女騎士も笑みを浮かべた。

 「ああ、もう一波乱ありそうだ」


 DPの推移

現在値: 3120 DP

撃退:LV5冒険者x6 +750

残り 3870 DP

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― 新着の感想 ―
[一言] 何がしたいんだろう?普通のダンジョンなら共存を選ぶのなら味方に数人引き込むだろうし、魔王になりたいなら侵入者殲滅だし。自ら生き急ぐ事もあるまいて
2020/07/20 19:14 退会済み
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