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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第6章 エルフ編
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第一村人発見

 ビスコ村出身の六つ子の冒険者パーティーは、ある意味有名人だ。

 4人の男性陣は、顔つきも体つきもそっくりで、武装の違いでしか見分けがつかない。2人の女性陣は、さすがに他の4人とは間違えないが、二人を並べるとどっちがどっちかわからなくなる。

 ちなみに3男チャーリーと4男ヘンリーは長剣に大盾のタンク装備。

 長女のダイアナと次女のフローラは軽装鎧に長弓装備。

 5男リックと6男イワンがローブ姿に短剣の二刀流である。


 長男のマイケルは父親の家業を継いで村で鍛冶の修行中。次男のジョンは革鎧職人に弟子入りしていた。

 少し年が離れて生まれた3つ子の妹達は、まだ成人していないので母親の手伝いをしている。

 ファミリーネームは鍛冶屋の「スミス」

 名前にインパクトが無さ過ぎて、誰が誰だか覚えようという気もおきないと評判の一家であった。


 彼ら同士でも名前を呼び合うことが無い。見間違えるわけもないし、誰が誰に何を伝えたいか、一々名前を呼ぶ必要も無い。主語がなくても会話が通じるのだ。

 本人達が自己主張をしないので、周りはそうそうに個人の識別をあきらめて、「ビッグファミリー」を一塊の集団として認識するようになっていった。


 例えば、3男のチャーリーに伝言があったとしても、近くに居るビッグファミリーの一員を捕まえて、

 「チャーリーに伝えておいてくれ」

 と伝言を話すだけですませてしまう。


 「お前がチャーリーか?」とか「君は誰だっけ?」とか意味ないから聞かない。

 1/4の確率で、それがチャーリー本人であるかも知れないけど、そこは気にしないようにする。

 そうしないと混乱して、無駄な時間がかかるからだ。


 この技を最初に身につけたのは、ギルドの受付嬢だったという。

 さすがは窓口業務のプロフェッショナルと言えよう。



  閑話休題 


 というわけで、「ビッグファミリー」は目的のオークの丘にたどり着いた。


 「情報通りに、ライ麦畑と地下墓地へ下りる階段の開口部が見えるな」

 「アイスオークのドルイドさんも畑仕事してるねー」

 「側に付きまとっているのは穴熊か?二回りぐらい大きくないか?」

 「ドルイドの呪文の召喚獣かも知れませんね、どうします?」

 「術者なら共通語が話せるだろうから、聞き込みしてみたら?」

 「そうだな、嘘感知の魔法をかけて話をしてみるか」


 男女のペアがドルイドに接近して話をしようとした。全員で行かないのは、「君たち4つ子?」から始まる煩わしい世間話を回避する為であった。


 「こんにちわ、精が出ますね」

 畑仕事をしていたアイスオークが、顔を上げて、二人を見た。


 「おっす、おらノーミン、よろしくな」

 かなり訛りがあるが、話は通じそうだった。名前も偽名ではないようだ。


 「お一人でここに住んでいるんですか?」

 「オークはオイラだけだ。仲間の獣達と一緒だからさびしくはねえだよ」

 これも本当だ。どうやらこのオークドルイドは地下墓地とは関系なさそうだ。


 「私達はギルドの依頼で、薬草を取りにきたんですけど、近くに群生地とかないですかね?」

 「そんなら、丘の中腹にある階段を降りていくと、左に別れ道があって、その先に生えてるだよ」

 これも情報通りで、嘘もついていない。


 「あの階段、陰気な地下に続いているっぽいんですけど、奥に何があるかご存知ですか?」

 「あそこは危ないだで、薬草の泉より下へいったらダメだ。その先にはおっそろしいアンデッドが徘徊してるだよ」

 嘘はついていない。ただしアンデッドが怖ろしいかどうかは主観なので、敵のランクなどは見当がつかない。


 「わかりました、薬草だけ積んで帰りますねー」

 「気おつけるだよ」

 気の良いオークと人懐っこい穴熊達が、見送ってくれた。


 残りの4人と合流して、結果を検討する。

 「思った以上に友好的なアイスオークだったな。ドルイドになると性格が穏やかになるのかな?」

 「個体差によるでしょう。オークのなかでもなかり浮いていた存在だと思う」

 「穴熊可愛かった。ペットに欲しいかも」

 「新種のアンデッドは手強いみたいだけど、どうするの?」

 「忠告してもらったのに無茶をして、損害が出るのも嫌ですが」

 「・・・薬草は問題なさそうだ。新種は遠巻きに調べて、深入りは避けよう」


 チャーリーと思われる重戦士の主張が通り、6人は地下階段を降りようと移動した。

 それを遠くから見ていたオークと穴熊が、目を何度も擦って確認していたが、そんな反応も「ビッグファミリー」には慣れたものだった。



 「おったまげた、今、おいらが見たことをありのまんま話すだよ」

 ノーミンが大慌てでダンジョンに駆け込んで来た。


 「騒がしいよボルナ・・・いやノーミン。何かあった?」

 「人族の冒険者がギルドの依頼で薬草の採集と、地下墓地の調査に来たんだけんど、スライムみたいに分裂しただよ」

 いやいや人族は分裂はしないでしょう。もし分裂したらそれは人族でない何かで・・・


 「最初は男女一人ずつで声を掛けてきただ。しばらく話をした後で移動していたら男がそっくりな見た目に分裂しただ。しかもさらに男二人、女一人が一斉に分裂して6人になってただ」

 「ギャギャギャ」

 穴熊父兄会も懸命に同意していた。しかしいくらなんでも6人には分裂しないだろう・・・


 「とにかく6人の冒険者パーティーが侵入してくるみたいだ。皆、配置について!」

 「でふこん」

 「主殿、中央ホールは誰に任せるんだ?」

 「耐火カスタムを2体配備して、ロザリオは玉座の間で。引き付けて水牢に落とす方向で」

 「了解した」

 「ピュイピュイ!」 「シャアー!」

 最近出番の無かったミコトとクロコが張り切っていた。


 「あらーと」

 コアが侵入を感知した。人族なのかスライムなのかわからないけど、お手並み拝見だね。 

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