獣皇2倍拳
「後衛の兵士二人は、キャッチャー&クロウにより行動不能」
「了解しただ。オラ達は前衛の二人を仕留めるだよ」
「どぴゅー」
え?スケア・クロウが止め刺したって?恨み骨髄ってかんじだったからね。
いいよ、降伏して眷属になるような性格じゃなさそうだし、素直にDPにしちゃって。
「敵はトンネルに進入後、後続を待つと思うんだ」
「そこに奇襲するだな」
「通路だからといって、攻撃が前後からしかこないとは限らない事を、教えてやって」
「ギュギュ!」
丁度その頃、小隊長と部下は、ライ麦畑をいち早く通過して、隠れた洞窟にたどり着いていた。
「後続の二人はまだ来ないのか」
ツンドラ・エルフの小隊長が、苛立たしげに呟いた。
「ハッ、どうやら迷いの結界に捕まったようで、連絡もありません」
敵はアイスオークのドルイド1人とはいえ、召喚獣が警護についているはずだった。二人だけでは、さすがに突入は難しい。
「世話をかけさせやがって。あとで懲罰だな。お前は通路の先の扉まで、罠が無いか調べておけ」
「了解しました!」
弓兵は、狭い通路を慎重に進んでいった。
途中の天井に奇妙な竪穴があり、その真下の地面に、どうやらフロアートラップが仕掛けられているようだ。
「小隊長、この床に罠があります」
「どんなタイプだ?」
「踏むと天井から何か落ちてくるようです」
側に寄ってきた小隊長が、竪穴を見上げて嘲笑した。
「アイスオークらしい、馬鹿な罠だな。わざわざ何か落ちてくると言わんばかりの造りじゃないか」
「踏まなければ問題ないかと思われます」
「かまわん、何が落ちてくるか試してみろ」
小隊長と弓兵は落下予想地点の前後に分かれて待機すると、床に背嚢を放り投げてみた。
カチッ 罠が作動して、3m上に金盥が出現した。
「アハハハ、見ろ、盥だぞ!頭にぶつけて脳震盪でも起こさせようって魂胆か。オークなら引っかかるんだろうな、アハハ」
ドスン! 金盥が予想外に重たい音とともに地面に落下した。盥の中には2頭の穴熊が入っていたのだ。
竪穴の上部に巧妙に隠された横穴に潜んでいた、穴熊父兄会が、盥の出現と同時に飛び乗ったのである。
「「ギュギューー」」
「はあ?」
呆気に取られた小隊長が号令を出しそびれた瞬間に、奥の扉が開いて、ドルイドが乱入してきた。
「獣は我が友、我が同胞。今こそ我が力を貸し与えん!アニマル・エンハンス!」
ノーミンは周囲に潜むモフモフ達に、強化呪文を付与した。効果時間が短いので、戦闘直前にかけなければ意味がないが、その効果は筋力と耐久力を上昇させ、攻撃力を2倍に高める。
「やんぼー、まーぼーの痛みを思い知るがいいだ!」
その掛け声とともに、トンネルの壁や天井を突き破って、モフモフ土木部隊が強襲をかけた。
普段は、敵の増援を警戒して、こんな無茶な肉弾戦は仕掛けないが、今なら、エルフ二人だけだ。
しかもエルフの特性として、中距離・遠距離戦闘には優れているが、接近戦にもちこまれると、筋力の低さや防御力の低さが露呈する。
つまり、懐に飛び込んで力任せに撃破するのが最善なのだ。
金盥から飛び出した、やんまーとこまつがローリング・クラッシュを二人に仕掛ける。
ひるんだ隙に、エキドナチームがスパイクを顔面に叩き込む。
さらに穴熊婦人会が、夜叉のごとく足元に齧り付いた。
その全てが、いつもの倍の威力である。
小隊長は、少しだけ耐えた。弓兵は、弓を取り出す暇も無く倒れた。
だが、小隊長が耐えられたのもほんの数秒だった。なぜなら弓兵を倒したメンバーが、すぐに矛先を小隊長に集めたからだ。
体中の引っかき傷から血を流し、顔面を棘だらけにした小隊長は、ゆっくりと地面に倒れ伏した。
「敵はとったどー」
「キュキュー!」 「ギュギュー!」
トンネルに勝利の雄たけびが響き渡った・・・
「うらー」
「ノーミン達は上手くやったようだな。ただ倒すだけでは生ぬるい。奴らに生きていることを後悔させたんだろうな」
いや、まーぼー達は助かったし、矢を射たぐらいで、そこまでは・・・
「主殿は甘い!二度と同じ様な愚挙を起こさせない為にも、見せしめは必要なのだ」
「もふー」 「キュキュー」
やばい、皆の目が本気だよ。
ごめん、誰だかしらないエルフ。君達には生け贄になってもらうしかないみたいだ。
「主殿、今回は、冒険者戦の反省も取り入れて、罠に頼らずに、突撃を多用しようと思う」
「いきなり範囲攻撃うたれると、スケルトン・ファイターに大きな被害がでるからね」
「そうだ、そこで中央ホールへの扉を開けて、私が待ち受ける」
「・・・ロザリオ、自分が戦いたいだけでしょ」
「そそ、そんなことはないぞ、ただ、私なら先制攻撃を受けても耐え切る自信があるからで・・・」
ぜったい、自らの手で、報復の刃をとか思ってるよね。
「まあ、いいや。今回はそれで行こう」
「感謝する。弓隊は後方の玉座の間から援護。光魔法の使い手が現れたら、側面から騎牙猪兵の突撃で行く」
「後方はケンチームが遮断して、隙をみて格闘戦に持ち込むから」
「了解した。魔術士を最優先で落とす」
各メンバーが配置について、エルフ本隊の侵入を待つ。
敵の残りは8人、1人ぐらい、瀕死でも生き残ったら情報がとれるかな。
「主殿、それは在り得無い」
「キュキュッ」
・・・全滅確定なんだね・・・
「なむー」
DPの推移
現在値: 1949 DP
吸収:ツンドラエルフx3 +135
吸収:ツンドラエルフ・ソーサラーx1 +125
残り 2209 DP
召喚リスト その42
ツンドラ・エルフ:凍土樹人
種族:亜人 召喚ランク3 召喚コスト90
HP15 MP12 攻撃4(+武器)防御2(+防具)
技能:耐寒、弓、隠密
特技:シャープ・シュート(鋭射)
備考:鋭射 使用MP3 命中+15% ダメージ+3
その43
ツンドラエルフ・ソーサラー:凍土樹人・精霊術士
種族:亜人 召喚ランク5 召喚コスト250
HP20 MP25 攻撃4(+武器) 防御3(+防具)
技能:耐寒、杖、詠唱、MP増加
特技:精霊呪文(風Lv5)、精霊呪文(光Lv3)




