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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第6章 エルフ編
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第二次討伐隊

 「長老会議の許可が下りた。各家より参加希望者を募り、そなたが軍隊長として、アイスオーク討伐を遂行せよ」

 年老いたエルフが、目の前に片膝をついて礼をとる軍装の女性エルフに言い聞かせていた。


 「長老の方々には感謝を。必ずや任務を果たして参ります」

 長老会議への取次をしてくれた老エルフにも、重ねて礼を言い、女騎士は立ち去ろうとした。


 「軍隊長を誰にするかで揉めたらしい。選ばれなかった家の者が嫌がらせをする可能性もある。気をつけるのだな」

 素っ気ない口調だが、女騎士を気遣っての忠告である。もう一度、深々とお辞儀をして退出した。


 「死ぬなよ、我が姪よ・・・」

 その呟きは女騎士には届かなかった。



 ツンドラ地帯の東の大半を占める大森林、そこにツンドラ・エルフの大きなクランが存在した。

 クランの名称は「静かなる冬木立」、7つの家が集い、500人以上が暮らす大規模なものだった。

 そのクランで、2回目の討伐軍が編成されるという。腕に覚えのある狩人や、戦功を上げて有名に成りたい若者が従軍を希望したが、参加を控えるように家長に命じられた者達も多かった。


 「やれやれ、参加希望の連中をわざわざ家長命令まで出して、兵力を不足させるとは、嫌われたものだな」

 歴戦の戦士を思わせる風貌をしたエルフの士官が、軍隊長である女騎士に話しかけてきた。


 「まあ仕方あるまい。前回の討伐は遭遇した敵を壊滅させたとはいえ、軍隊長は戦死、大地に還った同胞も少なくなかった。性懲りもなく同じ家が指揮しての第2次討伐隊では、不安になる長老も居られるのは、致し方ないさ」

 「負け戦で若者を減らしたくないという老婆心なら理解もできるが、自分の家から軍隊長が選ばれなかった腹いせで、戦力を出し惜しみするのは、利敵行為っていわないか?」

 女騎士はそれには答えず、淡々と討伐隊の準備を進めていった。


 「当家から6名、貴殿のシルバーリーフ家から6名、ゴールドムーン家から6名、レイニーブルー家から6名、レッドベリー家から・・12名?」

 1人も出さない家もあるのに、当事者でさえない家から12名も参加するのは異例であった。しかもレッドベリー家は代々、女騎士のスノーホワイト家とは仲が宜しくない。婚姻による血縁も遠いし、家長が就任する役職でも争うことが多かったせいだ。


 「レッドベリーから12名だと・・・しかも士官は馬鹿息子のアインかよ。これは一波乱あるな」

 提出された名簿を見て、不吉な予言をするベテラン士官に、女騎士は苦笑を浮かべて言った。


 「その波乱は九分九厘、貴殿が引き起こす事になるな」


 「いやいや、向こうが目の敵にしてるのは、うちじゃなくて、そちらさんだから。俺は火の粉が降りかかってきたら、振り払うだけさ」

 ベテラン士官は自分の配下になる5名の兵士と打ち合わせの為に、その場を離れていった。入れ替わりに配下を11名引き連れて、話題のアイン・レッドベリーがやって来た。


 「やあ、今回はよろしくね。参加者が36名で、うちが12名だからボクが隊長でも良いんだけど、お兄さんの弔い合戦らしいから譲ってあげるよ。もし手に余るようなら早めに辞退してね。戦況が不利になってから指揮権渡されても、ボクも困るからね」

 余りにも失礼な言い草に、スノーホワイト家の従者が文句を言おうとしたが、それを目で押さえると、静かに答えた。


 「ああ、できるだけ貴殿の手を煩わせないようにするつもりだ。参加に感謝する」


 「いいよ、いいよ、前の討伐戦でボロボロだもんね。本来なら一番戦力を揃えなきゃいけない軍隊長家が6名しか出せない以上、他が水増ししないとね」

 さらに従者の神経を逆撫でするような科白を吐いて、アインは離れていった。


 レッドベリー家の集団が遠くに離れた頃に、従者が女騎士に語りかけた。

 「宜しいのですか?あんなに好き放題言わせておいて」

 「仕方ないだろう。兄上の敵討ちなのも、先の討伐で家の兵士がほぼ壊滅してしまったのも事実だからな。あの家が12名も送り込んでくれなければ、今回の討伐隊は成立しなかった可能性もある」

 「それはそうなのですが・・・」


 「我々が今回しなければいけない事は、無事に討伐を終えて、我がスノーホワイト家の立場を回復することだ。その為には、多少の暴言中傷は我慢するしかなかろう」

 そう従者達を諭すと、女騎士は周囲に号令を発した。


 「30分後に出立する。最初の目標はヘラジカの湖だ。大森林の西端で1泊し、翌日の夜には湖畔でキャンプの予定である。各自最終チェックを怠るな、以上」



  その頃ダンジョンでは


 それぞれが趣味に没頭していた・・・


  コアルームにて

 「これってワンドかな?」

 前回の略奪品の品定めに集まったメンバーは、僕と、コア、ロザリオ、ノーミン、ルカの5人だ。

 魔法少女の持ち物が魔術士専用品が多かったので、専門家として呪文を使えるメンバーに声を掛けたんだけど、誰も「鑑定」の呪文は使えなかった。

 コアが分解すれば、魔法道具の名前や用途も判明はするけど、変換DPが高いと、魔道具図鑑ができあがるだけで、意味がない。

 しょうがないから、皆で、あーでもないこーでもないと意見を戦わせている。

 緑のマントとお揃いのブーツは、高確率で「エルヴン・マント」と「エルヴン・ブーツ」であるという結論に達したので、隠密ゴブリンに配給してしまった。

 どちらも隠密の効果がかなり上昇するはずなので、役立ててもらいたいものだ。


 「だと思いますよー、先端に真っ赤な宝石が付いているからあ、火炎属性の効果が上がるんじゃないですかねー」

 ルカは金盥に入った水に浸かりながら、同意した。


 「紅いから火炎属性とは限らないだよ。詠唱速度や射程距離さ、底上げすっかもしんねえだ」

 ノーミンは、相変わらずの口調だが、言ってることは至極まともだ。


 「主殿、どちらにしろ、「鑑定」の呪文を使える眷族を増やさないと確証は取れないぞ」

 ロザリオがバッサリ切ってきた。

 確かにそうなんだけど、魔術系って召喚リストに居ないんだよね。


 「よぶぅ?」

 何を?ああ、精霊かあ。確かにそれぐらいしか方法がないかもね。

 「魔術の精霊っているの?」

 ここは精霊の専門家に聞いてみた。


 「えーっとー、ジンさんとかエフリーテさんとかですかあ?」

 なんかすごいランクの高そうな名前がでてきたよ。それ確実に上位精霊だよね。

 

 「ですねえ、風と炎の上位精霊さんですう」

 ちょっとDP足りないね。あとランク高すぎてお願い聞いてくれなさそうなんですけど。


 「大丈夫ですう、お二方とも3回はお願い聞いてくれますからあ」

 それ3回で終わりだよね。「鑑定」3回やってもらって、はい、さよならとか効率悪すぎるから。


 「他にいたっけかなあ・・・」

 下級で試してみようかな。魔術精霊でなくても何かは来るだろうし。


 「コア、魔女の館に精霊の泉(井戸バージョン)を設置して」

 「らじゃ」

 「魔術繋がりでいいかもですねー」

 「月光が差し込むと異世界の扉が開きそうだがな」

 

 「鑑定」持ちが現れるまで、何でも鑑定会は休会です。



  畑にて


 「遅くなってすまなかっただ。鑑定会が長引いただよ」

 ノーミンが他のメンバーにおやまっている。今日は畑をさらに深く耕して、堆肥を加える作業をする予定だった。

 すでに畑の深耕は終わっていた。土木工事のスペシャリストが揃った、このメンバーには容易いことである。張り切りすぎて畑の面積が2倍に広がったのは内緒だ。

 スケア・クロウが片隅でぽつねんと立っていた。

 どう見ても1体でカバーしきれる広さではなかった。


 「空気読め」

 案山子の顔がそう言っているようにも見える。だが、やんまー達にはそんな事は関係なかった。

 五郎〇とアグーが牽いて来た橇に乗せられた堆肥、とは言っても近くの栄養分が高そうな黒土を削ってきたもの、を畑に満遍なく鋤き込んでいく。

 2・3日して、畑に馴染んだら、種から出た苗を植えていくことになる。畑の端には、先日蒔いた種から小さな芽が出ていた。

 今が一番、鳥に狙われやすい時期だ。

 スケア・クロウは、この新芽だけは死守するきでいた。


 「うっす、あとはちょこっと水さ撒いて、あがりにすんべ」

 ノーミンの声に皆がうなずいた。



  兵士待機所にて


 墳墓の牢屋の隣にある待機所で、アップルチームとベニジャ達が、木工をしている。

 「ランスと槍ってどこが違うんだい、ジャー」

 「ギャギャ(長さと重心?)」

 「木製だと折れないか?ジャー」

 「ギャギャ(確かに鉄製よりは弱いけど、しなりがあるから、それなりに持つはず)」

 「よっしゃ、できたぜ、ジャー」

 「お嬢、それ長すぎます、6mはあるですよ、ジャー」

 「長いほうが、勝つにきまってんだろ、ジャー」

 持ち上げようとして、穂先は地面についたままだった。


 「水中は浮力があるからいけるんだよ、ジャー」


 浮力がありすぎて沈まなかった・・・・

 「お嬢・・・」

 DPの推移

現在値: 2949 DP

設置:精霊の泉(井戸バージョン) -1000

残り 1949 DP

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