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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第5章 冒険者編
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新たな蠢動

 祝勝会でお腹一杯に食べて、新しいメンバーの自己紹介も済んだ。

 「これからはフィッシュボーン出口の防衛は、ハクジャ達に任せるからよろしくね」

 それを聞いたハクジャとベニジャ、それに手下のリザードマン達が一斉に拝跪した。

 「マスター様の仰せのままに、ジャー」

 「任せとけって、ジャ」

 もっと敬意を持ってお仕えしろと怒るハクジャを受け流して、ベニジャはマイペースでおねだりしてきた。

 「そんで、大頭、防衛するには前衛が足りないんだけど、何とかなる?ジャ」

 大頭って僕のことなのかな?まあいいけど。

 「確かに下弦の皆は後衛向きだね。ベニジャと旧幹部が一人いるから、2個小隊作るとして前衛を3名ずつ6名増やそうか」

 「さすが太っ腹だね。おねだりついでに回復手段も欲しいんだけど、癒しのリンゴっての?あれ美味しいし、こっち側にも植えてくんないかな?ジャー」

 「ベニジャ、厚かましいにも程があるぞ。我々はマスター様に・・・もご」

 自重しろと注意するハクジャをワタリとロザリオが羽交い締めにして引っ張っていった。ベニジャにはどんどんいけと目配せしている。


 「ああ、確かに地下水路を通り抜けて墳墓まで行くのは大変だよね。毒見できるケン達がいないし、数も必要だろうから、6個全部癒しのリンゴのタイプにしとこう」

 「助かるぜ、アタいら頑張るからな、ジャジャー」


 「コア、地底湖にフロスト・リザードマンの円月槍タイプを3体、カトラスタイプを3体召喚して」

 「らじゃ」

 「次に地底湖の3本避難通路の一つに癒しのリンゴの木を設置して」

 「のじゃ」

 「・・五郎〇のおヒゲは?」

 「もじゃ」

 イエーイとハイタッチする僕とコアを、ワタリ達が生暖かい目で見守っていた。

 「まだオカシイっすね」

 「いやあれぐらいは許容範囲ではないか?」

 「ギャギャ(あと少しですね)」


 「主殿、今後もこちらと行き来するのに、地下水路に息継ぎと休憩ができる待避所を作ってはどうだろうか?」

 ロザリオが中継地点の設置を進言してきた。

 「毎回、泳ぐの大変じゃない?」

 「いや、転送を願ったり、ルカに呪文付与を頼んだりするより、気楽でいいと思うが」

 「そうすっね、クロコやハクジャさん達も息継ぎは必要っす」

 「それはそうか、じゃあ等間隔で退避場所を拡張しよう」


 半水棲の技能があると、息継ぎなしで500mぐらいは泳げるらしい。一応余裕をみて300m間隔で退避所をつくることにした。

 地下水路の水位より高い位置に作らないと空気だまりがつくれないので、天然の洞穴に偽装した上りの階段と通常サイズの部屋を拡張する。この広さがあればグループで移動していても入り切るはずだ。

 水牢から地底湖まで、およそ3km。最後の中継地点は裂け目があるから、8箇所必要なのか。

 うーん、退避所を8箇所も作るぐらいなら、丘から直接に縦貫トンネル掘った方が便利じゃないかな?

 直線距離なら2・5kmぐらいだし、15mの通路なら167本で届くから・・・2505DPか・・・

うん、ダメだね。退避所で正解だったよ。

 この縦貫トンネルは、もし作っても緊急の増援を送るには距離が長すぎるんだ。ケン達で走破に1分30秒ぐらい、歩兵だとその3倍はかかりそう。敵が攻め込んで来てから5分後の増援だと、すでに決着着いてるよね。

 緊急時には転送した方が早いし、直接その場に召喚もできる。普段、遊びに行き来するのに2500DPは払えないかな。

 というわけで8箇所の待避所を設置した。


 「それとスケルトンファイター達の剣を交換して欲しいのだが」

 ロザリオは恐縮しながら提案してきた。

 今回の戦闘で、「三日月の槍」部族からは円月槍を、「凍結湖の鮫」部族からは曲刀を回収できていた。

鎧は2部族ともに「下弦の弓月」と同じ、山椒魚の皮鎧だった。この特殊なレザーアーマーは、伸縮性の高い薄い皮でできていて、防水能力と打撃緩和に優れていた。水中での行動も阻害しないので、半水棲のリザードマン達は、好んで使っているらしい。

 円月槍は、柄が木製で刃先が青銅でできている。形状としては青竜刀に近い。木製の部分には山椒魚の粘液でコーティングされていて、防水加工が施されていた。

 曲刀は全体が青銅で出来ていて、形状としてはカトラスに似ている。

 この曲刀をスケルトンファイターに持たせたいようだ。

 「別に問題ないけど、何本いるの?」

 「戦士に4本、弓兵に4本、バーンに1本で9本だ」

 あ、バーンも盾戦士扱いなんだ。

 「弓兵にも必要?」

 「ああ、接近されたときに近接武器があると無いとではかなり違う」

 「了解、武器庫から持っていっていいよ」

 「感謝する」

 「鎧は換えなくていいの?」

 「今ある硬革鎧では、交換しても防御力はあがらんのだ。見た目なら現在の錆びたチェインメイルの方が脅しが効くからな」


 次はアズサの陳情だった。

 「ギャギャ(ハクジャさんの所に、お酒の造り手がいらっしゃるそうです)」

 おや?リザードマンも酒造りをするんだ。ハクジャに詳しく聞いてみた。

 

 「さよう、我らも酒を造ります、ジャー。原料は果物ですな。1種類では量が集まりませぬので、採れた果物を全部混ぜ合わせて酒にします、ジャー」

 それって毎回、味も風味もまったく違うものになりそうな・・・

 「とにかく原料は変換で大量にだせるから、試してもらいたいんだけど」

 「承知いたしました。女手は余っておりますので、お任せください、ジャー」

 原料として、リンゴを20kgとライ麦を20kg、さらに樽と瓶を幾つか渡した。試作品ができあがるのは、速くて2ヵ月後だという話だ。

 酒造には綺麗な水が必要だね。急いで地底湖の癒しのリンゴの木の側に「湧き水と淵」を設置して、溢れた水は地底湖に流れ落ちるようにした。

 ハクジャ達の飲料水として使ってくれてもいいし、酒造の仕込み水に使っても良い。

 「2ヵ月後というと夏の盛りを過ぎたあたりかな」

 醸造は時間がかかるのは仕方ないね。こればっかりは吸収・分解で短縮できないし。あ、でも途中でアップルビネガーとホワイトビネガーは採れるかも。定期的にコアにテイスティングしてもらおう。

 

 しばらくは大きな戦闘は起きないだろうから、ゆっくり物づくりでもしながらのんびりしたいね。

 「ほあ~」



 しかし、彼らの知らない場所で、動き出した者達がいた。


   ある開拓村の酒場で


 「おい、聞いたか?地底湖の魔女とオーク男爵が戦って魔女が勝ったらしいぞ」

 「そんなヨタ話、本気にする奴がいるか、ボケ」

 「だけどよー、オーク男爵の女エルフ奴隷が解放されて新しい主人を探して彷徨ってるって噂になってんだよ、これが」

 「・・・美人か?」

 「スタイルも抜群らしいぜ」

 「・・・行くか」

 「そうこなくっちゃな、相棒」



  東の大森林のエルフ里で


 「アイスオークの部族は壊滅的な打撃を受けました。今こそ再侵攻して完膚なきまでに討ち果たすべきです」

 「だが、君の兄上は戦死したのではなかったか?」

 「私が遺志をついで、兄の敵を打ちます」

 「女性の身で討伐部隊を率いれるのかね?」

 「我が家名にかけて」

 「・・・そこまで言うなら長老会議に諮ってみよう。だがどう転ぶかは私にも予想できないぞ」

 「ご協力、感謝いたします」



  深く暗い水の底で


 「誰かが呼んだ気がしたけど、魔女違いだったようだよ」

 「・・・・・」

 「ワタシの他に北の地に魔女がいるなんて、聞いたことなかったけどね、ヒッヒッヒッ」

 「・・・・・」

 「ああ、お前達の出番はまだだよ、偽物の顔を拝みにいくのは夏至が過ぎてからになるね」

 「・・・・・」

 「慌てる乞食は貰いが少ないっていってね、太るまで待つのも乙なもんさね、ヒッヒッヒッ」


 DPの推移

現在値: 4399 DP

召喚:フロストリザードマンx6 -540

設置:癒しのリンゴの木 -500

拡張:階段x8 中部屋x8 -320

変換:リンゴ20kg ライ麦20kg -220

設置:湧水と淵 -100

残り 2719 DP

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