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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第1章 サバイバル編
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僕らの

 墓穴を掘る、という言い回しがある。読んで字のごとく、自らの行いの報いで自分の墓を掘るような結果になったときに使われるものだ。

 また、人を呪わば穴二つ、ということわざもある。この場合の穴とは、やはり墓のことで、人を呪ったりすると巡りめぐって自分も墓に入ることになるという意味らしい。つまり・・・

 「今の僕にぴったりな言い回しってことだよね」

 「ん?」


 チュートリアルダンジョンから転移した僕らは、ただいま絶賛穴掘り中です。

 ザクッ ザクッ ザクッ

 「ハードモードとは良く言ったもんだよ」   「ん」

 ザクッ ザクッ ザクッ

 「かねがねカルマがねえ」   「ん」

 ザクッ ザクッ ザクッ

 「異星人えいりあんから平安の都を守るんだ」   「ん?」

 ザクッ ザクッ ザクッ

 「しかしチュートリアルダンジョンで拾ったものは一緒に転送されてて、これだけは姫に感謝だね」

 「ん」

  そう、着の身着のままで放り出された僕らだったが、ダンジョンの中で命がけで拾った装備は、手の届く範囲に散らばって落ちていたんだ。

 背負い袋に松明、火打石、10フィート棒、じゃがいもの詰まった麻袋などなど。どうやら手に取ったことのあるものは一通り揃っているみたいだ。そして何より嬉しかったのは、万能武器であるスコップ軍曹が参戦してくれたことだった。

 「頼りにしてるよ、軍曹」   「ん」

 「もちろん、コアもね」   「ん!」

 ダンジョンのダの字もない場所に転移されたことにショックを受けてしばらく呆然としていたけど、雨は当たるし、寒いし、お腹は減るしで、せめてビバークできる場所を探すことにした。


 針葉樹の密集したとこなら雨は防げるけど、吹き付ける風がどんどん体温を奪っていく。やっぱり洞窟のようなとこじゃないと焚き火もできないね。

 じゃがいもなんかの重いものは遠くまでは運べないから、その場に穴を掘って埋めて、目印を立てておいた。避難場所ができたら、後で取りに戻るつもり。  じゃがいもの袋の一つを貫頭衣風に穴をあけて雨合羽のかわりにする。コアは一時的に背負い袋に入ってもらって、スコップ軍曹を手に出発だ。


 しばらく森の中を丘を回りこむように散策すると、丘の一部が崩れ落ちて土がむき出しになっている場所を見つけた。

 獣の巣穴でもないかじっくり探したけど、冬眠から覚めた蛙が這い出してきたような小さな穴しか開いてなかった。まあ、大型肉食獣が住み着いていたら、それはそれで危険なんだけれどもね。

 地質は赤茶けた粘土層で、ビバーク用に防風洞を掘るには悪くない。なによりこれ以上うろつくと穴を掘る体力も気力もなくなりそうだ。僕は背負い袋を地面に下ろすと、軍曹を崖に突き立てた。


 ザクッ ザクッ ザクッ

 1時間ほど夢中になって穴掘りを続けると、なんとか人一人が潜り込めるぐらいの洞穴が掘れた。

 あまり大きく掘ると崩れるかもしれないし、そろそろ疲労も限界だ。

 僕はコアの入った背負い袋を抱え込んで、洞穴にもぐりこんだ。中は狭いから、松明も酸欠が怖くてつけられない。

 この場所を探しているうちに日暮れになったのか、あたりは急に暗くなってきた。心細くなって背負い袋からコアを取り出すと、淡い光が洞穴のなかを照らしだした。

 「ここが僕らのダンジョンだよ」   「ん」



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