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「母の名のもとに」
「母の名のもとに」
ほんの少しばかり前
家はとても狭くて、賑やかだった
そんな、遠い昔の事でもないけれど
もう、取り戻せないほどの時間が
流れ、去っていた
同じ皿が5つ
夕方になるとテーブルに慌しく並ぶ
皿には、同じメニューが5つ
テレビの声と
兄弟たちの笑い声が響き
その透き間を母の声が通り抜ける
そのうちに、一人、
そして、また一人
家から出て行く
そのたびに、母のエネルギーは減ってゆく
日の出から夕暮れを迎えるように
家の中は、だんだん淋しくなり
昔の思い出はホコリまみれ
母のエネルギーは干からびて
老いてゆく
誰もが知ることのできなかった
その姿に僕らは
神から淋しい贈り物をもらった
すべてが雲のように流れ
後には広くて、静かな家が
ポツリと残された
母の淋しさが
ゆっくりと肩にかかり
すべてを悟る
母の名のもとに




