第一話 誘拐は犯罪です
どうもお久しぶりです。天狗です。
今話から超絶的キャラ崩壊とご都合主義が始まります。苦手な人は今すぐブラウザバックを強く推奨します。
ちなみに主人公視点ではなくアリス視点です。
では、ゆっくりしていってね!
アリス・マーガトロイドside
その爆発は私――――アリス・マーガトロイドが人里の大通り付近を通りがかった時に起こった。
よく見ると爆炎―――というよりかは砂煙―――の中で誰かがいるようで、わずかに見える影から何かしらのポージングをしていることが分かる。影の数は4つ。少しずつ煙が晴れてゆき、シェルエットがはっきりとしてきた辺りで、私は頭を抱えた。
(何やってんのあの4人組は……ッ!)
1人は箒を持った魔法使い。
1人は玉串を携えた巫女。
1人は腰に2本の刀を差した剣士。
1人は兎の耳を生やした少女。
全員知り合いである。1人は友人だが、出来るなら今すぐ縁を切ってしまいたい。
と、こちらに気付いたのか4人のうちの1人、私の友人の霧雨魔理沙が声をかけてきた。
「よう、アリス!おはようなんだぜ!」
「おはよう魔理沙。で、4人揃って何してんのよ?」
「新種の妖怪だ!お前が好きそうなの」
「はい?」
「あれ?お前ショタコ「違うわよ!」ぶふぅ!?」
とんでもないことを言い始めたのでグーパンで黙らせる。あ、危ない。私の嗜好が後ろの純粋な2人にばれるところだった。
「あー、そういえばアリスさん可愛いもの好きでしたものね」
「特に小さい男の子とかね」
魔理沙と一緒にいた後ろの二人――白玉楼の庭師、魂魄妖夢と永遠亭の月の兎、鈴仙・優曇華院・イナバが納得したように頷いていた。って、ちょっとバレてる!?い、いやまだ大丈夫のはず!
「ショタコンって言うんでしたっけ?」
「たしかそうだったはずよ?姫様が言ってたから」
完璧にバレてたぁぁぁあああ!?ヤバい!このままだと変態の烙印を押されちゃう!?
くっ、ここは無理矢理にでも否定して回避しなくちゃ!
「ち、違うわ!私はショタコンではなくて!小さくてかわいい男の子が好きなだけよ!」
「あれ?それをショタコンというのではないのですか?」
「墓穴掘ったぁあああ!」
「えっと……大丈夫ですか、アリスさん?というか何を焦ってるんですか?」
「姫様は『可愛い男の子が好きな普通の女の子』って言ってたけど……もしかして違う?」
「いえ、それで合ってるわ!」
無理矢理に近いけどどうにか誤魔化せた。……後ろでゲラゲラ笑っている魔理沙と緑髪の守矢神社の巫女、東風谷早苗が凄いむかつく。
魔理沙の話を要約すると、
つい先ほど人里に遊びに来たら、見た事の無い妖怪が現れた。しかもアリス好みの容姿。
↓
きっと捕まえれば面白い事(アリスの暴走)が見れる☆ZE!
↓
捕獲開始。
↓
妖夢、鈴仙、早苗と合流。全員で捕獲開始。
↓
逃げられた。アリスと合流。
と言う事らしい。
妖夢は買い物の途中だったらしく、買い物袋を携えていた。ついでに1つ、疑問に思ったことを聞いてみる。
「1つ聞くけど妖夢、もしかして魔理沙を手伝っているのは、その妖怪の試し切りをするため?」
「あ、そうです。正確に言うと『そいつを新しい技の実験台にしても構わないZE』と言われたので」
予想はしていたが、一字一句違えず的中とは思わなかった。
「もう追わなくていいからね。知り合いの一人が辻斬り魔になりましたとか言ったらいやよ、私は。……鈴仙は?」
「私は師匠から捕まえてくるように言われて。最低でも羽の一枚は持ち帰れと」
「永琳が?」
八意永琳は永遠亭に住む、この幻想郷で随一の腕前を誇る医者(正確に言うと薬師)だ。私もそれなりにお世話になった事がある。
「今朝、紫さんがウチに来てこれを渡してきたの。そしたら師匠が『全力で捕まえて来い』と……あ、写っているのは男の子らしいです」
懐から何かを取り出した。写真かしら?手渡されたそれを見て――――時が止まった。
映っていたものは、
男と女、そのどちらにも染まり切っていない身体。
白く透き通る肌に煌めく金の髪。
そして純白の羽と光り輝く天輪。
ブシャッ
か、可愛い……!思わず鼻から愛があふれ出ちゃったわ……。変わった服装をしているけど、なかなか似合っている。ちなみに紫というのは八雲紫という女性妖怪の事で、この幻想郷の創始者的存在だ。何もかもが胡散臭いので、信用されないことが多い。
「ああ、そういえば白玉楼にも来ていましたよ。二、三言話したらそれを渡されてすぐ帰られましたけど」
「それを見てから師匠が激しく深呼吸したり、だらしなく顔緩ませたりしてたんだよね。……何があったんだろう?」
……どうしよう。何か知らない間に同族(変態)が幻想郷に増えていたのかもしれない。紅魔館のメイドだけだと思ってたのに……。
「ふっふっふ……。どうやら上手くいったようですね」
と、今まで会話に入ってこなかった早苗が口を開いた。
「上手くいったって、何がよ?」
「フフフ、わたしの目的はただ1つ!それはッ!
――――幻想郷ショタコン化計画ッ!」
迷わず顔面に右ストレートをお見舞いした。
「痛ぁ!?何するんですか!?」
「黙りなさい、そして死になさい」
「酷い!私は頼まれただけなのにぃ!」
「頼まれたって……誰によ?」
「言えません!それ言ったら『天使さんモフモフ権』がなくなっちゃうんです!」
「……何よそれ?」
「ええっと、実はこの天使さんついさっき幻想郷に自分から入って来たみたいで」
「……博麗大結界って、そんなに薄っぺらいものだったっけ?」
「一応、数日掛かったらしいですよ?で、ここに来た真意を確かめたいので捕まえてほしいと頼まれたんです」
「……で、その報酬が『天使さんモフモフ権』なわけ?」
「はい、捕まえたら好きにしていいと言われてるので……ぐへへ」
早苗の顔がとろけそうな笑顔になる。
エロい事する気満々なんだろう。
「そういう事なら私も探すわ」
「え゛?」
「え゛?じゃないわよ。危険な妖怪だったらどうするのよ。
……それ以前にそんなおいしい話を、私が見逃すとでも思ってるの?」
後半は早苗にだけ聞こえるように呟く。すると早苗はその場から素早く駆け出した!
「アディオス、アリスさん!天使さんは私がイタダキマス!」
「ちょ、待ちなさい!」
が、その静止は無視され、早苗は素早く逃げ去った。
「魔理沙、ちょっと手伝って」
「嫌だぜ」
「何でよ!?」
「早苗に負けたお前の顔が見たいからだ☆ZE!」
「最悪ねアンタ!?」
「そういうわけでわたしは帰るぜ。またな~」
そう言うと魔理沙は箒にまたがってどこかへと飛んで行った。……相変らず、自由ね。
「アリスさん、手伝いましょうか?」
「……報酬として、『切らせて欲しい』とか言わないんだったらいいわよ」
「……じゃあ、買い物に戻ります。幽々子様がお腹を空かせているでしょうし」
「あ、私も探索に戻りますね。見付けたら教えてください」
そう言って各々解散していく。さて、探索を始めますか。……まぁ、聞き込みするだけなんだけど。
~30分後~
「ああ、そいつなら居酒屋に入っていくのを見たぞ」
「!?本当!?」
「おう、余りに不憫だったから少しだけならって、店主が中に入れてたのを見た」
「居酒屋よね?ありがとう!」
居酒屋に向かってダッシュする。結構距離があったけれど、10秒くらいで着いた。
そして入り口をくぐると、
「ん?アリスか。どうしてこんなところに?」
何故か寺子屋の教師である上白沢慧音がいた。何でこんなところに?と思ったけれど、魔理沙たちが起こした騒動を嗅ぎつけてここに来たのかもしれない。
「そっちこそ。どうしてここにいるのよ?」
「授業が終わって生徒達と大通りに差し掛かったあたりで変わった妖怪が来たという話を聞いてね。聞き込みをしていたら、件の妖怪がここにいると聞いて駆け付けたんだ。そこまでは良かったんだが……あれを見るとどうもな」
と、慧音が指差したところを見ると、目的の天使がそこにいた。
……のだが。
「ぐすっ。ううっ。ついてないよぅ。
人里の近くに行こうとしたらぶっといビームが飛んでくるし、
氷妖精に氷づけにされそうになるし、
半人半霊に問答無用でみじん切りにされそうになるし、
人と話そうとしたら月の兎に撃ち殺されそうになるし、
逃げ切ったと思ったら現人神に吹き飛ばされるし、
もう、飲んでも飲まなくてもやってられないんだよぉぉぉぉぉぉぉぉ……」
ガチ泣きだった。口の空いた一升瓶が5,6本ほど机の上に転がっている所を見る限り、全部開けたようだ。……何と言うか、その、ごめんなさい。私が悪いわけじゃないけど、罪悪感が半端じゃないわ、これ。
そしてその横で店主さんが慰めている。少し涙目なのは、もらい泣きをしたからだろうか。
「……さっきからあんな調子でな」
慧音も少し申し訳なさそうな顔をしている。
そういや犯人のうちの一人、あんたの所の生徒だものね……。
「どうせ私は死神たちに役割取られて半フリーターに成り下がった魂天使だよぉぉぉぉ……どうせもう一億歳こえて行き遅れた爺だよぉぉぉぉ……」
……今、聞き逃しちゃいけない単語が聞こえたような気がする。
『一億歳』って言わなかった?
もう一度天使(?)を見る。うん、可愛い。じゃなくて!
え、嘘でしょ?あの容姿で一億歳越え!?
「……なに?あの容姿で一億歳以上だと?それにしては力が小さいが……もしや完璧に力の漏れを防いでいるのか?」
慧音も驚いていたけど、私は別の意味で驚いていた。
一億歳?あの容姿で?
何ということなの!?それはなんという―――――――――
(―――――合法ショタッ……!)
これなら卑猥なことしても犯罪にならない(注意:歳が何歳であろうと犯罪です。絶対に真似しないでください)。顔も好みだし、声もいい。
自分でも目がギラギラしているのが分かる。もし捕まえる(注意:犯罪ですので(ry))事ができたのなら、もしかして、毎日が楽園?……ちょっと想像してみよう―――
私は人里での買い物を終えて自宅のドアを開ける。
するとそこには――――――裸エプロンの天使の姿が!
『お、お帰りなさいませ……ご主人様』
ブシャッ
駄目だ!もう鼻血が出た!てか止まらない!愛が止まらないのォオオオオオオオオ!
ひゃっはああああああああああああああああ!!
~しばらくお待ちください~
……ハッ!私は一体何を!?
妄想してる場合じゃなかった。早く捕まえないと鈴仙か早苗がこちらに来るかもしれない。永遠亭に連れていかれたら人里に戻ってくるなんて絶対にないだろう。同族が2人いるのだし、手放すわけがない。早苗は完全に危険人物だ。
兎に角、早く私の家に保護しないと……!
「慧音、あの子は私に任せてくれる?」
「駄目だ」
「何でよ!?」
「今お前がどんな顔しているか自分でわかるか?」
「え?いつも通りの顔でしょ?」
「そんなわけあるか!性犯罪を起こそうとしてる犯人の顔をしているぞ!」
「そ、そんなことあるわけないじゃない」
「ならこっちを見て言ってくれ」
「………………」
「………………」
「……強行突破!」
「させるか馬鹿たれ!」
「くっ……あ!あんなところに溺れそうな子供が!」
「な、なに!?どこd「隙あり!」ぐはぁっ!?」
ありもしない嘘をついて不意を突いた。
どさり、と慧音が倒れる。だがすぐに復活するだろう。
「ごめんなさい店主さん、ツケでお願いするわ!」
店主さんにそう告げて、天使に素早く詰め寄り首根っこを突かむ。
「え!?え!?なに!?」
突然の事に天使は混乱していた。そんな姿も可愛らしいわ……。
さあ行きましょう、私たちの愛の巣へ――――――!
持ち方をお姫様抱っこに変えて家まで猛ダッシュを始める。この日、私は風になった。
その後、人里の居酒屋の店主はこう語る。
「いつかやるとは思ってたけど、まさかこんな早いとはなぁ……」
主人公誘拐される、の巻でした。
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