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第1話:4月7日

プロローグのあらすじ


天峰詠美は進級し高校二年生を迎える4月1日の朝に狐耳が生えた。

ルームメイトの蟹岸鈴鳴の欲望を受け流しつつ、彼女の姉で養護教諭の蟹岸静音に協力を仰ぎ、検査と称して恥ずかしい格好をさせられて前途多難を予感していた


「そうか…あれからもう結構時間経ったんだ。あの時は面白がっていたけれど…詠美、まさかあんな事になるなんて…」



 春の日差しが差し込む教室。喧騒の中、窓際の席で外を眺めながら物憂げに呟く少女は蟹岸鈴鳴


「あたしがあの時もうちょっと真剣に詠美と向い合っておけば…くっ!」


 何かを悔やむ様に歯噛みし、力いっぱい机に両の拳を叩きつける。しかしどれだけ後悔しようとも失った物は戻ってこない…分かってはいるのだが無力な彼女はそんな自分が許せない様でぷるぷると肩を震わせている


「ああくそっ!詠美…あたしがちゃんとアナ○プラグについてしっかり説明しておけば…っ!」

「……………」


 鈴鳴の心からの叫びに、教室内の生徒の大半は叫びの発生元に向けた後出入口で言葉を失っているニット帽から銀髪が覗く少女に視線を動かしてからヒソヒソと言葉を話し合いを始める。



「確かに二人共同室だけどこの春休みで一体何が…」

「というか今叫んだ言葉って…え、マジ?」

「まあ気の強い女は…って良くいうし…」

「…なんかちょっとイケない気分になってきたわ、あの天峰さんが蟹岸とだなんて…」

「マジかよ…俺ちょっと天峰さん良いなって思ってたのに…」

「バカ!俺だって入学した頃からずっと思ってたわ!」

「はぁ!?男子だけが天峰さんを好きだって思ってたら大間違いだって!」

「あ…僕は蟹岸さんの方が…」

「「「「「「「え、無いわー」」」」」」」



「うん…なんなのこの茶番」


朝から見せられる教室の茶番、ため息と共にどうにか言葉を漏らしている少女の名前は天峰詠美。一旦項垂れてから教室の窓際、鈴鳴の前の席に腰掛けて


「…で、鈴鳴?さっきの寸劇は一体何よ?」

「牽制球かな」

「誰に対して!?いや……変に気にしたって意味が無いか…」


ある程度気心の知れている仲、寮のルームメイトである為か変に反応をすると喜ばせるだけだと理解しており


「…変に反応して、余計な誤解周囲に撒き散らしても面倒だし」


深くニット帽をかぶり直し、少し長めのスカートを気にしなしている。その下には…本来人には無いモノが存在している


「ああ…そだね。隠し方もここ一週間で研究したから安心して良いと思うけど、まだ気になるの?それ。気にしすぎるとあたしが露出調教してる扱いされるんだけど。いっそホントにヤっちゃう?」

「頭で分かってても気になるっての。後目をギラつかせて寄るな、顔近い息がかかるヤんない…っ!」


手を伸ばし近づく鈴鳴の顔を押しのけてる様子に級友達は「ああやっぱり」と言う生暖かい視線を向けている



もうどうにでもして…という心中の詠美、彼女のニット帽とスカートの下には銀色の狐の耳と尻尾が生えている

前日まで何の予兆もなく突然身体に現れたモノで、春休み期間に鈴鳴の伝手で検査を行ってもらっていた


「…で、実際どうだったの結果は」

「ああうん、も少し引っ張りたかったんだけどね…ぶっちゃけわからないって」

「………そう」


前触れも無く身に降り掛かった事。覚悟はしていたが原因が分からないのは少々答え、口数少なく頷く様は先ほどまでの勢いは無く


「まあ詳しい内容はしず姉んとこにあるから、あたしも流し見しかしてないし」


うなだれる詠美の様子にここは流石に茶化す気にはなれないのか元気づける様に声をかけている




始業式の後、ショートホームルームを終えて午前中の内に放課後を迎えて二人揃って第2保健室の戸を開け足を踏み入れる。


「ちーっす、しず姉居るー?」

「…………あ、は、はい!?してます!ちゃんと仕事してますよ!?…ってなんだ鈴鳴と天峰さんですか」


部屋の主は慌てて机の引き出しに何かを仕舞って振り返り、入ってきた二人の姿に安堵している


「ああうん、またサボってたのは別にいつもの事だから良いんだけどちょっとアレ見せて?詠美の恥ずかしい検査結果」

「だって発売して一週間近く経ってるのに忙しくて全く進められなかったから……ああはい、詠美さんの恥ずかしい検査結果ですね」

「なんで姉妹二人して変な事言うの!?ああもう早く貸して!」


先ほどまで気持ちも沈んで重い足取りの詠美だったが、二人のやり取りに少なくとも空元気を取り戻した様で検査結果を奪い取り確認する


「………簡潔に言うと、元から存在していたかの様に血管等くっついてるんです。後天的に生えたとか症例とかは見受けられませんでした。それから、これも良く分からないんですが…その耳か、あるいは尻尾を見た方は詠美さんに対する感情の高鳴りを抑えられなくなる…まあ端的に言えば一目惚れをしてしまうみたいなんです。ただ科学的には解明出来ない…ですね」


申し訳無さそうに答える静音、先週のあの騒動はエクステの間から耳が少しだけ目視出来てしまった為起きたのではとの事で。


「その割に…静音先生はボクの耳や尻尾見ても反応しなかったよね」


「ちなみにあたしは最初から詠美の事好きだから効かないんだよね!」


「んー…何でですかね、私の例があるから少し結果を出すのが遅れたのもあるんですよね」

「まあ静音先生という抑止力が居るから少し耳も尻尾も開放出来て楽になるんだけども」

言いつつニット帽を脱ぎ、少しスカートをまくりあげて耳と尻尾を出して息をつく詠美と団扇を差し出す静音


「おーい、二人共無視するとあたし泣くよ?」

「…いや、初日の起き抜けにボクの事押し倒した人に言われたく無いんだけど」

「だってあんな格好見せられたら、そりゃね?誘ってるとしか思えないし、ふひひひ♪」


キモい笑いを上げる鈴鳴から少し距離を取る詠美と静音


「…まあとにかく、見た目はともかくその性質が一番のネックですね」


静音の言葉は最もであり、その方法が浮かばないからこそ困ってる訳で

…しばらくは帽子と制服でどうにか隠す事は出来るけれどと呟いていると



「たのもー!」


第2保健室の戸が勢い良く開けられて入ってくる少女。突然の事に詠美は耳も尻尾も隠す暇すら無く


「…居ました!」


室内を見渡して、詠美に向かって一直線に向かってくる少女。まさか言っている間にまた…!?と思っているとスッと詠美の横を通り抜けて


「あの…あなたがあの蟹岸静音さんですね!?お願いします!私に協力して下さい!」


「「えっ…?」」

狐耳と尻尾に目もくれず、静音の手を握る少女に詠美と静音は呆けた声しか出せないでいた

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