今朝勃発。
山川河岾。
こんな感じの四字熟語ありそうだよね。
翌日。
俺はいつもとなんら変わりない朝の食卓を妹と囲んでいた。
...。
あのォ、なんか妹って毎回説明すんの面倒くせェからこれからは本名の唯で呼ぶことにしていいか?
って俺は誰に確認してんだよ。
あいつに感化されて、俺まで狂っちまったのかァ...。
イヤすぎるな。
「唯、その醤油取って。」
「ん。...ほいっ。」
「さんきゅー。」
「....。」
「.....何。」
何故か醤油を取ってもらっただけで睨まれた。何で?
「.....。」
無言の圧力とやらが存在することを今知りました。
「...........。」
あ、もしかして唯は醤油を取るのが嫌いだったのか?だとしたら迂闊だったな。これからは自分で取らなくては。
「.......................。」
あの、もう限界なのでいい加減何か喋って頂けないだろうか。目を皿にしても見えるのは陶器の底だけだぞ。
「................................。」
まさかメデューサの物真似か。中二でそこまでマニアックな線を責めるとは、流石俺の唯。あ、ここは妹でいいのか。しかし唯よ、俺を石にしたいのかはたまたザ・ワールドを会得し、今それが発動されてるのかは知らんがそろそろ所沢発浅間台行きの俺愛用電車に乗る為、家を出なくてはいけないのだがようするに、
「早く用件を言え。」
あ、口に出してしまった。
ピキッ。
唯の額を蚯蚓が走った。いささかロマンの無い言い方だったかも知れないがまさに字の如く蚯蚓が走ったのだから致し方ない。
「昨日の深夜、お兄ちゃん何処行っ」
「ご馳走様ッ!」
俺は唯の言葉を最後まで聞かずにそのまま家を出た。心臓がパンクするんじゃないかと思うほど張り切って体中に血液を送り出しているのが手に取るように分かった。まぁ体の中にあるのだから当たり前なのだが。
「あいつ、あんな時間まで起きてやがったのか。」
ったくうちの妹は将来夜の蝶にでもなりたいのだろうか。お兄ちゃん心配だな。
下らない事を考えてるうちに目的地到着。俺だって別に目的地も無いまま家を飛び出したりはしないってーの。そしてその目的地とは勿論、
篠澤妹の家だ。
いつもなら家の前で妹が待っているのだが、今日そこには誰も居なかった。けどま、想定内だな。
インターホンを押す。
ピンポーン。
甲高い電子音が鳴り、俺という来客を主に伝えた。
すると、ドアはすぐに開いた。まるでずっと待ち構えていたかのようにそこには妹が立っていた。
「おはよう、妹。」
「ぶーーっ!!」
あれ、俺は今豚と会話していたのか?
「してないよっ!」
なんと!以心伝心まで...。最近の家畜は有能だな。
「だから違うってばっ!私の名前は貝口沙紀っ!昨日言ったでしょーが。」
そう言って頬を膨らます妹《沙紀》の姿はあまりもに可愛らしく、つい謝ってしまった。
「あ、ああ。悪い。」
しどろもどろになりながらも言葉を紡いだその瞬間、妹《沙紀》が抱き着いてきた。
へ?
抱き着いてきた?
ダキツイテキタ?
んな!?
「何やっとんねェェェェェェェェんッ!」
あまりの事に数年ぶりの大声を出してしまった。
「ぁん、そんな固くならないでよ。沙紀悲しくなっちゃう。」
耳元で吐息混じりに呟かれると、反撃する気が無くなるのは俺だけか?
しかし、そんなふうな余裕も噛ませられなくなった。
たった一言で。
それは、
「私と××の仲じゃない。」
俺の名前だった。
期待とはえてして裏切られる物である。