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俺+α  作者: ブリキ
10/21

DINNER うぉー。

デキレば感想プリーツ。

結局、沙紀を招き入れ飯を作ってもらうことになった。勿論俺が所望したわけでも唯が所望したわけでもない。つまるところ招かれざる人=沙紀の公式が成り立つ。ここテストに出まーす。


「何食べたい?」


小首を傾げながら俺達兄妹にオーダーを取ってくる妹。それならいっそ《和風ステーキのポテト添え》とか頼んでやろうかな。あ、これファミレスのメニューか。やっぱ食べたことない料理の名前なんてそうそう出てこないなと自分の今まで摂取してきた食物達に悲観していると、隣にいる唯がさながら幼稚園のお遊戯会に出演中の園児のような大声を張り上げていた。


「ハンバーグがイイッ!!」


嬉嬉とした表情で何を言っとるんだね君は。しかし唯は俺の心配など道端の石ころより気にしない所存のようで、更に己の皮下脂肪を増量していく。てゆうかさっきまでうちに入れるのさえ拒んでいたはずが、何故にそのような手の平返しに繋がってしまうんだ。しかもよりによってハンバーグなんぞチョイスしやがって。この前自分で太ったとか何とか言って俺に泣きついてきたのは何処のどいつだバカヤロー。


「分かった!ハンバーグね?すぐ作るからちょっと待ってて。」


そう言って、本来の持ち主で在るところの俺達をキッチンから放り出す。いや出すなよ。


「お前食材の場所とか分かんのかよ?」


キッチンへ少量の疑問を投入。しかしそれに対するリアクションも入れた量に比例して少量のものだった。


「大丈夫。」


いつもは最後にエクスクラメーションが付くのに今回付属していたのは読点のみという消費者への思いやりのなってないものだった。

「ま、いいか。」



そういえば、まったくもって今更だがうちに両親はいない。勿論過去形にすれば事実だが現在には存在しない。母親は唯を産んだあと直ぐに死んだ。原因は不明。ドラマになりそうな設定だが、これが現実だとなかなかクルものがある。どうだ、一週間俺と替わってみないか?


父親は行方不明。俺が小三ぐらいの時だったかな。「セブン行ってくる。」との遺言を残し、酒の買い出しついでにどっか行った。


二人に対し憎しみは無いが、呆れはある。当たり前だろ。もう少し我が子を省みてくれ。俺イジメられたんだぜ、糞親父の息子ってことだけで。まあ妹が味方で居てくれたから大した苦じゃなかったけどさ、居なかったら絶対自殺してたね。まず間違いなく。

唯にはあんまりそういうのは無かった。理由は至極単純で容姿が優れていたから。なんとも困った男卑女尊だ。可愛い子には手を出さねェってか。どこのヒーロー気取りだ。んなチャラいヒーローに助けられたくもないが。


俺の思考が更なる闇に突入しそうになった時、沙紀の声が正気へと引っ張り戻した。


「かんせーいッ!!」


耳にはキッチンからハンバーグ制作終了のピリオドが放たれ、鼻にはほど好く酸味の効いた匂いが漂ってきた。俺の記憶が正しければハンバーグソースに酸味は要らなかったはずだが。しかも匂ってくるほどの酸味って。...くぁ。これって山椒じゃないか?ハンバーグに山椒?新手のひつまぶしか?


「はいどーぞ。」


目の前に出されたのは山のようなブツブツの飯。ん?混乱のあまり文章が可笑しくなった気がする。しかし何だこの量は。ご飯で山脈でも作りたいのか。いっそ文化遺産に登録してはどうだ。これが日本の文化の象徴ですと世界に示したいな。さてどんな勘違いをされるものか。

甚だ疑問なのだが、何故このような腕前なのにうちへ出張隣の晩御飯を実行したのか。実力的には0.02ツ星ってところが妥当だろう。うーむ...。俺に対する好感度アップ?



「いぃただぁきまぁすっ!!」


俺のうすらとぼけた自惚れなんて一瞬で吹き飛ばす大音量な食前挨拶が隣席の小娘(血縁関係アリ)の口から打ち噛まされ、こいつは正気かと疑う暇も無く山椒山脈(俺命名)にスプーンを突き立てる唯。()が多い気がするがこの際無視の方向で。


「.........ゥェッ。」



以上がこの糞量だけはある食費無駄遣いな作品への唯からの感想らしい。いやはや想像通り過ぎて予想の遥か上をいったよ。しかもその小文字カタカナ三文字の一言日記によって俺が食すべきか食さぬべきかの裁断も決まるという一石二鳥な結果を収めた君の功績は自作の金メダルをやってもいいぐらいには素晴らしいよ唯。


よって俺の吐く言葉も数が限られてくるわけだ。


んでチョイスはこれ。


「わりぃ、俺腹痛ェからトイレ行ってくらァ。」


なんともヘタレな言葉だが効果は覿面だった。


「そっかぁ...。××(ギンッ)のために作ったんだけどなぁ~。しょうがないか。気をつけてねっ。」


まるでベタ甘なバカップルの会話を抜粋したみたいな会話、というか一人話だが現実は単なるお隣りさんの娘さんが心冷めきり豊満な女体にしか熱くなれなくなった腐りかけの主人公の嘘に対して気遣ったというだけなのであしからず。


因みに、途中の効果音は唯が沙紀に送った熱視線、俗にいうガンを飛ばした時の音です。お兄ちゃんちびったよ。


「んじゃ俺の分食っといていいぞぉ。」


そう言い残し、玄関から外へ出た。勿論晩飯確保の為である。家の中からは「お兄ちゃんの残りは妹である私が食べますっ!!」「いや、ここはシェフであるワタシが責任持って食べますッ!!」等々の絶叫会話が鳴り響いている。略して絶話なんてどうだろう。


財布は運良くポケットに入っていたのでそのままコンビニへ向かった。



自動ドアの前に立つとそいつは気前のいい音を鳴らしながらムーンウォークで道を譲ってくれた。こういう奴がグループの中心に成れるのかな。よし、俺の目標は自動ドアに成ることだ。今決めた。


「あのぉ~、そこに立って居られるとお客様に迷惑なのですがぁ。」


気弱そうな眼鏡にポニーテールな女の子が俺に注意を促してきた。俺は気恥ずかしくなり顔を下に向けながら弁当売り場へと小走りで向かった。



俺はハンバーグ弁当と炭酸飲料を持ちレジへと赴いた。別に沙紀が作ったハンバーグと差を比べて後でこっそり美味しいハンバーグの作り方を伝授するためにハンバーグ弁当を買ったわけでは決してない。


そして勿論カウンターには先程の気弱系文学女子が居た。今のは俺の勝手なイメージだ。


「...6.48円..です。」

値段も気弱になり、いつもの強引さはなりを潜めていた。うっかり6.48円かと思い元単位の貨幣を持ってない事に焦ったのは秘密だ。いや冗談ですよ。


「..あり.がとうご...ざい..ました。」


それはもう文として成立してんのかと疑ってしまうのも無理はないだろう。しかし。...うーん。何だかこの娘とは今後も付き合っていくことになりそうな、そんな予感がする。

まあ、勘みたいなもんだし叶えばラッキーでいいか。



んじゃ家に帰りますか。





うーん。









もう沙紀に違和感が無くなってきたな。








どんとこい。

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