始まり始まり。
まぁ、気軽によろしくっす。
今の時間は放課後。
六限目の数学で教師に質問された時、握っていたノートの端が汗で少し湿っていた。
なにとなくそれを眺めていたら、家が近所なことから小学校からの仲である篠澤が話しかけてきた。
「おーい、なにやってんだよぉ、そろそろ帰るぞぉ。」
俺はノートから目を離し、篠澤にピントを合わせた。
篠澤はハッキリ言って可愛い。
目はパッチリとしており鼻も筋が通っている。そのわりには顔は小さく、小動物を彷彿とさせるような顔立ちをしている。髪は肩の辺りで切り揃えられていて常にリンスの匂いなのか柑橘系の香りがしており俺を和ませてくれている。
「今行くから待ってろ。」
そう言って机上の数学ノートを鞄にしまい、俺は篠澤の下へ小走りで向かった。
篠澤妹。
それが篠澤のフルネームだ。下の名前は「まい」と読むのだが、よく読み方を間違われている。本人も読みづらい事は分かっているようで、間違われても笑顔で対応していた。
あとこいつの特徴といえばやはり喋り方だろう。何故かいつも男口調で、理由を聞こうとするといつもはぐらかされてしまう。あと語尾が間延びし、一言一言の間に点を付けるためやたらとゆっくりに聞こえるのである。
以上で篠澤妹という人間を理解して頂けただろうか。
他にも、やたらモテるのに誰とも付き合わない。先に帰っててもいいと言っているのにいつも俺を待っているなど篠澤を知るための材料は腐る程あるがさほど重要性が無いと判断したので此では割愛させていただく。
「じゃあなぁ~。」
篠澤と別れの挨拶を交わし、自分の家へと向かう。空にはもう暖かさが無く、太陽は完全に隠れてしまっていた。
(もうこんな時間か。)
多少足を速め、家へと向かった。
視線。
俺は反射的に振り向いた。しかし、そこにはただ無言を貫く闇と先の見えない道が広がっているだけだった。
(何だ...今の。)
多少不気味だが、何も無いのだからしょうがない。
(帰るか。)
そしてここから数時間、俺は日常を満喫した。
勿論、これからもその予定だった。
しかし、人の人生ってのはいとも簡単にひっくり返る物である。
誰が決めたわけでも、宇宙定理でもない。
相場的に、なんだよ。
あざーしたo(`▽´)o