白いものを見たの
絶望的な白に呑み込まれていく恐怖と、失われた色への切望。
あの日、僕の世界から一切の彩りが消え去った。
視界を埋め尽くすのは、冷たく無機質な「白」の群れ。それが単なる色彩の喪失ではなく、僕たちを捕食し侵食する**「異形の実体」**だと知った時、世界は静かに崩壊を始めた。
抗う術もなく白へと同化していく人間たち。僕が求めたのは、かすかな記憶に残る「本当の色」だけだった——。
息をのむ緊迫感と、底知れぬ狂気が交差するダークサスペンス。
一人の青年が病室のベッドで目を覚ました。視界を埋めるのは、無機質な真っ白な天井。
「気がつきましたか?」
傍らに立つ看護師が微笑む。だが、青年の心臓は嫌な音を立てて跳ね上がった。
彼女の顔、壁、窓から見える外の景色、自分の手足。あらゆるものが、削り取られたかのように塗られた真白の世界。色という概念が消えていた。
「どうしました?」
不気味な白さの中から、看護師の声だけが響く。青年が震える手で自分の目を触ろうとした瞬間、彼女が耳元でささやいた。
「ああ、色が見えないんじゃないですよ。**『白いもの』**が、あなたを包み込んでいるんです」
視界の白が、ゆっくりと蠢き始めた。
【了】
ご愛読いただき、ありがとうございました!
「病室で目覚める」という王道の導入から、一気に怪奇SF・ホラーの世界へと引きずり込まれるような展開を目指して執筆しました。
ただの「色覚異常」かと思いきや、視界のすべてが自分を包み込む「未知の存在」だったという絶望感を楽しんでいただけていれば幸いです。白く蠢く何かが一体何なのか、彼がこの後どうなってしまうのか……想像を膨らませていただければ嬉しく思います。
面白かった、ゾクッとしたと思っていただけましたら、ぜひ評価や感想、ブックマークをよろしくお願いいたします!次回作もお楽しみに!




