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異世界恋愛で良くある婿養子なのに総領娘に闘いを挑み負ける父親の話

作者: 山田 勝
掲載日:2026/05/18

 おとこならやらねばならない。

 例え、負けると分かっている闘いでも。



「お父様~、屁で空を飛べる~?」

「ミリー、飛べないから、窓に足をかけるのはやめなさい」



 例え、娘が馬鹿でも。



「ギャ~ハハハ、ケツかゆい~、あら、掻いていたらスカートが破けたわ」


 妻が下品でも・・・・妻は後妻だ。



 やらねばならない。ワシは婿養子。

 つまりだ。先妻が産んだヴィクトリアーノが成人するまでのつなぎの伯爵代行だ。

 ヴィクトリアーノの祖父は侯爵だ。


 これ、勝てないだろう。

 だが、ワシは子爵家の六男だった。

 天下を取りたい。伯爵として君臨したい!


 こんな時に限って先妻の子、ヴィクトリアーノは賢い。



「お父様・・・ミリーがドレスを上下逆さまに着ています・・・」

「そうか、指導を頼む」

「お義母様が鼻から豆を飛ばしています。注意して下さいませ」

「うむ・・・」



 勝てる所が一つもないじゃーないか?

 どーすんだよ。

 この後は、ヴィクトリアーノが婿を取ったら、ヘイコラしあきゃいけなくなるだろうが、クソガキに。


「ヴィクトリアーノ、フランシス家に行く」

「はい、お父様・・・」





 ・・・・・・・・・・・・・



「・・・というのだよ。何か良い手はないだろうか?」


 社交界で知り合ったフランシス夫人に尋ねた。

 彼女は後妻だ。血のつながった子はいない。

 ワシと同様の悩みを抱えているのだ。



「フフフフフ、エーリッヒ様、何も実の子を跡取りにつけなくても良いのよ」

「ほお、傀儡ですか?」

「そうよ」


「しかしな。ヴィクトリアーノは頭が良い。可愛いけど自分はそうは思っていない。とても嫌味な奴だ」


「まあ、簡単よ。エマ、来なさい」



 エマ、フランシス夫人の義理の娘か・・・呼び鈴を鳴らす。まるで使用人扱いか?


 しかし、来ないな。言う事を聞かないのか?



「夫人も先妻の子との関係で苦労しているのか?」

「まあ、階段まで見に行きなさいな」


 階段まで行った。ここは一階だ。二階でボウと立っている令嬢がいた。

 これがエマだろうか?



「・・・お義母様、階段を降りて宜しいですか?」


「危ないわ。貴女階段で転んだことがあるでしょう。今、義母がいきますから待っていなさい。貴女は私がいないと何も出来ない子なの」


 フランシス夫人がエマの手を取り階段を降りる。


「エマは私がいないと何も出来なくて困っているのよ」

「な、何と・・・良い歳をした令嬢なのに・・・まるで子供のようだ」



「フフフフフフ・・もういいわ。後はメイドの言う事を聞いていなさい」

「はい、お義母様」


 話を聞くとエマが幼少の頃から否定する言葉を少しずつかけた。決して褒めない。

 これを数年続けた・・・


 自分では何も出来ない子が誕生した。

 優しい不幸状態だ。



「フフフフ、どう?これで貴方は伯爵と変わらなくなるわ。婚約者も自分では決められない子になるわ。今からでも遅くはないわ」




 ワシは・・・ニッコリ笑って。


「・・・ワシは正々堂々、伯爵家の予算で贅沢をしたいんじゃー!そんなヒドい話あるか!」


「まあ、貴方、決して勝てないわ。法がそうなっていますの」


「ヴィクトリアーノは能力あるくせに自分ではほどほどと思っている。しかも、コミュニケーション能力は欠如、事前の調整が出来ないから、周りの無能さが目立つが、それでも我が娘なのじゃ!」



 はあ、はあ、はあ、息が切れる。夫人はジィと見つめている。


「追い出してもヒーローに拾われるのが我が娘じゃ!」



「でも、貴方、ヒーローは貴方に向かって来るわね」


「負けても戦うのがおとこじゃー、エマ、来なさい!」

「キャア!」



 エマを連れ出した。

 しかし、フランシス夫人はため息をついただけだったそうだ。




「フゥ、それも良いかもね・・・クスッ」

「奥様・・・」

「どこかで誰かに注意して欲しかったのかも・・・修道院に行くわ。後は頼むわ」





 エマを我が屋敷に連れ出し。

 我が娘、ミリーの世話をさせた。


「ヒィ、ミリー様!口に食べかすが・・・ついております。今、ふいて差し上げますわ」

「ミリー、ありがとう系~」


 世話をさせることで少しずつ自信を取り戻せば良い。




 しかし、騎士団がやってきた。


「エーリッヒ、令嬢誘拐の罪で逮捕だ!」


 やっと来たか。


 エマの遠い親戚が行方不明になったので捜索をかけたらしい。

 しかし、事情を考慮されてワシは懲役3年になった。



 妻とミリーは実家に戻り。

 刑期を終えたワシは辺境で剣術道場を立ち上げた。剣術は少々得意だった。

子供達を指導した。



「ねえ。ねえ、師匠!あたち、王都で活躍する!」

「ほお、そうか、なら、朝夕千回立木撃ちじゃー」

「あい!」



 娯楽のない辺境だった。弟子達は練習に励み。みるみる実力をつけて・・・王都から使者がやってきた。



「エーリッヒ殿、王都近衛騎士団の師範に推薦をする!」


 剣聖になった弟子がワシのおかげだと言いやがった。


 そうか、ワシはヴィクトリアーノの父親、実力があるがそれほどでもないと思うのはワシの血だったか・・・


 これは・・・


「はて?ワシはそんな実力はないが・・」

「ご謙遜を、剣術四天王の師ではないですか?」



 とぼけよう。何だよ。剣術四天王って。

 やっとヴィクトリアーノの気持が分かった。

 王都に行ったら訪ねてやるか。・・・気がついていたら、娘の顔が大空に浮かんでいた。


最後までお読み頂き有難うございました。

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