表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

#1

少女が目を覚ますと、その少女は同じベッドで眠っていた。桃色の長い髪に、赤く大きな目。無表情で人形のように可愛らしい


なんで同じ布団に?


「てか誰?」


「私はツキ。宜しくな」


そんな可愛らしくも落ち着いた声で話すツキに、少女は少し困惑していた。少女は長く美しい黒色の髪をしており、生気のないような黒色の目をしている


「ほんとに誰?」


「人間が解き放った化け物だ」


「何言ってるの」


少女は起き上がり、ベッドから降りようとすると、しっかりとその足を掴まれた


「え」


「綺麗な足に珍しい目の色……気に入った。私とお前で結婚しよう。世界を滅ぼす程に気に入った」


少女は鬱陶しそうに思い切り足を振るが、その手は全く払えない。ツキはその足に全身で抱きついていた


「ほんとに誰!ってか、おかしいよね、なんで知らない人が同じ布団に入ってたの?」


この子、お肌柔らかい……私の足が癒される。けど、ツキが恐ろしい何かなのは伝わってくる


「私は遥か昔から飛んできた。その偶然飛ばされた位置がここだった。理由は話したし、私はここに住むから宜しくな」


「いや、出てってよ。てか手離してよ!」


「この足は私の物だ。お前が命令するな」


「私のだから!」


もう能力で振り払っちゃお


「えい」


その足は陰のように変わり、次第に足そのものが消えた。片足で跳ね距離を取ると、再び足が戻る。ツキは少し体制を崩し、何か嬉しそうに笑っていた


「お父さん!この人誰?」


そう声を荒げながら、慌てて階段を降り終えた。しかし、部屋には誰もいなかった。ツキも階段を降り切る


そうだった。お父さんはもういないんだ


少女はツキの顔を見ると、優しく微笑んだ


「朝ごはん作ってあげる。ツキ、私と一緒に住も。私の名前はブラック・ローズ。宜しくね」


「急な変化だな。ちなみに式はいつにする?」


「結婚はしないから」


「残念な話だ」


ローズがキッチンへ立ち、ツキは席に着く。しばらく経つと、朝食が出された。ハンバーグであり、肉と大量のチーズが入っていた


「チーズの量がアホのそれだ」


「いや、料理はチーズが命だから!」


ローズは時計を見ると、すぐに目を逸らした。向かいの椅子へ座り、ローズもハンバーグを食べる


「ねえ知ってた?お鮨に炙りチーズを乗せると美味しいんだよ」


「鮨の旨味が死ぬな」


「食べれば絶対に気に入るのに」


ツキは棚の方を横目に見ていた。ローズは不思議そうにその様子を伺っていた


「私のローズを誰かが監視してるな」


「監視?私を?」


ツキは棚の上に置かれる猫のぬいぐるみを手に取った。赤い目を大きく開き、その猫を見ると、不気味にも笑っていた


「おい、これ誰からだ?」


「裁縫部の人から昨日貰ったやつだけど」


微量の能力が入ってる


「私のローズを怖がらせた罰を与えてやる」


ローズは顔色を青くした


「キモ……あいつに監視されてたの?」


「十分以内に削除してやるよ」


その教室から一人の男が立ち上がり、すぐに走り出す。それを追いかけるよう、一人の男が後を追う


「ちょっと、二人とも?」


教師の呼び声を後に、二人は廊下を走る。小太りの男と、それを追うのが細身に眼鏡を掛けた男。肌もボロボロであり、髪や身なりも不潔そのものの二人だった


「俺のカメラがバレた。ローズちゃんの家に本物の化け物がいたんだ」


「ローズ氏の家ですか?まずいですよ、ローズ氏には手渡しでしたよね?犯人バレバレですよ」


「ラストを呼ぶぞ。あいつに判断を委ねる」


その教室の扉を思い切り開いた


「ラスト!緊急だ!」


ラストは二人と同い年の中三の男。細身でありながらも整った容姿であり、その前髪を長く伸ばしていた。全体的に首辺りまで伸びる黒髪であり、アホ毛が跳ねていた


「おけ、例の場所へ行こうか」


三人はラストの部屋へ集合をした。二階建ての良い家であり、庭も広く、朝の九時でありながらも学校を抜け出し帰ってきた。そしてアットは経緯を説明した


「なるほど、化け物か。ちなみに俺も、世間からは冷凍の怪物と呼ばれているが、化け物と怪物のどっちが強い?」


「そこまでは分からねえけど、俺の能力を見破り、余裕そうに笑ってたんだ。身の毛のよだつ感覚、あれはダメなやつだ!」


ラストは鼻で小さく笑う


「余裕を見せつけ相手を絶望させる。そんな小細工さ。学校には戻れないが、代わりに相手は俺たちを見つけられない」


「もし相手が探知能力だったらどうするんですか?」


ラストは立ち上がる


「だったら俺は負けないから、怪物の勝利で終わるだけの話。それより、マナはどうだった?」


細身の男、ブットがそれに答える


「自分がテレパシーで少し脅したら、応じましたよ。アット氏が弱みを握り、自分が証拠を残さず脅す。万一にはラスト氏がいる。コンボ技ですね」


「マナと会うぞ。学業は捨てる形になるが、俺たちはこっちで生きていける。お前ら二人の能力があればな」


「ラストの後ろ盾があるから、怖い物なしに好き放題できるんだよ」


その人のいない公園のベンチで、マナと会っていた。長い茶髪の女であり、その場にいるのはラストのみ。他二人はトイレで隠れていた


「話しをしようか」


「いいですよ」


「こっちには君の裸の映像がある。これは簡単な取り引きだ。これをインターネットに出してほしくなければ、今後俺たちの言うことには絶対に従うと誓え。主従契約だ」


「そんなことばっかりしてたら嫌われますよ。それに、それって犯罪ですよね?」


マナは震えていた。しかし、臆することはなかった。そんなマナの真剣な様子に、ラストは呆れたよう溜息を吐く


「知ってるか?犯罪ってのは、しようと思えば誰でもできるんだ。したら社会の調和が乱れるから捕まる可能性もある。しかし、俺らのは完全犯罪だ。お前は何をされても口外できないし、誰かに見つかったとしても、最悪殺せばいい。俺は神に成った。全ては俺の思うまま動く。故に、俺に逆らわない方がいい」


ラストはスマートフォンを取り出し、マナの着替えている映像を見せた。マナは口を抑える


「綺麗な身体だ。最初の命令」


「もういいです」


その声を遮った。マナが指を鳴らすと、空から無数の炎の矢がラストに振り注ぐ。矢が地に着いた直後、巨大な爆発が起こった


この俺に手を出すか。勇気があるな


その火煙が消えると、完全に無傷のラストが座っていた。全く動じておらず、顔色一つと変えていない


「あの女、ラストと戦うつもりか?」


「ラスト氏の実力を知らないのですね」


マナはその圧倒的な力に絶望をしていた


「無傷……」


「悪くないが、相手が悪かった。実力も分かった所で、最初の命令だ。俺の指を咥えろ。猫のように、大切に咥えるんだ」


「クズが!」


「口は達者な方がいい。その方が楽しい。早くやれ。俺は乾燥肌なんだ、その舌で潤わせてくれ」


マナがその口を指に近づけた


「そう、それでいい」


ラストに寒気が走った


「はいはい、お兄さん、そこまで」


声と同時に、手を叩く音がした。ラストが振り向くと、そこにはローズとツキが立っていた。マナもその方向へ視線が行く。慌てた様子で二人がトイレから出てくる


「ラスト!赤目の女、あれが化け物だ」


「しかし、なんでここが分かったんでしょうか。僕たちは何もヘマはしてないはず」


ラストは氷の剣を作り出した。そして、そのベンチから立ち上がる


「化け物とは何度か戦った。確かにあれは化け物だ。しかし、残念なことに探知能力らしい。怪物の勝ちだ。二人はマナを人質にしろ」


「任せろ!」


アットはマナの首元にナイフを置いた


「ほらほら!動けば殺すぞ!」


「いいんですかね?この女が死んじゃっても」


ツキは全く動じずに歩き出す


化け物だ。何故笑っている?これが余裕か?


「ちょ、ツキ、人質が……」


二人は倒れていた。能力もなしに、マナが体術で倒していた。マナはラストを睨み、ラストは何かを察した


思考が届かなかったな。マナは余裕であいつらより強い。分かってた情報なのにな


「ローズ、赤目の女。お前らの映像だって持ってるんだ。いいのか?ボタン一つで世界に全裸が公開されるぞ?」


ツキは止まらなかった。ラストはツキの歩幅の速度に合わせ、後ろへと下がっていく


「私は一度も脱いでないぞ?下手な嘘だな。それに、発言が気持ち悪いな。仮に持ってるなら、拝見してから削除してやるよ」


なんかツキじゃないみたい。あんな怖かったっけ?もっと大人しい感じの……


「って、勝手に拝見しないで!」


ラストは氷剣で斬りかかるが、片手で抑えられたと思うと、既にその手から氷剣は消えていた


二人は置いていくしかない


「さらば」


ラストと全員の間に巨大な氷壁が作られた。氷越しに物凄い速度で逃げるラストの背中が見える。しかし、ツキがその氷壁に触れると、まるで何もなかったかのように消えた


感じる。俺の氷壁が死んだ。何が起きた?


気がつくと、ラストは無数の刀に身体を貫かれていた。刀の向く方向は様々であり、それに酷く違和感を覚えた


刺された感覚がなかった。身体に重なるよう刀が出現したような。それに、方向がおかしい。どの方向から刺したんだ?


「残念、詰みだ」


ツキに肩を掴まれた。その瞬間、ラストの全身から血が噴き出、ラストは急いでツキから距離を取る


「悪くないバリアだ。私の能力を抑えるか」


異常だ。俺は俺のバリアに自信を持っていたが、まさか、ここまで貫かれるとはな。この血は、あいつの取り込みと俺のバリアが反発し合った結果か?そして発動条件は相手に触れることか


「悪くないだけだ。化け物の前だと、良いバリアには成れないらしい」


酷い出血だ。こんな化け物に負けるってなら、仕方ないって割り切れるな


ラストは氷を体内で繋ぎ合わせ、命を繋ぎ、止血もしていた。しかし、立っているのがやっとであり、もう長くはなかった


「潮時か」


ラストは背に氷壁を建て、凭れた


「ねえ、なんでこんなことしたの?」


ローズは訊く。マナはおらず、公園でアットとブットを見張っていた。ラストは溜息を吐く


「ツキとやら。お前の能力は再構築だろ?」


「知ってたのか」


ラストは吐血する


「俺ら三人で完全犯罪を作れると考えた。上手く行った。ローズの質問に答えるのなら、楽しかったからだ。することの規模が大きければ、それだけ大きなデメリットを背負うことになる。俺は完全犯罪を悪用した代償として、この歳で死ぬことになった」 


ツキはラストの胸に手を置いた


「馬鹿らしい仕組みだ。成功するには大規模な行動が必要なのに。それとローズ……学校には行けよ」


「なんでラストにそんなこと言われなきゃいけないの?それは私が決めることだし」


「まだ二日目だろ。取り返しがつく。甘えれば、それだけ先の時間でつけが回ってくる。俺の姉はそうやって廃人となった」


その瞬間、ラストの存在が消えた


- 第1話「本物の化け物」4/12-4/12 -

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ