第6話 「連合艦隊」は本当に常設化する必要があったのか
こうした諸々の事を考える程、「連合艦隊」は、やはり常設化するべきでは無かった。
更に言えば、日本海軍は、第一の仮想敵国を米国にするような背伸びをせず、それこそロシア、後継国といえるソ連を第一の仮想敵国として、戦備を調えるべきでは無かったか、と私は考えざるを得ません。
そう呟くと、
「歴史を知らないおバカ」
「米国は日本と戦争するために、散々に陰謀を巡らせ続けてきたのであり、1941年に日米戦争が勃発するのは必然だった。真珠湾陰謀論が正しいのは自明のことだ」
等々の批判の声を受けますが。
国家が自国の利益を追及するのは当然のことであり、日本が日本の利益を追及するように、米国にしても米国の利益を追及するのは当然のことです。
そして、史実の流れを見る限り、日露戦争後の日本は、満蒙から中国本土に掛けて、自国の利益をひたすら追及しており、米国の利益を阻害し続けたとしか、言いようがありません。
更に言えば、満州事変が好例ですが、それこそ日本単独での利益を、日本はひたすら追及し、英国等でさえ眉をひそめる有様だったのです。
そんなことをしては、米国が日本を敵視するのは当然ではないでしょうか。
そうしたことまで考えあわせると、本当に日露戦争までは陸海軍が協調して、第一の仮想敵国が統一されていたのに、日露戦争で勝利を収めた後は、陸軍は相変わらずロシア、更には後継国であるソ連を第一の仮想敵国である、として戦備を調え続けたのに。
海軍は何故に、米国こそが第一の仮想敵国として、戦備を調え続けたのか、と私は考えます。
(そう呟くと、上述のように、歴史を知らないのか、米国は日本と戦争する気満々だった、むしろ、日本陸軍こそがお花畑で、陸海軍が協調して日本は対米戦争最優先で、ずっと備えるべきだった、と私は叩かれますが)
そして、連合艦隊の常設化というのは、後知恵ですが、誤っていたという気が私はしてなりません。
それによって、日米対立が激化したのではないか、とまで、私は考えてしまいます。
そんなことは無い、と言われる方もおられますが。
人間関係において、ある人を自分が積極的に敵視しだすと、相手も自分を積極的に敵視しだすのは、よくあることでは?
史実の日米関係ですが、日露戦争後、日系人排斥運動が米国内で起きる等、宜しくない事態が起きたのは間違いありません。
ですが、岡崎久彦氏等が言うように、それを日米双方の政府がそれを更に煽るようなことをせず、鎮めるように動けば、それなりで収まったのではないか、と私は考えられてなりません。
そんなことを日米双方の政府がしても全くムダ、歴史は変えられない、とよく言われますが。
本当にそうなのでしょうか。
そんな風に対立を煽るべきではない、と日米双方の政府が言えば、それなりに日米の対立は鎮静化したのではないか、と死んだ児の歳を私は数えてしまいます。
連合艦隊を常設化するということは、日本海軍上層部にしてみれば、日米戦争に備えるために必須、と考えられたのかもしれません。
ですが、連合艦隊創設の経緯等を考えれば、日本が米国を第一の仮想敵国として備えだした、と当時の米国政府や軍部から考えられて当然の事態を引き起こしたのではないか、と私は考えられてならないのです。
更に言えば、そういった様々の流れの末に引き起こされたことまでも考えるならば。
私としては、連合艦隊を常設化するという日本海軍の最終的な決断は、結果論ですが、太平洋戦争、日米戦争を招来して、日本のポツダム宣言受諾に伴う無条件降伏という事態を、引き起こした遠因になったのではないか、という考えが浮かんでならないことなのです。
そんなことを私は考えます。
これで、本編を終えて、明日、余談を投稿します。
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