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第4話 「連合艦隊」の暴走

 現実社会でも、何時か目的と手段が逆転することがあります。

 例えば、本来の目的は会社経営の効率化なのに、会社経営の効率化を図る手段を幾つも打ち出すのが目的となるような事態が起きるようなことがあります。


「連合艦隊」を常設化したことは、対米戦勝利という目的の為ですが、その為の手段の筈の艦隊決戦の勝利という目的を追及する組織に「連合艦隊」が成るという、本末転倒というしかない事態を、私の目からすれば結果的に引き起こした気がします。


 更に言えば、海軍軍令部と陸軍参謀本部が協調して日本の国防を担うのが、本来の姿の筈です。

 しかし、それこそ陸軍参謀本部が、関東軍の暴走に満州事変から日中戦争期に掛けて手を焼いたように、太平洋戦争期になると、海軍軍令部は、連合艦隊司令部の暴走に手を焼くようになります。


 それこそ真珠湾空襲が好例です。

 軍令部と連合艦隊司令部の関係から言えば、軍令部の指示に連合艦隊司令部が従うのが当然なのです。

 だから、本来からすれば、真珠湾空襲が行われる筈がない、といっても過言ではないのです。

 ですが、連合艦隊司令部の強硬な主張から、真珠湾空襲が行われる事態が起きます。

 

 そして、真珠湾空襲が結果的に大成功に終わったことが、更なる禍根を引き起こします。

 連合艦隊司令部の主張を、軍令部が止められなくなったのです。

 それこそ満州事変の成功で、関東軍の暴走を参謀本部が止められなくなったようなものです。


 そして、何とも皮肉なことに、真珠湾空襲で艦隊決戦に依らずに戦闘に勝利できることを示した筈の連合艦隊司令部は、その後も艦隊決戦による勝利を追い求め続けることになり、ミッドウェー海戦における大敗や、ガダルカナル島を始めとするソロモン諸島の攻防戦に注力して、日本の国力を消耗させる事態を引き起こすことになります。


 昔の某PCゲームで、

「陸軍としては、海軍の意見に反対である」

というフレーズがあったこと等から、太平洋戦争の敗因として、陸海軍の対立が挙げられることが多いですが、実は軍令部と連合艦隊司令部の対立も、相当なモノがありました。


 例えば、ガダルカナル島撤退成功直後から、絶対国防圏への戦線縮小を、陸軍参謀本部も海軍軍令部も協調して進めようとしますが、その戦線縮小に基本的に反対を貫いたのが、連合艦隊司令部というのが、何処までの人に知られているでしょうか。


 実際、戦線を縮小して戦力を集中して、来襲する敵軍を撃破するというのは、戦力的に劣勢な側が採る手段としては、常識に近い手段の筈です。

 それこそ陸と海の違いはありますが、独ソ戦で独軍は戦線を縮小して戦力を集中することで、ソ連軍に打撃を与えることに何度も成功しています。


 それなのに、連合艦隊司令部は戦線縮小に基本的に反対を貫き続けており、古賀峯一連合艦隊司令長官に至っては、1943年8月時点に至っても、

「連合艦隊には後退思想は無い。軍令部は後退命令は出さないでもらいたい」

と発言する有様でした。


 こうしたことが、ニューギニアやソロモン諸島方面の最前線の将兵への補給途絶から、飢餓を招く事態を引き起こしたように、私には考えられてなりません。

 

 勿論、連合艦隊司令部には連合艦隊司令部なりの論理がありました。

「来寇する米艦隊との決戦に勝利を収めるとなると、前線基地を放棄する訳には行かない。前線基地からの攻撃で米艦隊を消耗させ、その上で艦隊決戦を挑まないと勝算が立たないではないか」

という論理です。


 しかし、前線基地を維持するとなると補給確保等が必須ですが、連合艦隊司令部がその点に配慮したように、私には思えません。

 それは、他が考えることだ、と考えていたようにさえ見えます。

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― 新着の感想 ―
そう言えば、陸軍は悪者にされているけど、「海軍に付き合わされた戦争」以外では、戦争終盤のインパール作戦までは、大量餓死も壊滅的な大敗もしていない。ソロモン・ニューギニアの惨劇はほぼ海軍(実行部隊として…
 満州事変で日本を孤立させた関東軍は中央の命令も聞かずに暴走し国家を滅亡に導いた愚か者、開戦冒頭の真珠湾攻撃の大成功をもたらし大いに暴れた連合艦隊は武門の誉れ(・Д・)みたいな風潮が昭和の戦記ブーム以…
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