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第2話 「連合艦隊」の必要性

 さて、この「連合艦隊」ですが、何故に1922年に常設化されることになったのでしょうか。

 それこそ「連合艦隊」は、戦時や大規模な演習時に編制される存在であり、本来は常設の艦隊では無かった筈なのです。


 更に言えば、1922年以降の「連合艦隊」ですが、私自身も、長年に亘って誤解していましたが、全ての日本海軍の軍艦を指揮下に置く存在では、基本的にありません。

 連合艦隊は、第一艦隊と第二艦隊を指揮下に置きますが、それ以外の艦隊、例えば、支那派遣艦隊等は、連合艦隊の指揮下ではなく、軍令部の指揮下に置かれているのが、基本だったのです。


 この辺り、太平洋戦争末期の海軍総隊と、この1922年以降の連合艦隊を、ほぼ同視して、何処が問題なのか、という意見が、それなり以上に強いように、私には見受けられますが。

 連合艦隊が何故に常設化されたのか等の背景事情まで考えていくと、そう簡単に考えるべきではない、と今の私は考えています。


 私なりの理解で言いますが、1922年に連合艦隊が常設化された原因ですが、1921年にワシントン海軍軍縮条約が締結されたことがあります。

 

 このワシントン海軍軍縮条約締結ですが、それまで日米の国力比を無視した軍拡を追及してきた、日本海軍の一派(後の艦隊派の源流)にしてみれば、無念極まりないことでした。

 

 物凄い皮肉なことを、私なりの理解で言いますが。

 日露戦争での日本海海戦の大勝利までが、この遠因になりました。

 

 この日本海海戦の大勝利の結果、それまで日本海軍の宿敵と言えたロシア海軍は壊滅しました。

 そして、英国と日本は同盟国の関係にあります。

 日本は自らの国力を考えれば、戦艦等の建造を縮小して、自国の国力に見合った軍備を調えるときが来たと言える状況だったのです。


 ですが、その一方で、米国のアジア、中国方面への侵出を、日本政府や世論は、そう軽く見る訳にも行きませんでした。

 実際に米西戦争によって、フィリピンが米国の植民地になる事態が起きていましたし、門戸開放の美名を唱えつつ、米国は中国に露骨に食指を伸ばしてもいたのです。

(そういったことから、未だに日米戦争は必須だった、という陰謀論が一部の界隈で根強く唱えられ続けてもいる気が、私はしますが)


 更には、1908年に米国の「グレート・ホワイト・フリート」の来訪という事態が起きました。

 これは正確には、「グレート・ホワイト・フリート」が世界一周の航海を行う過程で、日本政府からの要請で行われたモノなのですが。

 結果的にですが、米海軍の力を強力に、日本政府や世論に印象付ける事態が起きます。


 1908年時点で、米海軍の戦力は、日本海軍の戦力を質量共に上回ることが明らかになってしまったのです。

 更には、このことが日本海海戦の大勝利で天狗になっていた日本海軍の一部にとっては屈辱としか、言いようが無いことになったのです。


 そして、この当時の日本海軍には、日露戦争で総戦力的には上回っていたロシア海軍、艦隊戦力を各個撃破できた成功体験が根付いてもいる時期でもあったのです。

 

 これらが噛み合わさった結果、日本海軍は、対米戦に備えるべきだ、と叫ぶようになり、更には日本海海戦と同様の方策を講じることで、圧倒的に国力が勝る米国にも勝てる、とまで言うようになった、と今の私は考えています。


 唯、この時点の日本海軍の視点からすれば、必ずしも誤っていたとは言い難いのが、私としては悩ましいです。

 それこそ日露戦争で、圧倒的に国力が勝るロシアに(表面上はですが)日本は勝てたのです。

 同様に米国にも日本は勝てる筈だ、と考えた日本海軍の面々を、後世知識から間違っていた、と軽々しく私は叩けません。

 本当にこの辺りですが、後知恵ならば、何とでも言える、ということが多いのが、私は悩ましいです。

 それこそ日露戦争は、実際に(表面上は)勝利を日本は収められたのです。


(何故に表面上は、という枕詞を付けるのか、というと。

 ポーツマス条約締結に失敗して、日露戦争が継続した場合、私が見る限りは、どう見ても日本が敗北するとしか、考えられないからです)


 そんなこんなのことを、私は考えざるを得ません。


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 グレートホワイトフリートの周航が日本に危機意識をもたらせた、のも事実だけど日露戦争の黄色人国家の意外な勝利に白人優越思想に浸っていたオーストラリアやニュージーランドが恐怖感から黄禍論を滾らせてアメリ…
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