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9.ゲームのモンスター

 異世界からこの世界を滅ぼしに来たラフィオさんの同族との戦い。それが先日終わったそうです。もうこの世界に怪物は現れず、平和が戻ったはず。今、世間は春休みなる期間でのんびりしてるらしいです。


「のんびりじゃないけどねー。年度が切り替わって社会人は大変です。あんたたちも、あと数日で学校なんだから。忙しくなるわよ」

「学校までに、今回の怪物騒ぎを解決したいね。また怪物が出てきて休校なんて嫌だから。僕は真剣に学校に通いたい」


 そう。平和になったはずの世界に、また怪物が出ました。


 きっかけも無しに、いきなり怪物が出現したから対処してくれと、警察という治安維持組織からお願いされて戦いに出たとのことです。

 さっきのドラゴン以外にも色々出てきて、魔法少女たちは散らばった怪物を追いかけて街中を駆け回ったそうです。


 ドラゴンを撃ち落とすのに、レールガンなる大掛かりな武器まで使ったらしくて、大変そうですね。


「わたしたちと同じですね。こちらも、突然ドラゴンとかニワトリの怪物が出てきました。街の中心にある魔法陣から出てきて。それが、テラン世界のモフシ? という場所と繋がってたらしくて」

「テラン世界?」

「この世界の名称だよ。エデルードみたいなもの」

「知らなかった……」

「神が世界の区別をつけるために、とりえあえず付けた名前さ。僕も久々に意識したよ」

「フィアナちゃんの世界にも名前があるの?」

「あるはずだ。彼女から探ることはできないけどね。とにかく、向こうにこちらと繋がる魔法陣が描かれていた」

「わたしたち、そのモフシからドラゴンが来たと思ったのですけど」

「模布市にドラゴンはいない」

「シャチホコという怪物はいるそうですけど」

「いたなー。怪物になった」

「倒したけどね」


 やっぱりシャチホコはいるんですね!


「おそらくドラゴンは、もっと別の世界から来たと考えるべきだ。模布市に来たドラゴンも、魔法陣から出てきた」

「そういえば、こちらの世界の広場にも魔法陣が描かれていました」

「公園だよ」

「へえー。公園」

「その魔法陣を読み解けば、フィアナちゃんたちを戻す方法が見つかる?」

「かもしれない。手掛かりにはなるね。でも、魔法陣の上でドラゴンがもがき苦しんだ。ほとんどが消えてるだろうさ。でもやりようはある。魔法陣を描いた人間がいるはずだ。監視カメラでその人物を探せば話が聞ける」


 その時、ピンポンと音がしました。急になんでしょうか。みんな玄関の方を見てますけど。


「ちょうど良かった。樋口が来たね」




 家に入ってきた大人のお姉さんが、わたしとユーリくんをジロジロと見つめます。なんだか眼光が鋭くて怖いです。


「これが異世界の住民、ね。悪い子ではないようだけど、早急に送り返したい」

「でも樋口さん。この男の子、モフモフなんですよ? 送り返すなんてもったいないです」

「モフモフなら彼氏がいるでしょう?」

「そうですけど。あればあるほど良いんですよ」

「樋口。公園に魔法陣を描いた人間がいるんだ」


 ラフィオさんとつむぎさんは付き合ってるんですね。そして彼女の言うことを真に受けずに、ラフィオさんが説明して、樋口さんが納得しました。

 なんとなく、関係性が見えてきますね。


 モフモフが得られなくて不満顔のつむぎさんが、ソファに座って大きなぬいぐるみを抱きしめながらテレビをつけました。コータさんよりずっと大きなぬいぐるみが、この世界にはあるんですね。


「ええ。わかったわ。カメラの解析をさせる。……ドラゴンについては、あなたたち本当に何も知らないの?」

「そうだよ。見たことがない。あんなの、エデルード世界にも存在しない。それに夜の戦闘で暗かったから、敵の姿をよく見れてないのもあるし」

「そう。敵の死骸は警察が回収しているわ。明日、改めてよく見る?」

「見るけど、あんまり得られることは」

「あああああ! これ! これです! 見てください!」


 つむぎさんが不意に大声を出して、みんなそっちを見ました。

 テレビに、さっきのドラゴンが映っています。青空を飛びながら威嚇するみたいに吠えています。


「え。何これ」

「ゲームのCMだね」

「あった。樋口さんこれです」


 遥さんがスマホ画面をみんなに見せました。


「近日発売のゲーム。モンスターが暴れる世界で戦う物語……」

「あ! このモンスター、わたし戦いましたよ! ニワトリのやつ!」

「オレもこいつぶん殴ったぜ……このヘビみたいな奴も」

「さっきアユムちゃんに巻き付いて、縛り上げたやつだねー」

「その話はするな! 思い出したくない……」

「でも、ちょっと気持ち良さそうだったよ?」

「ないから! そんなことないからな!」

「馬鹿な話はやめなさい。ゲームのモンスターが現実世界に現れたって言うの?」

「少なくとも、そっくりなのは出てきた」

「……死骸を保管してる所の職員にゲームのこと伝えるわ。あーー! もうなんなのよ! フィアイーター騒ぎが終わって落ち着いたと思ったのに!」


 樋口さんが愛奈さんと同じようにお酒を飲みます。


「いい飲みっぷりねー。ほら、もっともっと」

「どんどん注ぎなさい。連絡はほら、スマホでやればいいだけだから。飲まなきゃやってられないわよ!」

「樋口さん。このゲームを開発した会社、模布市にあるそうですよ?」

「ほんと? へえー。偶然とは思えないわよねー」

「こういうの、普通は東京にあるものだよな」

「今時ゲームの開発なんてどこででも出来るから。地元に会社を構えるなんて普通よ。でも今回は見過ごせない」

「会社の社長が、モンスターのデザイナーもやったそうです。プログラマーなのに、デザインの才能もあるんですね」


 遥さんのスマホの画面を見ました。何書いてるのか、さっぱりわかりません。コータさんも、言葉は通じるのに文字は読めないと言ってましたね。


「プログラマーであり、デザイナーであり、シナリオライターでもあり、ビジネスマンでもあり総合プロデュースもする。オールラウンドゲームクリエイター、五条院星矢、だって」


 遥さんが読み上げてくれました。

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