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射手と獣~「無能魔女」「姉魔法少女」クロスオーバー編~  作者: そら・そらら


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53.戦いの終わり

 カイやユーリたちは悠馬たちと共に、雑魚を寄せ付けずレールガンの斜線の確保をしていた。

 敵を狙える状況は整っている。あとは、ここから見れば小さい的に命中させればいいだけ。


 そしてハンターは外さない。


「わかった! とりゃー!」


 狙いをつける時間も一瞬。放たれた弾丸は鱗が剥がれて脆くなった箇所へ正確に当たり、肉を破壊しながら内部にめり込んでいく。

 血が流れる。どこまで深く弾が潜り込んだかは確認できないけど、相当な痛さらしい。


「ウヴァァァァァァァ!」


 この咆哮は悲鳴なんだろうか。足の付け根を撃たれたから、体のバランスも明らかに崩れた。六本足だから普通の獣よりも安定はしているけれど、機動力は間違いなく下がっていて。

 背中のセイバーを振り落とそうとする動きも鈍くなった。


「行ける! みんなやっちゃって! 総攻撃!」


 バギャウヴァの上で立ち上がったセイバーが勇ましく呼びかけると、みんながそこに殺到した。既にニワトリたちはほとんどが倒され地面に死体が転がっている。だからみんな、バギャウヴァに攻撃を集中させる。


 特にコータは、奴の頭部を狙って爆発魔法を食らわせたいた。頭も鱗に覆われていてダメージ自体は大してない。しかし爆風で激しく頭を揺さぶられ、ビームの狙いも定まらないばかりか脳震盪のような状況にまで追い込まれている。


 セイバーが、弾丸の通った穴に剣を刺して動かしていた。バーサーカーは逆側の足の付け根に組み付き、次の鱗を剥がすべく力を込めている。動きが鈍った今、難しい仕事ではなかったらしい。


 何枚も鱗を剥がして放り投げていた。露出した肉を、みんなで得物で突いていく。あるいは素手でな殴ったり蹴ったりした。もちろんラフィオも駆け寄って、この巨大に噛み付いた。

 傷が蓄積していき、バギャウヴァの体はだんだん動かなくなっていった。頭部へのダメージも相当だろうから。


 コータが爆発魔法を止めた。けれどバギャウヴァはフラフラで、ろくに前も見えてないらしい。目も爆発の影響を受けたのかな。

 鱗が所々砕けていて、肉が露出して血が流れていた。


 そこにセイバーが剣を掲げながら駆け寄った。太陽の光を浴びた剣は光り輝いている。


 フィアイーター相手じゃなくても、剣が全力を出せるというのは大切だ。鋭さを増した剣はバギャウヴァの頭部に刺さる。頭蓋を貫き、中の脳を刺した。


 その寸前に、バギャウヴァは周囲を見た。そしてこちらに考えが伝わってくる。たぶん、二十年前に五条院が遭遇したのと同じ感じだ。

 なるほど。言葉ではない。でも気持ちが伝わって、感情がかき乱される。バギャウヴァが感じていることだ。


 痛みと恐怖。そして僅かな後悔。


 何に対する後悔だろう。この世界に来てしまったことか。

 それとも、二十年待ち焦がれた獲物を、結局食べられなかったことに対してかな。


人間なら周りに大勢いる。二十年前は逃げ回るしか出来なかった脆弱な生き物だ。

 それに負けたことも、後悔なのかな。


 詳しい考えはこちらに伝わらないし、こちらも深く知ろうとは思わなかった。


 直後にセイバーがバギャウヴァの脳を完全に破壊して、意識が流れ込むのも止まった。

 巨大な怪物の死体を前に、みんな少しの間沈黙していた。


 それを破ったのは、電源車から出てきてフラフラとバギャウヴァの前に来た五条院で。目の前まで来ても微動だにしない怪物を見て、気が抜けたように座り込んだ。


「死んだ。完全に死んだんだよな?」

「ええ。そうね」

「そうか。良かった。ようやく……苦しみが。終わる。終わるんだ……」


 人知れず長きに渡って苦しみ続けていた男が、ようやく解放された。





「さあ。みんな撤収するわよ。異世界の人は異世界に。こちらの人も家に戻らないと」


 樋口がパンパンと手を叩いて促した。余韻に浸ってる場合じゃないか。


「俺たちは帰らなきゃいけないな。みんな、いいか?」

「も、もうちょっと待って。コータのいた世界、もっと見たい。ほらあそこ、大きな建物! 行ってみたい!」

「帰るぞ」

「やだー!」


 リゼがカイに促されている。ユーリもリゼの体を押して無理やり穴へと入らせようとしている。

 彼女に持たれているコータは、腕から抜け出して妹の方へ歩いていく。本来の彼よりもずっと背の低いぬいぐるみの格好だ。香花もまた、しゃがんで目線を合わせた。


「行くんだね、お兄ちゃん」

「ああ。ごめんな」

「ううん。いいの。今のお兄ちゃん、すごく楽しそうだから。それに、一度会えたんだもの。きっとまた会えるよ」

「俺も、そう願っている」


 だから香花は笑顔で別れられる。最後にぬいぐるみをぎゅっと抱きしめて、離した。


「遥さん皆さん! お世話になりました!」

「ガウ」

「ユーリくんもそう言ってます!」


 フィアナも手を振っている。狼化したユーリは喋れないけれど、同じ気持ちらしい。


 そしてカイは。


「ロジャー。お前はどうする?」

「え?」


 そう尋ねた。ロジャーも向こうの世界の住人。だけど。


「俺たちはこれから、街に残る怪物たちを蹴散らしながら、柵に開いた穴から脱出するつもりだ。さっき町長の屋敷を壊して、追われてるから」

「そ、そうなんですか……」

「ロジャーもしっかり探されてた。俺たちが居場所を知ってるみたいな会話をしたから、こっちも追われている。そして、ユーリは三人乗りなんだ」

「ええっと。つまり」

「待ちなさい異世界人。あなたまさか」

「ロジャーはこっちに置いてくれ!」


 樋口の咎めるような口調に、カイは笑顔で応じた。


「なんでよ! 違う世界の人間を残すとか何考えてるの!?」

「ロジャー。もしかして、わたしと一緒にいてくれる?」

「そ、そうなるかな。僕も香花と一緒に過ごせると嬉しい」

「そこ! 何勝手にラブコメみたいなことしてるの!?」

「お幸せにな!」

「待ちなさい! こら! 面倒ごとを置いてかないで! 待てー!」


 樋口が追いかけようとするけど、カイたちを乗せたユーリは穴の向こう側へ行ってしまった。すかさず香花が穴を閉じて、行けなくしてしまう。


 後には、香花とくっついている、ちよっと申し訳なさそうなロジャーが残された。


「あー。異世界の人間を管理するのはわたしなのよ。魔法使いなんて異質な人間を世界から隠して、保護して管理して……仕事が増える!」

「大変ですね樋口さん」

「まったくよ! はあ……。ロジャー」

「はい!」


 ため息をついた樋口はロジャーに向き直る。こういう時、なんだかんだ受け入れてくれる樋口は偉大だ。

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