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射手と獣~「無能魔女」「姉魔法少女」クロスオーバー編~  作者: そら・そらら


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48.オーガ

 柵近くの家の屋根に登ったラフィオさん。その上からわたしは何度も矢を放ちます。数体、間に合わずにゴブリンが街の方へ落ちてきましたが、すぐさま兵士の槍に突かれて殺されました。

 この調子でゴブリンの数を減らしていければと思っていたのですけれど。


「あれは、なんだ……」


 ラフィオさんが街の中心を振り返って怪訝な声を出しました。わたしも見ます。

 微かに赤い光の線が空に向かって伸びています。不幸なプテラノドンを数体焼き尽くしました。


「あんな魔法、見たことありません」


 同時にコータさんの火球も放たれているので、たぶん彼の魔法ではありません。


 線は数回途切れたり、方向が変わったりします。それが。


「うわこっち来た!? なんなんだ!? ビームとか!?」


 ラフィオさんが知らない言葉を口にしながら、慌てて退避します。だから当たりませんでしたが、背後にあった柵に命中しました。


 木製の柵が砕けて、破片が燃えていきます。無事だった箇所にも引火して、脆くなりました。そこをよじ登っていたゴブリンたちも巻き添えを食らい、消し炭になったり吹っ飛んだりして死んでいきます。

 そして、柵に大穴が空きました。まだ地面にいたゴブリンたちがそこを突破口だと認識して、一斉になだれ込んできます。


 兵士たちの驚きと悲鳴の声が聞こえます。

 まずい。まずいです。


「槍隊! 構え! 絶対に街に入れるな!」


 兵士の指揮官が声を上げます。穴にいくつもの槍の刃が向けられ、入り込んでくるゴブリンを叩き潰したり突き殺しています。

 わたしも上から狙って援護しますよ。なんとか侵入は食い止められていると思います。


 けれど、それも長くは続きませんでした。


 森から何か来る。見張りの兵士が叫びます。


 ゴブリンではなくもっと異質なもの。

 誰かが叫びました。オーガだと。


「ええっと。オーガってなんでしょうか」

「僕もよく知らない。ゲームだと、強そうなモンスターとして出てくるイメージだけど」


 なるほど! 強そうなモンスターが来るのですね!

 それはまずいのでは。


 実際にまずかったです。オーガも柵の穴を見て突破口と認識したのでしょう。そっちに近づいてきて、わたしたちにも姿を表しました。


 オークという怪物がいます。わたしの身長の二倍くらいの大きさで、豚みたいな顔つきをしています。なんとなく、それをイメージしていました。

 でも違いました。オーガはオークよりも大きいです。さらに倍くらいあります。


「なんだこいつ。身長……六メートルくらいか!? でかすぎるぞおい」


 ラフィオさんも同じ意見のようです。周りの二階建ての建物よりも少し低いくらいの背丈。森の木々は背が高いので隠れられますけど、街の中だと目立ちます。

 今のわたしたちの位置からなら見下ろせますが、地面にいる兵士たちにはとてつもない迫力でしょう。


 顔つきも恐ろしいです。口からは鋭い牙が生えて、額には二本の短い角があります。まるで。


「鬼だね」


 ラフィオさんが呟きました。


 それが柵の穴に手をかけて、バキバキと音を立てながら広げて侵入します。燃えていようと関係なしです。

 兵士が槍でオーガの腰に向けて刺そうとしましたが、オーガはそれを大きな手で一気に薙ぎ払います。何人も並んでいた兵士たちの方が力負けしてバタバタと倒れて、起き上がって我先にと逃げようとしています。あ、ひとり踏み潰されました。


 オーガは、自身に弓を向ける兵士たちを見て、彼らに駆け寄り蹴飛ばしました。


 その足元にはゴブリンたち。奴らもオーガに簡単に踏み潰されています。人間より小さな生き物なので、巻き添えになりやすいのでしょう。


 ゴブリンが逃げてきたのは、オーガからなのでしょう。今も必死に逃げています。森では生きられないと悟って人間の世界に活路を見たのに、そこにまでオーガが入り込んで絶望している様子です。

 それでもゴブリンたちは生きるのに必死で、街のあちこちの方向に散らばっていきます。これはこれで、住民が襲われて不安です。


 あ、通りを歩いているニワトリに遭遇しました。敵性生物だと見たのか、ゴブリンが数体で一気に襲いかかりニワトリを攻撃しています。


 乱戦状態ですね。わたしの敵同士で潰し合うのは嬉しいですけど、市民が巻き込まれるのはまずいです。

 しかもオーガも、街の中心部へと向かっていきます。兵士たちが止めようとしていますが、軽く蹴散らされています。


「まずいですよ! ラフィオさん!」

「止めなきゃだね。けど、どうしよう。パワーが足りない」

「ですね! コータさんを呼んでこないと!」


 ニワトリたち普通の怪物なんて、オーガに比べれば雑魚です。兵士でもギリギリ相手してられます。


「よし。オーガをそっちに誘導しよう。注意を惹きつけてくれ」

「わかりました!」


 こういう時は、相手の目を狙えばいいんです。屋根の上から矢を放てば、オーガはちゃんと気づいて手を動かしこれを払い落としました。

 そして、こちらを睨み付けます。動きが早いです。わたしたちがいた建物に向けて拳を振り下ろし、屋根をぶち破りました。中の人ごめんなさい!


 ラフィオさんは早くに動いていて、隣の家の屋根に飛び乗ってから、別の建物に移動してだんだん高度を下げて通りに降り立ち、走ります。わたしは振り返ってオーガを攻撃し続けながら、周囲を警戒して邪魔なニワトリたちも殺していきます。

 まあ、ラフィオさんは突破力がある上に身軽なので、ニワトリは軽々と避けています。どっちかと言えば、わたしの弓が当たりにくい方が問題です。


 やっぱりユーリくんと感覚が違いすぎます! 早く合流しないと。


「あ! ラフィオさん避けて!」

「わかってる!」


 オーガが街路樹を引き抜いて、こっちに投げてきます。ラフィオさんは容易に回避して、地面に激突した木が枝葉を鳴らしました。

 向こうは正確にこっちを狙っています。

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