39.パーティー
「麻美、明日はよろしくね。わたしはちょっと世界の危機を救うから」
「わかりました任せてください!」
麻美さんは愛奈さんのお仕事の後輩で、魔法少女の戦いで忙しい愛奈さんをサポートしています。
「会社の皆さんも、魔法少女絡みの案件なら仕方ないと言うでしょうし。愛奈さんには特別に魔法少女休暇が与えられると思います!」
「なんでそうなってるの……? 受け入れられるのは嬉しいけど。そんなに注目されるのもどうというか。年休減らないのはいいんだけど……うーん」
「取引先も、魔法少女だって紹介したら、話がスムーズにまとまりますしね!」
「そうなのよねー。わたしとしては、そんなに嬉しくはないのだけど。ものすごく恥ずかしいから」
「これは噂なんですけどね。愛奈さんを魔法少女として出演させるCMを制作する計画があるそうなんです」
「聞いてないんだけど!? え、なにそれ! わたしそんな仕事するの!? というか、こんなBtoB企業がCMする必要ある!?」
「他の大手の部品メーカーとかも、割とやってますよ。企業のイメージアップのために」
「そうだけど! 自分の会社がそんなことして、自分が巻き込まれる日が来るなんて思ってなくて! むあー! もう魔法少女になることは無いって思ってたのに! 戦いと無関係でやるなんて!」
「頑張りましょう、先輩!」
「やだー!」
「CMを打つなら、是非わたしの方にご連絡ください!」
「うわあ澁谷さん!?」
別の女性が話しかけて来ました。
「この人は、テレビのアナウンサーさんなんだよ。テレビに映って、見てる人にお知らせをしたりする仕事」
遥さんが耳打ちします。なるほど。この人がテレビの中で動いているのですか。テレビの中にいる人って、外にも出られるんですね。
「確かに! CMするなら澁谷さんの局が一番かなとは思いますけど! でも恥ずかしいというか」
「わたしも全力で支援しますから! なんならCM以外にも、わたしの番組で愛奈さんの会社を取材して特集を組むのも良いかなと! 魔法少女が在籍しているだけではなく、地元の有力企業ですから!」
「やめて話を大きくしないで!」
「頑張ります!」
「むあー!」
「それに明日も、戦いが起こればその状況は逐一報道して、市民に避難を呼びかけますから!」
「所々真面目だから、そこは尊敬できるんだけど……」
大人たちの猛攻に愛奈さんは疲れてる様子です。
そんな澁谷さんは、わたしたちの方を見ます。
「おふたりが異世界から来た子供たちですね! はじめまして。ちょっとお話しいいでしょうか」
「ストーップ! 澁谷さん! ふたりは取材NGです!」
「静かに異世界に帰してやろうな」
「ラフィオたちが戻ったら異世界の様子を聞くくらいにしておけ」
即座に、遥さんとアユムさんと悠馬さんが前に出て押し返します。さすがです。
「澁谷ー? 明日の戦いのこと教えるから、そこに座って。あと飲むわよ」
「そうよそうよ! こうなったら飲んでやるわ! 心配事は飲んで忘れるに限る!」
「そうですね先輩! 酔った勢いでCM出演決めちゃいましょう!」
「それは遠慮するけど! 乾杯!」
「乾杯!」
「ほら! 五条院! あんたも飲みなさい!」
「え。いいのか?」
「あんたを仲間に引き入れるつもりはないけどね! せっかく大人がいるんだから飲みなさい!」
「感謝しなさいよー。こんな美人ばっかりいる席で飲めるんだから」
「別に、それで嬉しいと思いはしない……です」
大人たちはお酒の缶をぶつけ合って、一気に飲んでいます。良い飲みっぷりですね。五条院は、恐縮しっぱなしで、お酒の味なんかわかってない様子ですけど。
「じゃあ、わたしたちも食べよっか」
遥さんが義足で器用に歩き、庭に設置されたバーベキューの金網に肉を乗せていきます。ユーリくん、それを目を輝かせて見ています。やっぱり好きなんですね、肉。
「あ。わたしも手伝います!」
「お。香花ちゃん積極的だねー」
「皆さんに迷惑かけてばかりなので」
「気にしなくていいってば! ほら、香花ちゃんも遠慮なくなく食べていいよ!」
「は、はい!」
恐縮しているのは香花さんも同じですね。
「ほら。フィアナたちもジュース飲め。コーラの方がいいか?」
「コーラはなんか、舌が痛くなるので」
「僕は、好き」
「そうなんですか!? ユーリくんはこういう、刺激的な飲み物が好きなんですか?」
「うん」
恋人の新しい一面に気づきましたよ。炭酸水というものは、わたしの世界にはまだ無いです。ですが、探しても良いかもしれません。天然の炭酸水というものは、この世界にもあるらしいです。ならば向こうにもあるはず。
探してユーリくんに飲んでもらう。素敵じゃないですか。わたし、出来る女なので。そんなこともしちゃいます。
旅の目的が増えましたね!
フライドチキンをかじってコーラで流し込むユーリくん。ワイルドですね。
「これ、確実に太るやつだよな」
「今日ぐらいはいいと思うよ。ユーリくん運動もするだろうから」
「向こうの世界にコーラはないだろうしな」
「やっぱり、向こうは太ってる人は少ないのかな」
「かもなー」
むむ。ユーリくんが太る? それはいけません。わたしが、しっかりと恋人の体調管理をしなければ。
わたし、出来る女なので。
「フィアナちゃん、ケーキ食べる? 他にも甘いもの色々買ってきたよ。マシュマロとか。チョコレートとか。プリンとか。ラフィオがいないからプリン食べ放題だよ」
「いつもの癖で買っちまったんだよなー」
「ではいただきます……」
おお。甘い。甘いです! こんなもの食べたことありません! 甘いもの美味しいです!
「おお。いい食いっぷり」
「そんなに甘いもの食べてたら太るけどな」
「まあいいじゃん。今日だけなんだから」
おお。甘いもの食べすぎると太るのですね。それは良くないです。ユーリくんの彼女として、スレンダーな女じゃなきゃいけません。
重いとユーリくんの上に乗れませんから。
明日は運動をしっかりしましょう。それはそうと、プリンはもうひとつ頂きましょう。




