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射手と獣~「無能魔女」「姉魔法少女」クロスオーバー編~  作者: そら・そらら


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37.静かな街

 そういう魔法もあるってことさ。


「そのための穴を簡単に開けられてたキエラって、すごかったんだね」

「本当にね。魔法使いとしては優秀だったさ」

「ラフィオくんの敵で、お母さんなんだっけ?」

「そうです。複雑な事情があって、倒しました」

「そっかー。それは大変だったね。わたしも一時期、お母さんとは関係が良くなかったから、わかるよー」

「リゼのは参考にならないからな。完全にリゼが悪いし、和解も簡単だった」

「わたしにとっては簡単じゃなかったもん!」

「リゼさん。お喋りしてる暇はないですよ」

「ひいぃっ!? ちゃんと魔力はあげてます!」


 つむぎがリゼに向けて手を上げたのは、母親の話題を終わらせたかったから。ラフィオへの気遣いだ。


 ありがたく思いながら、ラフィオはつむぎのお腹に顔を近づけてスリスリと擦りつけた。


 そうだね。親との関係が上手くいかないのは、普通だ。カイもロジャーもそうらしい。コータも、突然いなくなって微妙な関係となってしまった。

 リゼなりに、こっちを励まそうとしたんだよね。リゼの親子関係は最終的に上手くいったというのが、僕らには得られないものだ。


「あの。リゼさんの魔力は本当にすごいです。なので、あまり責めるのは……」


 ロジャーが遠慮がちに言う。


「わかってるよ。河原の石の魔力で半年かかった魔法だ」

「そんなに!? それを一晩でやるんだから、疲れるに決まってるじゃん! ちょっと休んでも……」

「リゼさんが優秀でも、一度休ませると永遠に怠けてしまいそうです」

「ひえぇ……つむぎちゃん怖い!」

「ラフィオ、つむぎ。ちょっと外の様子を見たい。手伝ってくれないか?」


 カイがそう提案して、ラフィオはつむぎの膝から飛び降りた。リゼを助ける意味もあるのだろう。


「いいよ。僕に運んでほしいってことだね」

「ラフィオが大きいモフモフになるなら、わたしも行きます!」


 頷いたカイに合わせて、ラフィオは巨大化した。


 つむぎとカイを載せて、夜の街に出る。夕食時で、平時なら仕事終わりの人々が通りを歩いて飲食店に出入りしたり家路を急ぐ時間帯なのだろうけど、今の街は閑散としている。

 街がゴブリンに囲まれている異常事態。みんな息を潜めて、災害への備えをしているのだろう。家の窓や戸に板を打ち付けて、敵が入ってこれなくするとか。即席の武器を作るとかで。

 いつ、門を破って敵が入ってくるかわからない。


 そんな街を、ラフィオは屋根から屋根へ跳び移りながら端の方へ向かう。さすがに兵士が集まる場所では目立ちたくないから、大きな動きは控えた。


 門の付近の家の屋根の上で止まり、周りを見る。兵士たちが十数人集まって門に板を当てて釘を打ち付けていた。つまり、この門をしばらく開けるつもりはなく、むしろ敵に破られない対策をしてるということだ。

 何か異変があれば即座に中心部へ伝令を出して、迎撃を始める。門の近くにある見張り塔では、弓を持った兵士がずっと外を見つめていた。


 当然、ラフィオたちからは背の高い柵の向こうの様子は見えないけれど。


「見張りが落ち着いているということは、今は外にゴブリンはいないのだと思う」

「なるほどね。でも、警戒は続けなきゃいけない」

「ゴブリンも、街に近づけば見張り塔から矢が降ってくることを学んでいる。街は安全な場所じゃないと把握しているんだ。でも、周囲にある森に身を潜めて、街の様子を伺っている」

「その気になれば、街に一斉に攻め込めるように?」

「気が起きるというよりは、必要になったら瞬間だろうね」

「何か恐ろしい怪物がゴブリンを追いかけて、街の方が安全だと活路を見出して襲いかかるんだね」

「そういうことだ。最終的に、正体不明の怪物も街を襲うことになる」

「そりゃ、バギャウヴァの相手なんかしてられないか」

「魔法少女に、こっちの怪物の相手もしてもらえないか?」

「手が空いたらね」

「怪物ってどんなのですか? モフモフなんですか?」

「それはわからない。巨大な獣の可能性はある」

「そっかー。モフモフしたいなー」

「つむぎはいつもそれだなあ」

「モフモフなら絶対に負けないのに。なんかね、バギャウヴァはモフモフじゃないっぽいの」

「絵は見れてないけど、体は鱗で覆われてるらしいからね」

「仕方ないから、ラフィオをモフモフします」

「やめろ。なあ。カイも笑ってないで、こいつを引き剥がしてくれ」

「いいじゃないか。仲が良いってことだから。羨ましいよ」

「そうかい?」

「ちびっ子たちの方が恋愛とか進んでるのが」

「ふふん。羨ましいだろう」


 僕は恋愛をするために、キエラに反旗を翻したんだから。その結果得た恋人がモフモフ悪魔なのは当初の想定と違ったけれど、まあ幸せだから良いさ。

 というわけで、カイの羨望には思いっきり乗っかることにする。


「カイにも、好きな人はいるのかい?」

「まあ、気になる女の子は」

「まさかリゼさんですか!?」

「いや、ない。それはない。絶対にない」

「まあ」

「そうですよね」

「故郷に幼馴染の女の子がいて。先日も会ったんだけど、どうもうまくいかなくて。でも……俺を大事にしてくれてるんだと思う」

「そうですか! じゃあ、また会わないとですね!」

「バギャウヴァと謎の怪物を倒して、ロジャーも街から解放して。そしてカイをまた故郷に連れて行く。それが目標だね」

「最後のは俺ひとりでやるから……」


 遠慮するカイだけど、嬉しそうではあった。

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