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射手と獣~「無能魔女」「姉魔法少女」クロスオーバー編~  作者: そら・そらら


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35.オールラウンドの意味

「二十年掛かったよ。あの時見た怪物たちが暴れて、それを倒すゲームを作って大々的に売り出せるようになれたのに。全て、俺が意図した通りのゲームだ。どうしたら奴らの攻撃から逃げられるのか。どうすれば弱点を突けるのか。なにより……奴らは倒せる。その事実を世の中に理解してもらうためのゲームだ」


 オールラウンドゲームクリエイターと呼ばれている五条院さんですが、その意味がよくわかりました。


 全て自分の思い通りのゲームじゃなきゃいけなかったんです。怪物がこの世界に来た時に、人々に被害が出ないように。ちゃんと戦って対抗できて、バギャウヴァを倒せるように。

 そんな未来のために、ゲーム作りに必要な全ての仕事を自分でしたのです。


「バギャウヴァも倒せる。だから恐れるな。ある日街に出てきても対抗できる。そういうメッセージを送るためのゲームなんだ」

「なるほどね。あなたは並行して、空き物件を借りて武器を用意していた」

「奴らとの戦いに備えるためだ。俺が使うためでもあるし、ゲームユーザーたちに解放して自衛の手段にしてもらうつもりでもあった」

「そう。わかったわ。完全に銃刀法違反よ」

「……すまない」

「でも、あなたなりに苦しんで、戦っていたのね。二十年のもの間、孤独に。その心情は理解してあげるわ」

「わかって、くれるのか?」

「ま、一年前のわたしなら、ふざけたこと言うなで逮捕してたでしょうけど。魔法も異世界もあるって知ったから。看過も黙認も出来ないけど、理解はしてあげる」

「……」


 隙間から見る五条院は、樋口さんに深々と頭を下げました。樋口さんはと言えば、微かに息をついて。


「まあ、今の情勢なら戦いは魔法少女に任せなさいで終わるでしょうけど」

「やっぱそうなっちゃいますか。わたしたちの出番ですか」


 お茶を出したまま、椅子に座って五条院の話しを聞いていた遥さんが返事します。


「現実問題としてね。魔法少女にやってもらうべきなのよ」

「仕方ないですねー。街がピンチなら、やりますよ」

『魔法少女の本来の敵ではないけどね』


 向こうのラフィオさんが、ちょっと呆れた声で言います。


「ま、それは申し訳ないと思うわ。キエラの脅威が過ぎ去ってからも戦ってもらうのだから」

『仕方ないのはわかってるけどね』

「今度、いいプリン買ってあげるから。公安のお金で」

『それでいいよ。ぬいぐるみも買ってくれ』

『えへへっ。わたしのためなんだよねー』

「わかったわ。……五条院さん。あなたもそれでいいわよね? あなたは自力で怪物と対峙する必要はない。二十年の努力は無駄になるけど」

「ああ。わかっている。一年前、魔法少女のことを知って、安心したのも事実だ。怪物が来ても守ってくれるって。自力でなんとかするより、ずっといい。もちろん、バギャウヴァたちの情報を世に広めるためにゲームは出すつもりだった。自分の戦いのためじゃない。魔法少女の戦いを有利にするためだ」


 五条院さん、いい人ですね。わかります。


「バギャウヴァは諦めていなかった。ここに来るまで二十年掛かったが。なぜ今になったのか、それはわからないけれど……」

「たぶん、わたしのせいです」


 香花さんが手を上げて、五条院からは見えないと気づいて、襖を開けました。


「ロジャーに会いに魔法陣をくぐった瞬間に、ゲームの広告のことを考えていて。その瞬間に、なんというか。視線を感じたんです。気づけば、空飛ぶ怪物に押し戻されていて。元の公園で倒れていると、魔法陣から怪物か次々に出てきて……」

『たぶん、魔法陣の間の空間で怪物のことを考えた瞬間に、怪物たちと繋がったのだろうね。不安定な空間らしいから。バギャウヴァの方も魔法で世界を超える方法を探っていた。そこに香花の意思が入ってきて、それが道しるべとなった。後は亀裂を作るだけだ。バギャウヴァが通れるだけの大きさまで亀裂を広げながら、怪物を世界に解き放って五条院を探しているというわけだ』

「わたしが余計なことを考えたのが悪かったんですね」

『いいや。事故みたいなものだよ。気にするな』

「元はと言えば俺の問題だ。広告を出したのも俺だ。君は悪くない」


 五条院が頭を下げて、香花さんも同じことをします。

 これで、何が起こったのかはみんな理解できました。


 五条院は樋口さんに向き直りました。


「俺のゲームはこれからどうなる?」

「警察の権限で発売中止とかにはならないわよ。異世界で見た怪物を倒すためのゲームは、何の法律にも抵触しない。怪物のデザインも、実際にいる生物そのままの姿なのだから、著作権なんか無いでしょうから。世間が受け入れるかは別だけどね。炎上してあなたのキャリアに傷がつくかもしれないから、そこはあなたが判断しなさい」

「わかった……これでも、クリエイターとしても誇りはあるんだ。自分の作ったゲームは愛おしい。世間に広まってほしいと思っている」


 安心したのか、五条院は穏やかな顔をしていました。

 さて、事情はわかりました。となると次は。


「バギャウヴァと、ふたつの世界の間にいる怪物を倒して、裂け目も永遠に塞ぐことを考えないとな」


 悠馬さんの言葉にみんな頷きました。


「バギャウヴァってどんな姿なの?」

「これがデザイン画だ。ゲームにラスボスとして登場する。ネタバレだからネットに上げるなよ?」

「しないわ。みんな、見ておいて」


 五条院のスマホが和室に入れられます。中央に置かれたそれを、みんなで覗き込みました。


 ユーリくんも膝枕から起き上がり、わたしの背中に体を預けて肩から覗き込みます。ユーリくんの顔が近いです。ちょっと横を向けば、無表情なのに格好いい顔が至近距離にあるわけです。ドキドキが止まりません。

 そっちに向いてキスしても、ユーリくんは怒らないでしょう。でも、周りの目がありますから。愛奈さんもアユムさんも香花さんもバギャウヴァを見てるとしてもです。

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