24.向こうの人たち
自分たちが入った魔法陣と相対するように、もうひとつ魔法陣があった。どうやら自分たちはそっちに引き寄せられているらしい。
それからもうひとつ。虚空の中に、裂け目が見えた。黒い空間の中では、そこから漏れる光がよく目立つ。そこから、ニワトリが一羽飛び出した。
これが怪物の出現する元か。こちらともあちらとも違う世界。
たぶん、五条院が関わっている世界だ。なぜかその世界の怪物が、ふたつの世界の間に入り込んでいる。五条院のせいなのか、もっと別な理由があるのかは、今の段階ではなんとも言えない。
裂け目から、大きな目玉が見えた。
それも遠ざかっていき、ふたりは魔法陣から出た。その瞬間、光り輝く術式を可能な限り目に焼き付け、読み解き覚えた。
風景が変わった。屋内だ。
こちらをいくつかの顔が見つめている。不思議そうな、お前は誰だって感じの表情を浮かべている。
こっちも同じ気持ちた。君たち誰だ。
みんな未成年な年頃で、でもこちらよりは年上だ。男がふたりと女がひとり。それから。
「ぬいぐるみだー!」
「おい待て!」
止める暇も無くハンターが動いた。
「ぬいぐるみの猫さん! モフモフしていい!? いいよねやったー!」
「ぐえっ!? おいやめろ!」
「うわー!? コータ大丈夫!?」
「猫さん動いた!? なにこれ最新の玩具!?」
「離せこら! やめろ! おい!」
少女が抱いていたぬいぐるみに飛びかかったハンターは、一瞬でそれを強奪してモフり始めた。
やれやれ。
「ハンター。後でな。今はそれどころじゃない」
「やだ! 猫さんモフモフするもん!」
「駄目だよコータを離して!」
「おいこら強く引っ張るな! 痛い!」
「ぐぬぬー!」
ハンターからぬいぐるみを強奪すべく指を剥がしていくラフィオと、ぬいぐるみを引っ張る女。そしてもがいて逃れようとするぬいぐるみ。
ぬいぐるみが喋ってるな。なんでなんだろう。魔法と関係あるのかな。
「ねえ! あなたたち誰なの!? フィアナちゃんたちを連れ戻したはずなんだけど!」
「フィアナ!? お姉さんフィアナちゃんと知り合いなんですか!?」
「うわー!?」
その名前に反応したハンターが手を離したから、女とぬいぐるみは勢い余って転んでしまった。
「ユーリとも知り合いですか!? あのモフモフの! あのふたり、元の世界に帰れなくなって困ってました!」
「ユーリたちを知っているのか? 元の世界っていうのが、ここだ。俺たち、ふたりを取り戻すために魔法を使ったんだけど」
「なぜか、全然違うふたりが来たんだよね」
「俺は間違いなく、獣に乗ってる女の子を連れてきたはずだ」
「……これかい?」
みんなの前で、ラフィオは巨大な獣に変わった。大好きなモフモフを見たハンターがその上に乗って抱きつく。
どうやら、見間違われたらしい。
一瞬、みんなが無言になった。最初に口を開いたのは女で。
「もー! コータってば慌てんぼさんなんだから! 間違えちゃ駄目でしょ痛い!?」
「お前が急かすからだろうが!」
「だってー! 怪物がどんどん出てきてたもん!」
怪物? 確かに見れば、部屋の中にいくつものニワトリの怪物の死体があった。
窓が割れていて、まるで外に何かが無理やり出ていったようでもあった。
「というか! ユーリみたいな奴がもうひとりいるとか聞いてないし! 俺の世界にはそんな奴いないんだよ!」
「まあね。僕も異世界人だから」
「……もしかしてお前が、魔法少女とその仲間なのか? ミラクルフォースみたいな格好をしているし」
「そうだよ」
彼らがなぜ、魔法少女やミラクルフォースについて知っているかは、今は考えないことにしよう。
それどころではないらしいし。
外から悲鳴が聞こえた。怪物が暴れているらしい。この部屋から逃げた奴がいるんだな。
「話し合いは後だ。ここから逃げながら、外の怪物を退治しよう。俺たちが解き放った怪物だ。自分で始末しないと。俺はカイだ。そっちがリゼで使い魔のコータ。それからロジャーだ」
「僕はラフィオ。上に乗ってるのが魔法少女シャイニーハンターだ」
「変身してない時は御共つむぎと言います! コータさん後でモフモフさせてください!」
「嫌だ……」
「それより、逃げるって?」
「色々あって、今ちょっと隠れて行動しなきゃいけないんだ」
「ロジャーのお家とかからね!」
「よくわからないなあ。ちゃんと教えてくれないと」
「とりあえずラフィオ、ハンターと一緒にロジャーを乗せられるか?」
「出来るよ! 逃げながら怪物退治とは厄介だけどね!」
ラフィオは目立つ。その上に、逃げの主体らしいロジャーを乗せれば追われる可能性が高くなる。
でもまあ、やるしかないね!
家から飛び出したラフィオは、家の屋根に飛び乗って街を駆ける。模布市よりも家々の背が低いから、より自由に動き回れる。
ニワトリが住民を襲っているのが見えた。ハンターが弓を引いて、一撃で殺す。
プテラノドンが空を飛んでいる。そいつも倒すべきかと思えば、巨大な火球が打ち上がって複数体まとめて消し炭にした。
あれが魔法ってやつかな。すごいな。




