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射手と獣~「無能魔女」「姉魔法少女」クロスオーバー編~  作者: そら・そらら


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21.あっちの魔法

 こうしてロジャーは孤独となった。家族と疎遠になり、元々いた友人たちとも住む世界が変わり、むしろ金持ちの仲間入りしたロジャーに嫉妬して冷たい態度を取るようになった。

 養父になった町長も、別にロジャーを愛していない。欲しいのは血だけだから。自分の孫に魔法の才を与えるのが目的で、ロジャー本人に興味はない。


 町長の娘とロジャーに婚約をさせた。その娘とはロジャーの倍の年齢で、幼い頃からわがままし放題の、肥えた豚みたいな女。こんなのだから嫁の貰い手がいなくて、町長も困っていたらしい。

 この豚との間に子供を作れば、将来の町長になるそれに魔法の使い方を教える。それがロジャーの人生。


 ロジャー自身には魔法の先生はいない。この小さな街の町長はケチで、高い金を出して講師役の魔法使いを呼ぶだけの金を出すのも惜しんだ。ポンと出せる金ではないのは事実だけど、貴族なら無理じゃない金額なのに。だからロジャーは、養父が商人から買い叩いた古い教本を頼りに学ぶしかなかった。


「……これが僕の身の上です」

「うっ。うぐっ。ひっぐ。うええぇぇぇぇぇ」

「えっ」


 あ。不幸な身の上に同情したリゼが泣いている。ロジャーの方が引いている。


「大変だったねぇ! わかるよぉ! 家族から大切にされない気持ち! わたしも落ちこぼれだったがらぁぁぁ!」


 自身の境遇に重ね合わせているのか。リゼの生まれは魔法使いの名家で、首都に住む大金持ちで、こいつがぞんざいな扱いを受けていたのはリゼ自身の問題なのだけど。


「あ、ありがとうございます。そう言っていただけて嬉しいです」

「ぐすん。いいよロジャーくん! 頼りにして! 君が幸せになれるよう、なんでもする!」

「おい。そんな安請け合いをするな」

「だってー!」

「ロジャーの望みはなんなんだ?」

「こんな街を出ていって、旅をしたい。そして魔法の力の使い道を自分で決めたい。それが何なのか、わからないけど。町長のために使うのが正しくないのはわかっている! とにかく今の生活から抜け出したい!」

「だよね! うん! そうするべきだよ!」


 気持ちとしてはコータも同じだけど。それよりも。


「怪物が出るまでの経緯を教えてくれ」

「本で勉強をして、自分で試しているうちに、異世界と交信する術を見つけたんです」

「異世界と?」

「本当に偶然なんですけど、術式と詠唱を間違えた結果、異世界に声が届いた。向こうの女の子がそれを受け取って。それがコノカです。なんて言ったっけ。スマホ? という機械を介せば通話がしやすくなりました」

「へえー。コータの世界にそんな物があるんだ」

「スマホにそんな機能はないけどな」

「僕はこれを使っています。スマホに似せた物をこちらでも用意することで、繋がりやすくなった」


 ロジャーが見せたのは、スマホサイズの黒い木の板。黒く塗って、裏には魔法陣が書かれている。


 とにかく、こうしてロジャーは香花と出会った。お互い顔を知らず、声だけのやりとり。同い年であること以外に共通点の無い、関係。だけどすぐに仲良くなった。


「コノカだけでした。僕に優しくしてくれるのは」

「ああ。そういう奴だ」

「僕の境遇に同情して、励ましてくれて。魔法のことをすごいって言ってくれて。そして、彼女の身の上も話してくれました。今から一年半前に、兄が失踪したそうです」


 コータがこの世界に来たのが、ちょうどその頃。向こうの桐原康太は、存在が綺麗さっぱり消えていた。

 リゼが、少し気まずそうに顔を逸した。


「失踪する理由なんかないし、状況が不可解だってみんな言ってるそうです。学校が終わって友達と挨拶している途中で、急にいなくなった。しかも、床に魔法陣が見えたって証言もあったらしいです」

「うん。そんな状況だった」

「ほんとごめん。でも、わたしもあの時夢中で」

「言い訳はいいから。ロジャー、続きを」

「コノカの世界の治安維持組織は、魔法なんて信じず、普通の失踪事件として捜査したそうです。家出なんじゃないかって疑われて、ありもしない家庭の不和を探られたとか」

「……」


 コータはこの世界に呼び出されて、散々苦労してきた。けど、残された方も苦労して、心に傷を負ったのか。

 悪いことをした。


「家の雰囲気が悪くなって、コノカも魔法に救いを求めたんです。ちょうど、向こうの世界にも魔法があると判明して」

「……は?」

「魔法少女ってご存知ですか? コノカは、ミラクルフォースみたいなやつと言っていました。なんのことかさっぱりですけど」

「……日曜日にやってるやつか?」

「はい。コノカも言ってました。コータさんの世界では、魔法少女は当たり前の存在なのですね」

「いや。そんなのいない。知ってる人は多いけど、存在はしない。物語だけの存在」

「でも一年前に、それが現れたそうです」

「俺の世界どうなってるんだ……」


 けどこれは、香花にとっては朗報だった。


 魔法があって異世界もある。となれば、兄はそこに行ったに違いない。そしてロジャーとも話せるようになって確信した。

 香花は異世界に行って、兄を探す旅に出るつもりだった。家から逃げたいロジャーと共に。


 そして今夜、香花をこちらに連れてくる儀式が行われて。


「怪物が代わりに出てきたわけか」

「はい……コノカとも連絡がつかないし、心配だ」


 人の妹を勝手に心配するな。というか呼び捨てにするな馴れ馴れしい。と言いたいところだけれど、コータには言えなかった。

 香花にずいぶんと心配かけてしまった。不安で仕方なかっただろう。その不安を一時的でもロジャーが慰めたなら、感謝する気持ちも少しはある。


 異世界に連れてこようとしたのは許さないが。

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