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射手と獣~「無能魔女」「姉魔法少女」クロスオーバー編~  作者: そら・そらら


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20.ロジャーの家

 魔法陣の中から、こちらを覗く者がいる感覚。新しい怪物だろうか。身構えた悠馬だけど敵は出てこなかった。

 代わりにおかしなことが起こった。


「動いた!?」

「えっ!? 魔法陣って動くものなの!?」


 魔法少女たちが驚いている前で、魔法陣はその場で滑るように移動する。壁をすり抜け家の外に。地面に移動した魔法陣はそのまま、高速でどこかに行ってしまった。

 模布駅の方向だ。


「なんだったの……」

「わからない。とにかく、ここに怪物はもう出ないはずだ」

「魔法陣から出てくるわけだからなー。……あの魔法陣、移動しながら怪物をあちこちにばら撒くんじゃないか?」

「ありそう……追いかけましょう!」

「もう見失ったけど」

「むあー!」

「もしもし樋口? 魔法陣が移動した」


 スマホで電話を掛ければ、向こうから混乱した声が聞こえた。あの子がまだ眠っているなら、あんまり騒がないでほしいな。


「とにかく、市内で怪物が出た情報が来たらこちらに知らせてくれ。向かって倒すから」

『ええわかったわ! 警察にも協力を要請する!』

「あの女の子は起きたか?」

『寝てる』


 指摘された途端に静かになる樋口。人の良さが見て取れる。


「悠馬。わたし、一旦抜けていいかしら。営業先との約束が」

「あー。言ってたな。わかった行ってくれ」

「手が空いたら合流するから! じゃあね!」


 セイバーも慌ただしく走っていく。社会人は大変だな。


「オレたちは待機か?」

「そうなる。怪物たちの死体を庭に集めよう」


 空き家だから使わせてもらおう。最終的な処理は警察に任せるとして。


「おう。待ってるのも暇だもんな。でも腹が減った!」

「ショッピングセンターで何か買うか。フードコートもあるし」

「いいなそれ!」


 屋内のニワトリを庭に運びながら会話する。その間もずっと考えていた。

 和室を見ても、魔法陣を書いた痕跡はない。だからさっきのは、何もない所に出現したことになる。


 そんなことはありえるのか。ありえるとしたら、誰の仕業なんだろう。




――――



 ロジャーという男に掴みかかったコータだけど、引き剥がされれば落ち着く他はなかった。

 わかっている。この人の良さそうな少年は悪くはない。いや、何かの失敗で大変なことをしでかしたのは事実だけど、少なくとも悪意は無い。


「大丈夫だよー。コータ、妹さんはきっと何の心配もないよー」

「……うん」


 リゼの平坦な胸に抱かれて慰められれば、そう返事するしかなかった。悔しいけど、こいつの根拠なしの言葉で安心している自分がいた。


「あの。あなたは本当にコノカのお兄さんなのですか?」


 ロジャーが深刻な顔で訊く。


「ああそうだ。俺がコータだ」

「そっか。本当にこっちに来てたのか。コノカ、喜ぶだろうなあ」


 その顔は本気で、香花の幸せを喜んでいるようだった。


 けど、のんびりしてる暇はない。カイが周囲を警戒しながら言う。


「みんな。とりあえず移動しよう。街の兵士が来る。そして原因を調べる。ロジャー。今回の件、君以外に起こせそうな人間は街にいるか?」

「い、いません。僕はこの街で唯一の魔法使いです」

「なるほど。じゃあ、君の選択肢はふたつだ。おとなしく兵士の前に出頭して取り調べを受けるか、逃げるかだ。出頭すれば処罰は免れない」

「それは良くない逃げよう! フィアナちゃんたちを連れ戻さないといけないし!」


 この女は即座に犯罪行為に走ろうとする。でもコータも同じ意見だ。

 ロジャーもそうらしかった。


「はい。こっちに来てください。隠れ家があります!」


 走るロジャーについていく。



 案内されたのは、住宅地にある一軒家。小さくてボロくてみすぼらしい、お世辞にも良い物件とは言えない。


「かつての僕の家です」

「今は?」

「僕はお屋敷に。両親と姉は広い家に引っ越しました。空き家になった後は買い手もつかなくて、こっそり僕が使わせてもらってます」

「……君の境遇から話してもらえるか?」


 家族と離れ離れになっている。いきなりそんな身の上を出されても困る。魔法使いって情報から、なんとなく推測はできるけど。

 この世界ではよくあることだし、ロジャーに起こったのも似たようなもの。


 椅子に座ったロジャーはゆっくりと話しだした。


「はい。僕は貧しい家の生まれでした。両親の稼ぎが少なく、ひもじい思いばかりをしていて。それでも、幸せな家庭だったと思います」


 でも、ある日変化があった。


「僕に魔法の才が見つかりました。本当に偶然でした」


 この小さな街に、歴史上魔法使いがいた例はない。近くの城塞都市には大きな魔法家がふたつあるのに。

 魔法使いの能力は遺伝する。そして、貴重なものであるがゆえに、魔法使いの家系はその血を他所に出そうとしない。だから広まらないものだ。


「大騒ぎになりましたよ。そしてこの街の最高権力者、町長の家に養子に出される話がきました。僕は家族と離れたくなかったのですが、両親も姉も乗り気で。聞けば、僕を引き取る代わりに莫大な支度金が払われたそうで」

「家族に売られたというわけか」

「はい……。それで大きな家に引っ越して、贅沢三昧をして。姉は中流とはいえ歴史ある役人の息子と良い仲になったらしくて」


 結婚したら、その家に寄生するつもりか。一家まるごと。


 ひどい話だ。

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