16.謎の制服少女
「僕は別に、なんでもいいのにね。つむぎがどんな格好をしてても、僕は素敵だと思うよ」
「えへへー。スカート履くの、やっぱり恥ずかしいしねー。それにラフィオはどんな服の時よりも、モフモフの時が一番素敵だしね!」
「まあ、それはそれでどうかと思うけどね」
ラフィオさんとつむぎさんが手を繋いで、仲良く話してます。こっちも親密そうな関係で羨ましいです。
服ひとつとっても、恋人との関係性って色々あるんですね。
デパートという、お店がたくさん集まっている施設に行きます。駅の近くには大抵そういうものがあるそうです。
子供用の服を専門に扱う店もあるそうです。すごいですね。
「脱ぎやすい格好がいいなら、ゆったり目のパーカーとかいいんじゃないかな。ちょっと前をはだけてシャツを見せるとか。ボトムスは半ズボンで……」
と、遥さんに言われるままに服を渡されたユーリくん。試着室なる小さな箱に入れられて、中で着替えます。
出てきたユーリくんは。
「おお……すごい! 似合ってますよ! 素敵です! 格好いいです!」
「そう?」
「はい! 今までと全然雰囲気違います! なんと言うか、すごくすごいです!」
どうすごいのか、この世界での生活が浅いわたしに言い表す言葉が見つかりません。見たことがないユーリくんがいて、とにかくすごいです。
緩い服装がワイルドな感じもします。でも都会で買った服なので都会的なんだと思います。つまり。
「ユーリくんの複雑さをしっかり表していますね」
「そ、そこまでのことかな?」
「はい! そこまでのことです! 遥さんはすごいです!」
「あ、あははー。そっか。そこまで褒められるの、久しぶりだから照れちゃうなー。フィアナちゃんも、それに合わせた服装にするべきかな。できれば、弓矢は無しで」
「えー」
「わかった。じゃあ大きめの鞄を買ってそこにしまおう。それで、鞄含めて合う服を考えよう」
「それなら……仕方ないですね」
「フィアナちゃんも、こだわり強いんだねー」
「弓を手放すわけにはいきませんから!」
「わかったわかった。それ含めて似合うファッションを考えるのが、わたしの使命です!」
「遥さん、張り切ってる」
「悠馬よりは素直に服を着てくれてるからね」
「そっかー。ねえラフィオ。おもちゃ屋さん行きたい。ぬいぐるみ欲しい」
「既に沢山あるだろう?」
「でもー」
服にあまり興味のなさそうなラフィオさんたちは、ふたりの世界に入っています。それはそれで幸せそうです。
――――
遥たちを見送った後、アユムも悠馬と共に家を出る。別行動を宣言した以上は、ちゃんと動かないとな。
「フィアナたち、今頃都会に驚いてるかな」
「前のアユムと同じようにな」
「だなー。めちゃくちゃ驚いて、都会に染まってほしい」
「でも、あのふたりはいつか帰るぞ?」
「それもそうだけど。それまで都会を楽しんでほしいだろ?」
「たしかに」
ふたり、近所を並んで歩く。とりあえず、昨日の魔法陣が描かれた公園に行く。
なんというか、ふたりきりで歩くのはデートみたいだ。結局遥との戦いには負けて、悠馬を恋人にはできなかった。それは仕方ないし受け入れてるけど、ドキドキするのは変わらない。
彼氏、ほしいな。誰だっていいわけじゃないけど。恋人がいる方が都会的だし。
「野次馬が多いな」
「だなー」
公園の前には人だかりが出来ていた。平日の午前中だから、多くの人は勤めに出ている。家でリモートワークしてても、怪物を見物するために外に出るわけにはいかない。
でも暇人というものは案外多いらしい。
学校は春休みの時期だもんな。
もちろん、公園には規制線が張られていて警察が立っている。近寄らないようにと野次馬を押し戻していた。
悠馬たちも、変身前で覆面を被ってなければ一般人。警察に睨まれて、中には入れない。
「ドラゴンの死体とか地面の魔法陣の写真とかは、夜のうちに警察が写真に撮ってるはずだ。樋口に言えば見せてくれるだろう」
「夜か。朝の時間に撮れば、印象が変わったりするかな」
「すると思う」
悠馬が空を見上げながら言う。報道ヘリが飛んでいた。
「明るい場所で見れば、例のゲームのキャラクターに似てると気づく人も出てくるはずだ」
「オールラウンドゲームクリエイターのデザインだな」
「そう。五条院の」
アユムはスマホでSNSアプリを開いた。薄着の女の子のイラストが大量に流れるTLの中で、ひとつの投稿が目についた。
報道写真と、ゲームの宣伝画像を比較した画像だ。
既にかなりの数が拡散されている。ゲームと五条院のアカウントには大量のリプライがついて炎上状態だ。
「もう気づいてるみたいだぜ」
「このタイミングで五条院が消えた。怪しすぎるよな」
「世間的には、もう五条院が犯人だって雰囲気になってる」
「でも違うっていうのが、俺にはわからない」
悠馬のスマホを覗き込んだ。樋口から送られてきた画像が映っていた。
公園の監視カメラの映像だ。スマホのライトで手元を照らしながら、セーラー服姿の少女が魔法陣を描いている。
「なんでこの時期に制服なんだ?」
「学校とか部活に用事があったとかだろ」
「なるほど……」
「でも、県警の少年課に問い合わせても、この制服の中学や高校は県内に無いらしい」
「え。じゃあこいつ誰だ?」
「わからない。他県から来たのか、単なるコスプレなのか。でも背格好から中学生か高校生らしいんだよな。正確な身長を、今画像解析で割り出してるらしい」
「警察も色々やるんだなー」
「重要な容疑者だからな」
「でも他県から来て魔法陣を描いて怪物を呼び出して、ついでに異世界の人間も連れてきて。なんのつもりだろうな」
まあ、興味本位で魔法を試したくなる奴がいてもおかしくはない。先日も、静岡から来た少女が魔法を試して、結果としてカピバラが巨大化した。
あれもモンスターみたいなものだ。




