14.出かける前に
というわけで、ユーリくんの前に出ました。
「ど、どうでしょうか」
「……可愛い」
「ふぁぁ……」
体が熱くなります。なんか、ものすごく幸せな気分です!
「ふふーん。ユーリくんってばわかってるじゃん。今の、無口なユーリくんが心から言ったんだよねー? 女の子を喜ばせるには、これで十分ってわかってるんだよ。ほらほら悠馬? ちゃんと見習わなきゃ駄目だよ?」
「俺だって遥のこと褒めてるだろ?」
「もっと褒めてって言ってるの」
「女の子を喜ばせるには、一言で十分なんだろ?」
「わかってないなー」
悠馬さんに絡む遥さん。どういうことなのか、わたしもよくわかっていません。
「でも良かったよー。この服がちゃんと活用されて! つむぎちゃんに着せるために持ってきたのに、着てくれなかったやつだから」
「一回は着ました。そのスカート恥ずかしすぎます」
「えー。魔法少女の時は普通にしてるじゃん」
「あれも、ちょっと恥ずかしいんですから。……ラフィオのためです」
「ラフィオは幸せ者だねー」
「まあね」
顔の赤いつむぎさんと、少し得意げなラフィオさんです。つむぎさんは恥ずかしさをごまかすために、少年の姿のラフィオさんに抱きつきました。
小さい格好だとモフモフしてたのでしょう。
遥さんは次にユーリくんを見ました。
「その格好は警察に捕まるよ」
ローブの下は裸ですからね。
「ワーウルフの、里だと、みんなこんなの」
「ここは模布市です! とりあえずラフィオの着替えを渡して。それから街に服を買いに行こう」
「……」
「仕方ないな。こっちだよ」
ユーリくんを部屋に案内します。ラフィオさんは服を選ぶのにそんなに時間を掛けなさそうですし、ユーリくんも頓着しません。
すぐに戻ってきました。
「おおう。男子……」
タンスの奥にしまっていたと思しき古着。悠馬さんが昔着てたお古でしょう。服はシワだらけでヨレヨレで、襟も伸びていて片方は肩が出ています。
「狼になるようなことがあったら、どうせ破るんだろう? だったらこれでいいかなって」
「これ、着やすい」
「良くない! 全然よくない!」
遥さんが怒ってます。
「ユーリくん! これはデートなんだよ!? 彼女に格好いいところ見せなきゃ駄目なんだよ!? それを、こ、こんな、なんか、駄目じゃん!」
「……」
遥さんに言われても、ユーリくんは首を傾げるだけです。
「むあー! これだから! 男の子って! 男の子って!!」
「遥さん落ち着いてください!」
「そうですよ! ユーリくんはこういう所が魅力なんです!」
ユーリくんに詰め寄る遥さんを、つむぎさんと一緒に割り込んで押し戻します。
「ワーウルフは服に無頓着なんです。狼化すると裸になるから。脱ぎやすくて破りやすい服が普通なんです」
「モフモフになりやすい種族なんだー! すごいね! むしろ服ごとモフモフになれるラフィオってなんなの!?」
「ラフィオさんそうなんですね! それも便利だと思います! 小さい姿にもなれますし!」
「そうなんだよ! 大きいモフモフはすっごくモフモフだし、小さいとぎゅーって抱きしめられるの! でもユーリのモフモフもすごくモフモフだと思う!」
「えへへ。そうなんですよね。男の子の時の格好良さとか、クールさが好きなんですけど、狼の時の力強さも好きなんです! クールでワイルドなんですよユーリくんは!」
「そうなんだ! わたしもユーリモフモフしたい!」
「ねえ! わたしを押しながら惚気けないで! なんか会話微妙に噛み合ってないし! てか押さないで! まだ義足に慣れてなうわー!?」
遥さんが倒れていきます。まずいと思った瞬間、悠馬さんがすかさず寄ってきて受け止めました。
「まったく。遊びに行くなら早くしろ。ユーリの服が気に入らないなら、買ってやれ」
「あ。うん。そうだよね。えへへ……悠馬ありがと」
「どういたしまして」
遥さんも惚気けてるじゃないですか。顔が真っ赤ですよ。
とにかく、だらしない格好のユーリくんにジャケットだけ着せて、わたしたちは家を出ます。
車椅子に乗った遥さんと、この世界で言う小学生な歳のわたしたち四人でお出かけです。
「なんだか、わたしが引率してるみたいだね。みんな、良い子にしてね!」
「はーい」
「じゃあつむぎちゃん、車椅子押して」
「やだ。ラフィオモフモフしたいです!」
「じゃあわたしが押しましょうか?」
「フィアナちゃん出来るの? というか、そっちに車椅子ってあるの?」
「聞いたことはあります!」
「そうなんだ。そりゃ、障害者なんてどこの世界にもいるよねー。でも、聞いたことがあるって。実際に押したことは?」
「ありません! でも押せばいいだけですよね?」
何も難しくないです。車椅子の取っ手を掴んで勢いよく押します。
「うぎゃー!? 待って待って! 早い! 気をつけて危ないから!」
「フィアナ。車椅子は優しく、ゆっくり押すものだよ。乗ってる人が怖がるからね。安全バーの無いジェットコースターに乗らされものだから」
「ジェットコースター? 安全バー?」
ラフィオさんがやってきて、わたしの手を押さえました。
「僕が押すよ」
「うん。お願い……」
「えー! モフモフはー?」
「後でね」
「むうー」
「じゃあ、改めてしゅっぱーつ」
ラフィオさんが押す車椅子についていきます。




