10.オールラウンドゲームクリエイター
スマホの中には絵が出ています。写真というらしいです。
四十代半ばって感じの男性です。髪の色が左右に分かれています。片方は赤で片方は金色です。
変な色ですね。
「なんか肩書から名前まで、全部が胡散臭いわねー。格好も変」
「本名なのかしら。これも調べないとね。というか、こいつの所在も確かめないと。公安の力で」
「ひえー。公安怖い。樋口さん的には、五条院が魔法陣でモンスターを呼び出したと考えてます?」
「わからないけど、有力候補で事件の重要参考人ね」
「でも、目的はなんなんだ?」
「新作ゲームの宣伝とか。嫌でも話題になるから」
「ネットだと、まだ誰も話題にしてなさそうですけどね」
「目撃者は多いけど夜だからな。怪物の姿を見ても、詳しくはわからないか」
「怪物が出たら通報してすぐ逃げる。街の住民が一年間で得た習慣だね」
「他所の街だと、とりあえずカメラ起動するものね」
「ということは、宣伝は失敗?」
「宣伝目的だったらな。それにしては不自然なことが多い」
「夜だから怪物の姿が見えないこと以外に?」
「そもそも宣伝として、世間のイメージが悪すぎる。怪我人でも出たらゲームの印象が地に落ちる」
「逆効果だよなー。オレもやられかけたし」
「ヘビに縛られてねー」
「だからその話はやめろって」
「アユムちゃんから話したんじゃん!」
「そもそも怪物を呼び出すなんて行為が危険すぎる。宣伝のためにやることじゃない」
「なにかしらの罪に問われそうよね」
「公安の見解としては?」
「わかんないわよ。異世界から怪物を呼び出す犯罪は、法に定義されてない。でも、仮に五条院がやったとしたら、警察は放っておかないわ」
「今みたいにね。そこが謎だ。このオールラウンドゲームクリエイターは、胡散臭くても実績はある人なのだろう? 社長なら社会的地位もある」
「そうね。そんな人が、迂闊に大惨事を起こしかねないことするかしら」
「オールラウンドゲームクリエイターなら、もっと慎重に行動するって思うよなー」
「危機管理にもオールラウンドな才能を発揮しそうよね」
「宣伝にしてもオールラウンドゲームクリエイターらしく、ゲームのイメージを落とさない方法を取るか」
「普通にテレビCMを出してますしね」
「そもそもオールラウンドゲームクリエイターって、魔法まで使えるのか?」
「オールラウンドゲームクリエイターだぜ? 魔法の才能だってあるんだろう」
「いやいや。いくらオールラウンドゲームクリエイターだからって魔法は専門外だよ。僕くらいしか知らないはず」
「でも、フワリーとか陽向さんのこともあるよ?」
「それなんだよなー。万が一ってこともありえる」
「オールラウンドゲームクリエイターとしてのプライドが、魔法の探求にも向いたとしたら」
「この前の魔法でカピバラさんが巨大化した事件はニュースになってるしねー」
「オールラウンドゲームクリエイターとしてのプライドが刺激されて、自分もやってみたくなった」
「ニュースになれば宣伝になるからな」
「オールラウンドゲームクリエイターだから、広告も妥協しないんだろうね」
「オールラウンドゲームクリエイターだからな」
「でも、研究の結果がこれだ。悪い方向に大騒ぎ」
「オールラウンドゲームクリエイターも失敗することあるんだね!」
「あんたたち、そろそろその言葉面白がって使うのやめなさい」
「はーい」
その言葉、そろそろ聞き飽きてきた頃です。
とにかく五条院さんは広告のために魔法を研究して、もちろん危険がない方法を探った上で使おうとしたのですが、失敗した。例えば実験のために魔法陣を描いた所、暴走して大量の怪物が呼び出されてしまった、みたいな推測ができます。
実験だから人目につかない夜にやった結果、怪物騒ぎは起こったけれど大勢の人はゲームの怪物とは気づかなかったと。
もちろん、これで説明できないことも多いです。
「魔法で自分に都合がいい怪物を作れるとは思わない。それには高度な魔法が必要だからね。あの怪物はたぶん、どこかの異世界から迷い込んだものだ」
「でも、それが出現するずっと前から、五条院はゲームの中でその怪物を作っている」
「前後が逆なんだよね。五条院は前から、異世界の怪物について知っていたと推測される……」
「やっぱり、怪物を作ったんじゃないの? そのための魔法陣だ」
「いや違う。ちゃんと調べたわけじゃないけど、あれは転移の魔法陣に見えた。それに、フィアナたちの世界にも怪物は出てきたし、転移の魔法陣が描かれていたんだろう? ふたりはそこからここに転移した」
「はい。わたしも魔法は詳しくないですけど、リゼさんはゲートを通じさせるものと言ってました」
「だったら、やはり転移の魔法陣だ」
「待ってくれ。こっちの世界の五条院が魔法陣を作って、向こうでも魔法陣が作られて、双方の世界に怪物が出てきた。何があった? 向こうの魔法陣は誰が描いたんだ?」
わからないことだらけです。そもそも、五条院が犯人で魔法陣を描いたとも限りませんし。
というか、皆さんの会話の中でもわからない言葉はたくさん出てきます。もっとこの世界や魔法少女について勉強しないといけませんね。
元の世界に帰るために。
「とにかく、監視カメラの解析と五条院からの事情聴取ね。手がかりが見つかって良かったわ。あんたたちは、また怪物が出ないか警戒してて」
「えー。また出るって思ってるんですか?」
「原因がわからない以上、警戒は必要よ?」
「わたし、明日も仕事なんですけど?」
「今夜はゆっくり休みなさい」
「むあー! やだー!」
椅子に体を預けてぐったりする愛奈さん。やっぱりリゼさんに似てますね。




