The Chess 番外編 えんじと豊
「豊のことが好きって言ったらどう思う、かな?」
「え、私、えんじのこと好きだよ?どういうこと?」
「恋人になりたいって意味さね」
豊は少し考えて答えた。
「えんじの思っていることは、今の関係を変えたいってことなの?」
えんじは首を軽く横に振った。
「豊の望まないことはしたくないさね。今の関係がずっと続けばいいと思っている。でも同居の前に豊に好意があることは伝えておかないと、責任を取れてないと思って伝えたさね」
豊はきょとんとしたまま答えた。
「すぐには実感が湧かないなあ。告白だよね?私もえんじと同居したいし、えんじのこと好きだよ。えんじは恋愛の意味だよね?私は困ることは特にないと思うけど、何かある?」
えんじは誠実になるように胸の内を明かした。
「心の中をきちんと伝えるさね。キスしたり、恋人らしいことをしたいという思いを豊に持っているのさね。嫌、かな…?」
「嫌とかは思わないかなぁ。キスかぁ。そう言うのってムードがあってやるんだよね?そういう空気になるのが思い浮かばないや」
豊の想像はどこまでも今のままであることに、えんじは安心し、大切にしたいと思った。えんじにとって初めて自分から恋人になりたいと思った相手のテンポに合わせることは、戸惑いながら学んでいくことだった。豊は確かめるように、明るく尋ねた。
「私はえんじと離れるのは嫌だなぁと思うよ。だから一緒にいたいな。それでもいい、えんじ?」
「サンキューさね、豊」
えんじは胸が温かくなった。