来訪者
「む?巨大な魔力を感じる……」
ここは城下町の一角、今一人の男が転移魔法を使ってやってきた。
「ここがブリンガムか……なかなかに発展しているようだな」
男の目的は視察だった。聖神なるものが現れ帝国を撃退したという話は男の耳にも届いていた。
それに最近流行っているマンーガとラノーベが与える影響を大本である国まで確認しにきたのだ。
「ちょっとそこのお兄さん」
呼ばれて振り返る男。
「何だ?我のことか?」
「そう、そこのかっこいいお兄さん、アイスクリーム食べてかない?」
「あいすくりーむとは何だ?」
「これだよ。冷たくておいしいよ」
男はアイスクリームを初めて見た。それもそのはずだ、そもそもこの世界には存在しなかったものだからだ。
「ふむ、いくらだ」
「5デシルだよ」
「これで足りるか?」
男は小銀貨1枚を差し出した。
「はい5デシルのおつりとアイス」
「甘い……!そして冷たくて口に入れた瞬間溶けるこの食感は……!」
「どうだい。うまいだろ?」
「あぁ、癖になりそうな旨さだ」
「お兄さんこの町は初めてだろ?この街にはもっと色々旨いものがあるよ、あの店とかおすすめだよ」
「おぉ、貴重な情報感謝する」
「何礼を言われるほどのことじゃないさ。それよりまた今度食べに来ておくれよ」
「うむ、帰りにまた来るとしよう」
「この辺りじゃ、確かにこの辺りから巨大な魔力を感じる」
わしは気配を察知した後急いでその気配の主を確認しに町に出た。
「本当にいるのか?もしいるとするならまた上級悪魔か、魔族の類だろうな」
「えぇ、もしそうなら大変だわ。またあの時みたいにこの町が襲われるかもしれないわね」
「この店の中から気配がするのじゃ」
わしが指差したのはそこそこ大きな料理屋だった。
「いらっしゃい、何名様ですか?」
現れたのは年ごろの娘の店員。
「いや、わしらは……」
と、その時男の声が店内に響いた。
「旨い!辛い!なんだこのかれーらいすとかいう食べ物は!食が進むわ!」
「見つけたのじゃ、あいつじゃ!」
「うん?なんだ貴様ら?」
「お主こそ何者じゃ、その強大な魔力はまた悪魔の類か!」
「悪魔か……そんなものと一緒にされるとはな」
「あんた魔族だな」
「いかにも。我こそは魔王ネフェリオス。魔族を統べる者なり」
「魔王……!魔王が何しにきたのじゃ!」
「見てわからぬか?」
と言いつつもカレーを食す魔王。
「視察だ。この国に色々と興味がわいた」
「今代の魔王は平和主義だと聞いた……戦いに来たわけではなさそうだな」
「いかにも。最近流行りのマンーガとラノーベの発祥の国の様子を見に来たのだ」
「そのためにわざわざ魔王自ら?」
「あぁ、何事も自分で確認しなければ分からぬこともある。……それに聖神とやらにも会いに来た」
「聖神じゃと?会ってどうするつもりじゃ?」
「何、どうということはないただ話をしに来ただけだ」
カレーライスを食べ終わった魔王が言った
「店主、このらぁめんとかいうものを一つ」
「あいよ」
「追加注文してんじゃねーのじゃ!」
「……ふむ、先ほどから気になっていたがその神気、そうか貴様が聖神か」
「だったらどうするのじゃ」
「何先ほど言った通り話がしたい」
「こっちには話すことは何もないのじゃ」
「まぁそう言うな。貴様は今のこの世界についてどう思う?」
「ラーメンお待ちぃ」
「……貧富の格差が激しいのぅ。それに帝国による支配も問題じゃ、魔族もいつ攻めてくるかわからんしの」
「お前たち人間は同じ種族同士で争い殺し合い戦争を繰り返す、昔から何も変わらぬな」
「お前たち魔族も人間と戦争をしていた時代があったじゃないか」
とアルクが言う。
「ふむ、我ら魔族は基本的に人間を下に見ているからな」
「アンタはどうなんだ?」
「興味深い存在だと思っている」
「それで人間との争いを禁じているのか」
「あぁ、人間の作り出す文化には価値がある。滅ぼすには惜しい」
魔王が平和主義というのも妙な話じゃ。
「この世界についてどう思うかじゃったな。あやうい均衡に成り立ってる歪な世界じゃ」
「そうか。ではマンーガとラノーベについてはどう思う?」
「漫画とラノベは娯楽じゃ。人は娯楽に興じる余裕があればこそ平和に生きていられるのじゃ」
「そうか」
ラーメンを食べ終わった魔王が席を立つ。
「12デシルだ」
「ふむ」
金を払うと魔王は言った。
「また会うこともあるだろう」
「そうかの」
「ありーしたー」
「店主、旨かった」
魔王が店を出てからわしらは店主に注文を聞かれたのでわしはとっさにカレーライスを注文した。
アルクとセレナはラーメンを注文した。まったくあやつのせいで食べたくなったじゃないか。




