暗殺者
その日の夜事件は起きた。
「アルナ様、貴女のおかげでジュリアス殿下に婚約破棄されずに済みましたわ」
ジョゼフィーヌは言った。
「何、大したことはしておらぬよ。それよりあのフロン・バシャールという男には気を付けた方がいいのぅ」
「はい。私もそう思いますわ。まさかバシャール家が私を陥れようとしていたなんて……」
「確かジョゼフィーヌは命を狙われていると言っておったの。それもあやつの仕業かの?」
「それはわかりません……一体どこの誰が私の命を狙っているのか……」
そのとき影から何者かが飛び出してきた。
「危ないのじゃ!」
わしはジョゼフィーヌを庇った。
腹部から広がる痛み。どうやら刺されたらしい。
「アルナ様!」
「何、こんなのかかすり傷じゃ」
わしはそう言うと神力で傷を治癒した。
「ち……聖女の治癒魔法か……」
「お主、何者じゃ?」
「答える必要はない」
言うが速いかその男は再びジョゼフィーヌ目掛けてナイフを突き出してきた。
わしは結界を張る。
結界に阻まれた男はジョゼフィーヌに傷一つつけることはできなかった。
「貴様何故動ける?即効性の毒の筈……」
何?毒じゃとまさかそんなもの塗ってあるとは。
「何。わしの治癒にかかればそんなものはないも同然じゃ」
あっぶねー!神でよかったぁ!あいも変わらず便利な神力じゃった。
「聖女アルナか……光の女神の生まれ変わりというのもまんざら出鱈目でもないらしい」
光の女神の生まれ変わり?なんじゃそれは初めて聞いたぞ。
しかし、こやつ暗殺者の癖によくしゃべるのぅ。
「おい、そこで何をしている!?」
馬鹿王子一行がやってきた。相変わらず間のいい男じゃ。
「……ち」
男は舌打ちして踵を返す。
「逃がすか!裁きの雷!」
「ぐっ!」
わしの最速の攻撃を受けて男は怯んだ。
「止めじゃ!浄化の光!」
「ぐぉおおおおお!!」
すかさず馬鹿王子どもが男を取り押さえる。
そして男は話し出した。
「我らはセルゲイ・ゼニドール様が暗殺部隊。黒い霧。我らの役目はあのお方にあだなす者を密かに始末すること……」
「セルゲイ・ゼニドール。現役の財務大臣の名が出てくるとはな……」
「また大物が出てきましたね」
馬鹿王子の話によると王位継承権2位であるマリアンヌの派閥筆頭ということだった。
まためんどくさい話になってきたのじゃ……
「その銭ドルとか言う輩。さっさと失脚させるのじゃ」
「しかし、多分証拠は我らがこの男をとらえたことで消されているだろう」
「この男の証言だけでは……厳しいかもしれませんね」
「あのフロン・バシャールとかいう男の時の二の舞になるか」
わしはしばし思案してから言った。
「じゃあ。わしをその銭ドルとか言うやつに会わせるのじゃ。直接浄化を叩き込んでやる」
「そうか!その手があったか!」
「それならば当人の自白という形で決着が着きます!」
ナイスアイディアじゃとわしは胸を張った。
「……しかしアルナよ。それならばフロン・バシャールにも浄化魔法を使えばよかったのでは?」
あ。
こうしてわしは銭ドルとやらと面会をすることになったのじゃった。
ちなみにフロン・バシャールには後で浄化を使った。




