孵化
「よしよし、いい子じゃのぅ。たっぷりとわしの神力を吸って立派なドラゴンになるのじゃぞ?」
わしはドラゴンの卵を撫でまわした。
「昨日からずっとあの調子だ…」
アルクが言った。
「まだかのう。早く孵らぬかのぅ」
「そんなすぐには孵らないだろ」
「わしの神力にかかればドラゴンの卵だって早く孵るじゃろ」
「どういう理屈か解らんが……まぁしばらくかかるだろ」
わしは聖務の時間以外卵に付きっきりだった。
寝るときも同じベッドで寝た。
そうこうしてるうちに1週間が過ぎた。
それは朝の早い時間じゃった。
わしがいつも通りに卵に朝の挨拶をしたときじゃ。
ぴくっと卵が動いた。
わしは直観した。とうとう卵が孵るのだと。
ぴしっと卵にひびが入った。
よく見るとドラゴンの鼻先がのぞいていた。
「がんばるのじゃ……!」
少しずつひびが大きくなる。
「もう少しじゃ……!」
ひびが一気に広がった。卵が割れる。
「クー」
中から出てきたのは白い小さなドラゴンだった。
「ようし、よく頑張ったのぅ!」
わしは小さなドラゴンを抱きかかえ言った。
「お前の名前はそうじゃのぅ……クーじゃ!」
「クー!」
クーは喜んでるいるようじゃった。
「よしよし、わしがお前の親じゃぞぅ!たっぷり可愛がってやるからのぅ!」
「クー!」
なんだなんだ何事だとアルクとセレナそして数人の神官たちがやってきた。
「お、卵が孵ったのか!白いドラゴンとはまたなんとも」
「あらあらまぁまぁ」
「聖龍だ。聖龍の誕生だ!」
がやがやとうるさかった。
「お前ら静かにするのじゃ。クーは生まれたてで疲れておる」
「これは失礼いたしました……」
「クーっていうのがそいつの名前か?」
「クー?」
「なんとも安直な……」
「クー!」
クーは怒っていた。
「これこれ人の名前を馬鹿にするでない」
「悪かった。すまん……まぁ人ではないが」
「クー!クー!」
「悪い悪い。人であろうとなかろうと名前は大事なものだものな」
「クー!」
「しかし、ドラゴンというのは生まれたてでも人語がわかるものなのな……恐れ入った」
「クー」
クーはどこか偉ぶっていた。
「しかし、この反応どうにも親に似ているというかなんというか……」
「そうじゃ、クーはわしの子じゃ。子が親に似るのは当然のことじゃ」
「まぁ、うんそうだな……」
「あらあら。もうすっかり母親ね」
こうして後にエムーデンの守護龍と語られる聖龍クーが誕生したのである。




