第一話〜目覚め〜
僕はたこひで。
食物界でタコスとして生まれて育った。
今日の朝、僕は息を引き取った。
数週間前から入院をしていたが、病気は治らず、死に至った。
これからは自分の子どもたちのことを空から見守っていよう、そう思っていたのに。
目を覚ますと、そこは病室だった。
一瞬時が戻ったのかと思ったが、記憶の中にある病室と比べて家具の配置、壁の色などが微妙に違っていた。
その時僕ははあることに気がついた。
自分の見た目がタコスではなく、人間になっていたのだ。
「えっ。」
僕は驚きが隠せなかった。
困惑していると病室の扉が開き、女性が入ってくる。
女性は僕を見ると驚いて、持っていた鞄を落としてしまう。
「ブラボー…?」
女性は僕を見て言う。
どうやらこの少年は『ブラボー』というらしい。
女性はこの少年の知り合いなのだろう。
女性は僕の直ぐ側まで来ると
「ブラボー、元気になったの?」
と聞いてくる。
僕はとりあえず、
「え、うん。」
と、返事をする。
僕の言葉を聞くなり、女性は目に大粒の涙をうかべる。
返事を間違えたかな、と不安になっていると女性は
「よかった…。元気になって…。」
と、震えた声で言った。
泣いているからか声がとても震えている。
微妙に聞き取りづらい。
なんだかわからないが、この少年はなにか病気にかかっていたのではないかと考える。
その後僕はいろいろな検査を受けることになった。
結果、病気は完全に治っていると判断され、一週間後には退院しても良いだろうとなった。
退院したら、小学校に通うらしい。
僕は自分の子どもたちと再開したいと考えたが、どうすればいいのかがわからない。
まずは人間界で情報を集めたほうがよさそうだ。
しかし、なかなか情報が集まらないかもしれない。
そうなると長い間人間界で過ごすことになる。
人間界で過ごしている間も毎日を楽しく過ごしたい、そう考えた僕は、まずは友だちを作ることから始めることにした。
〜キャラクター紹介〜【たこひで(ブラボー)編】
たこひでは六人の子どもがいて、その子たちはまだ小学生、中学生。
そのため『子どもたちの成長を見届けたかった。』という気持ちから、人間として生き返ったと考えられる。
食物界にいた頃はタコスの体に顔があり、いつもハチマキをつけていたぞ!
そんなお父さんだったからか、子供たちもハチマキをつけるようになったらしい。