魔法の授業〜星眼発動〜
「まずは体内にある魔力を動かしてみて下さい。体内の何処かに、魔力が一箇所に集中しているところがありますよね?」
「はい」
前世で言う丹田のあたりに、魔力が集まっているのが分かる。
「魔力が動く様子をイメージしながら、そこから魔力を持ってくる感じで、動けと念じてみて下さい」
丹田のところにある魔力が上に移動する様子を想像しながら、動けと念じてみる。
……動け……動け……動け!
魔力の一部が体の上の方に移動した。
「動きました!」
「よくできましたね。そのまま、目まで魔力を動かしてみて下さい」
ゆっくりと魔力を顔まで持っていく。そして、目に魔力を一箇所に集めた。
「……できました」
「では、目に魔力を込めて下さい。目の内側に魔力を染み込ませるようなイメージで。最初は目を閉じた方が良いでしょう」
瞼を閉じ、目に魔力を染み込ませていく。
少しずつ目に魔力が宿っているのが分かるが、なかなか上手く魔力が染み込んでいかない。
「……どうすれば魔力が染み込みやすくなりますか?」
「魔力の性質をより染み込みやすいものへと変質させるのです。たとえば、魔力が水のような液体になるところをイメージしてみて下さい」
「わかりました。やってみます」
今まで漠然とした形をとっていた魔力が、液体となって目に染み込んでいくところを想像してみる。
すると、とろりとした性質になって、あっという間に目の全体に染み込んでいった。
「目に魔力を込めました」
「では、ゆっくりと目を開けて下さい。そこには殿下が今まで見てきた景色とは少し違った景色が見えているはずです」
ゆっくりと瞼を開ける。
なんだか視界がぼやけている。
視力が悪くなったとかそういう感覚ではなく、物の輪郭が曖昧だ。しっかりと見えているのだが、瞬きをした瞬間、視界から消えていそうな不安定さがある。
ふと視界をずらすと、オルクス先生が光っていた。
なんの比喩でもなく、光っていた。
銀や青、緑の光が全身から溢れていて、ゆらゆらと動いている。
「オルクス先生が光っています!」
「おめでとうございます。無事、星眼を発動できたようですね」
これが父が見た景色か……!
「ありがとうございます!オルクス先生のおかげです」
「いえいえ、殿下が頑張ったからこそです」
解説は分かりやすいし、私が集中している時は邪魔をせずにそっと見守ってくれる。
ちょっとスパルタだが、オルクス先生、いい先生だ。
「オルクス先生、ちょっと手に魔力を集めてみてくれませんか?」
「いいですよ」
「おお……!」
手の光が強くなった!
「ありがとうございます!」
私は手の光と何もない空間を交互に見たあと、空を睨んだ。
んー……。
なんかまだピントが合ってない気がするんだよなぁ。
あとちょっとで何かが見えそうというか……。
私はもう一度瞼を閉じると、今よりも魔力を込めてから開いた。
…………。
凄い、としか言いようがない。
世界が、七色に輝いていた。
この景色の美しさを表す言葉を、私は持たない。
銀を基調として、他の6色の光がきらきらと光り輝いている。
「……先生、星眼で魔素まで見える王族は今までいなかったんですよね?」
「……え、ええ」
「私、魔素まで見えているようです……」
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