魔法の授業〜魔力視編1〜
「では、次は魔力視をしてみましょうか。普通の魔法使いにとっての魔力視とは、魔力の気配を肌で感じとって、その量や場所を特定することですが、星眼を持っている殿下たち王族の方々の魔力視は全く別の意味を成します。星眼所持者の魔力視は、文字通り目で視るのですから」
星眼、チートだ。
普通の魔術師が何年もかけて経験を積んで、なんとなくわかるようになる相手の魔力量や得意属性を、ひと目視ただけで正確に把握できるんだから。
「魔力の量や属性が視えるという話ですが、どのように視えるものなんですか?」
「こればかりは王族の方々しか出来ないものなので、私には分かりかねます。ですので、陛下から聞いたお話になりますが、魔力に属性の色が付いて視えるそうです。この世には7つの魔力属性があります。光、闇、火、水、土、風、無の7つです」
「へえ、そうなんですね」
魔法なら定番の火、水、土、風の四大元素があるのはいいとして、光、闇に無属性まであるのか。
「それぞれ、光属性は金、闇属性は紫、火属性は赤、水属性は青、土属性は琥珀、風属性は緑、無属性は銀に見えるそうです。人は7色の光を纏っていて、銀色をベースに、他の6色の光が混じっているとか。量の多い色がその人の得意属性で、以前会った火属性特化の魔法使いなど、光の半分が赤色だったそうですよ。普通の人間はほとんどが銀色ですが、優れた魔術師ほど銀色が占める割合が少ないそうです。光の強さが魔力の大きさで、光が強ければ強いほど魔力量が多いということになります」
「じゃあ先生は光が強くて銀色が少ないんですね」
「陛下が仰るには、私は銀色が2割、青と緑がそれぞれ3割、他の属性が合わせて2割程で、光の強さは魔術師の中では中の上だそうですよ」
先生は水属性と風属性が得意なのか。それにしても少し意外だ。
「てっきり先生のことだから魔力量も多いのかと思っていました」
「魔術師の中では多い方ですが、陛下やその周りの方々と比べると少ないですね。ですが、魔法は使い方次第ですから。少ない魔力でも色々とやりようはあるのですよ?」
おお、不敵な笑み。頼もしい先生だ。
「星眼は、個人によって視える精度が違います。過去には大魔法を発動する直前の魔素の集中まで視える方もいらっしゃったそうですよ。陛下も魔法を発動する時の魔力の昂りはお見えになるそうですが」
「魔素の集中?」
「はい。魔素とは、魔力の素になるものです。大気中を漂っていて、私たちはこの魔素を体内に取り込んで魔力を作ります。魔法を発動する際、体内にある魔力を一箇所に集め、エネルギーを貯めてから一気に放出します。これが魔力の昂りです。そして、大きな魔法を発動する際、その魔力の昂りに周囲の魔素が反応して集まってくるのです。これが魔力の集中ですね」
へぇ。魔法を使う時、そんなことが起こっているのか。
「なるほど」
「星眼持ちの方でも魔素が見えるというという方は聞いたことがないと陛下が仰っていました。大魔法の発動で、膨大な量の魔素が集中していたとはいえ、とても特異な方だったのでしょう」
「そうだとすると、魔法発動時の魔力の昂りまで見える父上は、かなりよく見える方ということですか?」
「そうですね、陛下は歴代の王族の中でも高い精度の星眼をお持ちでいらっしゃいます」
父は王族にしては珍しく、剣の腕前の方が有名だから知らなかった。
「では、ユーリエル殿下もさっそく星眼を発動させてみましょうか」
「え?もう使うの!?というか、今の私に使えるのか?」
「はい。簡単ですよ。自分の魔力を目に集めるだけです。魔力で視力を強化するイメージで使ってください」
そんなに簡単なの!?
チートじみた効果の魔眼だから、もっとこうなんか大変な試練とかを乗り越えて使えるようになるのかと思っていたんだが。