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家庭教師が来る!

この世界に男として生を受けて早6年。私は病気になることもなく、すくすくと成長していた。

一人称は「私」のままだが、今では心も体も完全に男であることを受け入れている。最初は戸惑ったが、今は完全に性別は男だと思う。

生まれてからしばらくの間のことは……聞かないでおいてくれるとありがたい。

赤ちゃんってすごく大変なのだ。

喋れないし体は思うように動かせないし、本当に不便だった。主にトイレとかトイレとかトイレとか。尊厳を踏みにじられたとだけ言っておこう。

一刻も早くこの状況から抜け出したいと感じた私は、それはもう必死で筋トレと喋る練習をした。

その結果、生後1年にして一人で歩き、拙いながらも言葉を話す赤ちゃんが誕生したのである。

流石にこれには両親もびっくりしていた。


さて、歩行と会話をマスターした私が次にしたことは、文章の読み書きだ。メイドに頼んで何度も何度も絵本を読み聞かせてもらい、文字を教えてもらった。

あまりに何度も何度も頼むので、メイドたちは涙目になっていた。

メイドに「もう勘弁してくださいぃ」と言われながらも文字を無事習得し、何度も紙に書いて書けるようにもなった。


ここで気づいたことがある。

「今世の私、ハイスペックすぎじゃね?」と。

女神が超人になると言っていたが、そのせいだろうか。基本的に一度覚えたものは忘れないし、歩けるようになるのも早かった。

そしてハイスペックな私はその後も図書館から大量の本を持ってきてもらって片っ端から読み漁り、3歳になる頃には読み書きは完璧にできるようになっていた。

ちなみに父に家庭教師を頼んだのだが、まだ早いと許してもらえなかった。


さて、そろそろ気になっているであろう私の身分を明かそう。

ヴェルトラウム王国第二王子だ!

そう、あの女神、生家に王家を選びやがったのだ!これもう裕福ってレベルじゃないだろ。王家とか絶対面倒くさいに決まってる!

まあ約束は守ったようで、家庭環境はこの上なく良好だ。王家なんてもっとギスギスしてそうなものだが、父は母を溺愛していて、かなりの親バカである。もう目に入れても痛くない可愛がりっぷりで、初めはちょっと引いた。……いや、訂正しよう。今でもかなり引いている。

王位継承権第一位で、このまま行けば王になるであろう上の兄も父の親バカに傲慢になることもなく、頭も良い。才能もあるし、かなりの努力家だ。性格も能力も申し分ないし、王にふさわしい人物だろう。

兄との関係も良好で、私のことをとても可愛がってくれている。王位継承権争いをする気なんて更々ないので、小さい頃から仲良くしていたら、いつの間にかブラコンに片足どころか両足しっかり突っ込んでいて、日に日に私に対する過保護度が増している気がする。


そんなこんなで長い説明になったが、おおむね私について理解してもらえただろうか。

ちょっとやりすぎた気がしなくもないが、まあこれからはもう少し自重するとしよう。

家庭教師も来ることだし。

そう。6歳になった今日、父上からやっと家庭教師をつけるお許しが出たのだ。ついでに城の図書館にも行けるようになる。

王族の子は命を狙われやすい上に、誰かに危ない思想でも植え付けられたらたまったものではないため、6歳になるまでは基本城の中を自由に出歩いてはいけない。私がわざわざ侍女に図書館の本を持ってきてもらっていたのもそのためだ。

そして6歳になると家庭教師をつけ、王族としての教育がスタートし、ある程度は自由に城の中を歩けるようになる。もちろん護衛付きで、だが。

そして私は今、自室にて家庭教師が来るのを今か今かと待っているところだ。

元々前世で教養があったため、今までは独学でもなんとかなっていたが、最近は行き詰まっていた。女神の加護で理解できるのは言葉までで、文字は含まれない。そのため、今ではほとんど理解できるようになったが、専門的な用語などは、わからない単語がないわけではない。質問しようにもほとんどが平民か下級貴族の侍女に、最近専門的になってきた本の内容がわかるわけもなく、聞く人がいないのである。だから家庭教師の存在は僥倖だった。


待つこと数十分。扉がノックされ、ようやく家庭教師がやってきた。

「失礼いたします。本日から家庭教師を務めます、カルム・オルクスと申します。よろしくお願い致します」

入ってきた家庭教師は、藍色の髪に深緑の瞳をした眼鏡の男性だった。30代くらいの年齢で、落ち着いた雰囲気をしている。長い髪を後ろでゆるく縛っていた。


「よろしくお願いします、オルクス先生。ユーリエル・ヴェルトラウムと申します。」

マナーの本を読んで知った挨拶の仕方を、2年前から王族としての教育がスタートしている兄様の挨拶を見様見真似で真似したものを披露する。

独学だから姿勢は汚いかもしれないが、間違ってはいないはずだ。

「こ、これはご丁寧に。ユーリエル殿下はとてもご聡明なようですね」

オルクス先生はかなり驚いているようだ。

まあ、それもそうか。私はまだ6歳。ろくな教育もまだ受けていないし、普通の子供はこの歳でマナーの本なんて読まない。

色々な思惑が飛び交う貴族社会であんまり悪目立ちすると碌なことにならないが、今回ばかりは仕方ない。

え?さっき自分で自重するって言ったばかりじゃないかって?

これには切実な理由があるんだよ!


なぜこんなことをしたかと言うと、それは私に合った授業をしてもらうためだ。

普通ならまず文字の読み書きと簡単な計算から始めるところだろう。しかし精神年齢約35歳(前世+今世)の私に1たす1は2とかの小学校一年生レベルの授業を受けろと言うのはなんの罰ゲームだろうか。

そしてもう一つ。とても重要なことがある。

そう、今日から魔法の使用が解禁されるのだ!

6歳までは身体への負担から魔法の勉強は禁止されている。使い方すら教えてもらえない。

6歳になるとある程度は身体が丈夫になるので、健康であれば魔法の使用が許可されるのだ。もちろん許可されるとはいえまだ6歳だから、体に負担をかけない程度に少しだけだが。

しかし、魔法の仕組みや魔法を使う上で重要になるイメージはある程度の理解力と知識が必要になってくるので、普通は魔力の使い方を少しずつ習っていくだけで、ちゃんとした魔法を習うのはもっと後になる。

このファンタジー世界で、前世には無かった魔法というものを一刻も早く私は使ってみたいのだ。体に良くないというので6歳まで必死に我慢したのに、まだ理解できないだろうからお預けというのは絶対にごめんだ。

           

と、いうわけで。

「早速ですが、オルクス先生。テストをしていただけませんか?」

私はある程度の教養があることを徹底的にオルクス先生に証明することにした。それはもう間違っても小学校一年生レベルから教える気など絶対に起きないくらいに。

「テ、テスト…ですか?」

「はい。私は既に一般的な文章の読み書きや四則計算は習得しています。読み書き計算には劣りますが、大まかなこの国の地理や身分制度、マナーの基礎なども知っております。ですからそれを確かめる為にテストをしていただけませんか? そしてそれが証明された暁には、授業の内容を少し高度なものにしてほしいのです」

「そ、そういうことでしたら分かりました。では、今日の授業はテストをすることにしましょう」


そして、私が言った通り、文章の読み書きと四則計算、地理、マナーに関するテストが行われた。


改稿履歴

2024/8/22 侍女をメイドに変更

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