神殿へ
しばらく更新を停滞していてすみませんでした。また再開します。
あの魔法の授業の後、オルクス先生はよりいっそう熱心に勉強や魔法を教えてくれるようになった。
私のためを思って教えてくれるのはいいが、前世の記憶を持っている私でもキツいんだが……。
オルクス先生って私ができるギリギリのラインを見極めるのが上手いんだよな。
あれから時々、あの息を呑むほど美しい景色をまた見たくて、こっそり星眼を発動させている。
ただ、あれをやると目の色も七色に光っているらしく、人の目が無いところでしか発動できないが。人目がある所で使うときは、魔力の色が視えるだけの普通の星眼に留めている。
私の星眼が魔素の色まで視えることは、要らぬ争いの種となるため内密にすることにした。
知っているのは私と父である国王陛下、オルクス先生だけだ。
私が成人したら公表することも検討するらしいが、少なくとも未成年のうちは人前で星眼を魔素まで視える状態で発動しないように言われた。
魔力を視るだけなら制限はないらしい。
「殿下、お支度は済みましたか?」
今日は神殿に向かう日だ。
この世界では、6歳から8歳くらいまでの間に神殿へ行き、ステータス魔法を授かる。
そこでステータス魔法を授かることにより、自分のスキルが分かるようになるのだ。
だから普通、子供は神殿へ行かない限り自分のステータスを見ることはできない。
できない……はず、なんだが……。
何故かできるんだよなぁ……。
多分あの女神が手を回してくれたんだろう。だから私が神殿に行く必要はないのだが、せっかくの外出の機会だし、このことは黙っておくことにした。
ついこの間まで城の中すら自由に歩き回れなかったのだ。今日を逃せば次に城の外に出られるのはいつになるか分からない。
それに、教会に行けば話ができるって女神が言ってたし。
王家に生まれたことはまだいいとして、性別が男なのには文句を言わないと気が済まない!
「お待たせしました。オルクス先生」
神殿へは、保護者としてオルクス先生が付いてきてくれることになった。
当然だが、6歳という身を守る術を持たない王族の外出なので、もれなく大勢の護衛も付いてくる。
父と母は、当たり前だが一緒に行けない。国王と王妃が付いてきたら大事になっちゃうもんなぁ。
だが、その父は一緒に行く気満々だった。
絶対に付いていくと駄々を捏ね、オルクス先生をはじめ周囲の人間を散々困らせて、最後は母が冷ややかな笑顔で黙らせた。
うん。ちゃんと尻に敷かれているようでなにより。
普段はキリッとしてかっこいいのに、家族のことになると暴走して残念な方向に行くのは直らないのだろうか。
オルクス先生の話によると、兄の時も同じ光景が繰り広げられたらしい。
じゃあ行けないの分かってただろうに、何故まだ同じことをした……。
「よくお似合いです、ユーリエル殿下」
「ありがとうございます」
「随分と落ち着いた格好にしたのですね」
思わず苦笑が漏れた。
「あはは……。華美な格好はあまり好まないので」
初の外出ということで、私は侍女にこれでもかというほど着飾られそうになった。
まだ子供だからなのか、ただでさえ普段からやたら袖口や首元がフリフリしたシャツを着せられそうになるのだ。
一度着てみたら分かると思うけど、あれはとても生活しづらい。特に袖口のフリルなんかは、物を引っかけそうで気が散る。
そういうわけで、侍女たちと格闘した結果、私はフリフリしていないシャツを着る権利を得た!
そのため、普段はフリフリしていない普通のシャツに刺繍の入ったベスト、半ズボンという王子にしてはかなりシンプルな服装なんだけど……。
外出となるとこの格好というわけにもいかない。
再び侍女たちとの格闘の末、私の服装は王子にしてはシンプルだが、一目で品が良いと分かる落ち着いた物になった。
シンプルでも地味だとは捉えられない格好に仕上げた、侍女たちの腕前に感服する。
普通のシャツに、真ん中に綺麗な青いブローチの付いたクロスタイ。その上に刺繍が緻密に入った黒のジャケットを着ている。
下は、黒の半ズボンに、黒のハイソックスだ。
王家の紋章がでかでかと刺繍に入った青地のマントは重いし邪魔なので、短めの丈にしてもらっている。
あ、ちなみに、マントを着ないという選択肢はハナから用意されてませんでした。
「では、行きましょうか。神殿へ」
「はい」
城の外はどうなっているのだろうか。王城から外の街並みを眺めることはあっても、実際に行くことは出来なかった。
兄と、忙しいだろうにわざわざ時間を作ってくれた父と母に見送られ、私は初めての外出に胸を踊らせながら神殿へ向かった。




