3 操縦士の選別
人型兵器。
いわゆるロボット。
兵器であるそれは、他の同型機と同じように宇宙の各方面へと散らばっていった。
文明を作った人類の子孫に機器を伝えるために。
制御コンピューターをどうにかかつての文明圏に封じ込めていたのだが。
その戦線が崩壊。
制御コンピューターは脱出した人類の子孫を目指そうとしていた。
その手が伸びてくる前に、各地に状況を伝えるためだ。
制御コンピューターの軍勢がやってくる。
この脅威に備えるように。
対抗する為に、それらは文明が貯えた科学文明の知識を携えていた。
出向いた先の人類の助けになるようにと。
そのつもりでやってきた人型兵器だが。
地球の状態に唖然とした。
一応は文明再建されていたのだが。
あまりにも低水準だったからだ。
その理由は分からなかったが、何らかの事故があったのだろうと推測した。
接続できる記録や一人一人の意識、さらには遺伝子に刻まれてる情報も参照にしながら。
調査にかけてる時間ももったいないので、それらもほどほどに切り上げていく。
やらねばならないのは現状の確認ではない。
人類に危機を伝え、今後に備える事だ。
人型兵器は己の為すべき事をしていく。
その為の第一歩として、人型兵器は自分の操縦士を探した。
いなくても動くことは出来る。
だが、操縦士がいれば操縦系統を奪われる危険性が減る。
自動で動く自立型のコンピューターはハッキングされる危険性がある。
それを防ぐ為にも、ハッキングされにくい人間がいると便利だ。
だから、ある意味非効率とも言える操縦士にも必要性があった。
その操縦士だが、これは誰でも良いというわけにはいかない。
操縦士としての登録には遺伝子が用いられてる。
なので、出来ればかつての操縦士の子孫がよい。
操縦士登録の手間が省ける。
なので、人型兵器は操縦士の血縁者のいる方向に飛んできた。
ただ、かつての記録や記憶の薄い地球だ。
子孫が無事に生き残ってるか分からない。
接触できた記録からも、この星では数え切れない戦乱があった事が覗える。
その中で多くの遺伝子が絶滅してる事もありえた。
だが、奇跡的に子孫は生きながらえていた。
男子が受け継いでいくY染色体。
それを今も伝えてる者がいた。
通信機を使って、早速その者の意識に接続していく。
それは超能力のテレパシーのようなものだった。
相手の脳に直接語りかける。
そんな事も人型兵器には出来る。
この機能を使って、操縦士の子孫に話しかけていく。
「え?」
人型兵器の声を受信した者は驚いた。
何せ、白昼にいきなり見知らぬ声が聞こえてきたのだ。
とうとう自分は狂ったのかと思った。
「そんな事はない」
人型兵器は子孫の不安を否定していく。
「とりあえず、必要な情報を頭に送る。
それを読み取ってから話をしよう」
そう言うと人型兵器はここにいたる経緯を子孫の頭に送り込んだ。
これによって子孫は何が起こってるのかを知る事が出来た。
「なるほど……」
送られてきた記録を読み取って、子孫も理解した。
「それでわざわざ来たのか」
「そういう事だ」
テレパシーで直接会話をしながらロボットは返事をする。
「それで、出来れば操縦士になってもらいたい。
その方が助かる」
「いいよ」
子孫は即答する。
「なるよ、操縦士に」
「助かる。
では、早速」
人型兵器は、承諾してくれた子孫を操縦席に瞬間移動・転位させた。
子孫にはすぐに操縦方法を頭に送りこんでいった。
人型兵器はどうすれば動くか、どのように動かせるか。
どんな事が出来るのか。
これらがすぐに伝わっていく。
「なるほどね」
子孫も何をどうすれば良いのかを理解した。
「それじゃ、試しに少し動かしてみるよ」
そう言って人型兵器を動かしていく。
練習が始まっていく。
それをこなしていく事で、頭の中の情報が体にしみこんだ経験になっていく。
子孫は次第に操縦士に成長していった。
時間にすれば数時間程度だ。
だが基本的な動き、型ともいえる動作をこなす事で操縦のコツを掴んでいく。
そうしてるうちに、動かすだけではなく戦う段階にまで操縦の腕を上げていった。
操縦の仕方を知り、戦闘機動が頭に入ってるからだろう。
あとは体になじませるだけだ。
それでも、短時間で基本的な事が出来るというのは凄まじい。
実戦に出るにはそれでも不安がつきまとう。
戦場では何が起こるか分からない。
想定外の事も起こる。
その時にどう対処するかは、本人の素質による所が大きい。
勘所というものだ。
こればかりは学習でどうにかなるわけでもない。
それでも、最低限の動きが出来れば生存率は上がる。
操縦士になったばかりの子孫はそれがしっかりとこなせている。
これなら戦場で死ぬ可能性も低い。
そう判断して人型兵器は安堵した。