1 人類選別
「やれ」
その一言で攻撃が開始された。
地球の衛星軌道からの攻撃。
そこに浮く巨大な人型兵器。
いわゆるロボットから、数多くの光が放たれる。
光線────ビームやレーザーといったものだ。
それらが地上を目指していった。
光線は途中で幾重にも分かれる。
二つに分かれて更に二つに分かれて、その先だ更に……と。
末端においては無数とも言えるほどに拡散していく。
更にそれらは、進む方向を自ら変更していく。
光にあるまじき事に、曲がっていくのだ。
そうして進んだ先にいるのは人間。
その場にいた地球人だ。
それを光線が包んでいく。
人の体全体を覆う程の太さを持つ光線は、人間を瞬間的に蒸発させていった。
それがあちこちで起こる。
枝分かれした光線の数は多い。
無数と言って良いほどである。
しかも、これが毎秒毎秒発射される。
その都度発射された光線は、別の目標へと向かっていく。
光線の束は広い範囲を覆っていく。
一瞬にして数千の命が蒸発する。
それが毎秒続くのだ。
数分もすれば中規模の国を覆いつくす。
国土面積が広い国でも、全土を覆われるまで三十分もかからない。
その間に多くの人類が地球上から消滅した。
地下などにいてもこれは同じだ。
どういう原理なのか、光線は地面すら貫通する。
地下鉄などにいた者達も、これらにとらえられて死んでいく。
核爆発などに備えた防空壕・避難壕・シェルターの中でもだ。
これらの持つ分厚い防護壁も、光線はやすやすと貫通する。
中にいた者達は例外なく消滅していった。
空の上を進む巨大な人型兵器は、高速で飛びながら破壊をふりまいていく。
備えられた探知機は地面すら貫通していく。
どこに誰がいるのかなどすぐに分かる。
更に、その人間がどういう性質なのかも瞬時に見極めていく。
脳を含めた人体の構造をレントゲンのように透視して解析し。
更に脳細胞などに刻まれた記憶なども読み取っていく。
脳の構造などから普段の思考パターンなどまで。
遺伝子すらも調査していく。
それらを複合的に見て選別していく。
攻撃対象にするかどうかを。
そうして選別して、攻撃対象を選んでいく。
条件に合った者は光線で消滅させられていく。
そうでない者は見逃され、難を逃れる。
この日、この時、一人一人の人類は情け容赦の無い選別を受けていった。
どこにも逃げられない状況で、誰もが等しく合否を決定されていった。
それは最初の光線が発せられてから19時間で終了した。
人類はその数を5パーセントまで減らした。
生き残りはおよそ2億数千万人。
これだけが人類の生き残りとなった。
難を逃れた者達は、空を見上げて呟く。
「恐怖の大王……」