一心、転生〜ユウ〜
プロローグが終わり、1章の始まりです。
よろしくお願いします。
「オラ!連れて行け!」
そう言って、投げ飛ばされる感覚と同時に、
泥の中に突っ込まれた衝撃で意識が戻った。
「ユウ!ああ、なんてこんなひどいこと…」
どうやら、私の今世の名前はユウらしい。
自分のために涙を流しているのは、母親だろうか。
「待っててね。すぐに、手当てをしに、小屋へ連れて行ってあげる。」
それにしても、ひどい怪我だ。
自分の体なのに、手足の感覚がほぼ無い。
酷く傷めつけられたらしい。
「奥様!さあ、こっちに。
坊ちゃんは、私が連れて行きます!」
年配の老人が駆け寄ってきて、俺を抱き上げると、
そのまま、小屋へ連れて行かれた。
「うぅ…。ユウ…」
母も後からついて来るが、かなり衰弱している様だ。
「さあ、こちらに!
坊ちゃん、頑張るんだ!」
小屋へ連れて行かれ、泥を洗い流すと、
傷の手当てを、その老人はしてくれた。
「酷いことを…
子供にここまでの仕打ちをするとは。」
母は、傍で涙を流しながら手を握り締めてくれている。
「神様、ユウをお救い下さい!
よろしくお願いします!」
母は、神様にお祈りを捧げる。
そうか、今までの人格は、ここで死んでしまったのか。
だから、私の人格が目覚めたのだな。
大丈夫だと言いたいが、言葉も満足に発声出来なさそうだ。
ここで、前世の呼吸法を使おう。
身体の自然治癒力を高め、いち早く回復する技だ。
前世の修業時代に、最初に習った技で有る。
これが出来なければ、間違いなく修業の時に死んでいただろう。
前世でも、よくこうして死ぬ寸前まで痛みつけられた後、
自分の呼吸法で回復していた。
「大丈夫ですよ。
奥様、この爺が付いております!」
爺さんは、ドンと胸を張るが、
母と思う人は、不安な様子を隠しきれない。
「神様…あぁ、神様…」
爺さんは、声を荒げた。
「あのクソガキめ!
立場を利用して、こんなひどいことを…
奥様、坊ちゃんは強い子です!
信じましょう!」
どうやら、この爺さんは味方の様だ。
神は、農奴で生まれ変わりと言っていたが、どういうことだろう。
爺さんは、口ぶりからして母の使用人の様な感じがする。
自分がどういう立場か、気になって仕方ないが、
今はこの傷を癒す事に専念しよう。
私は、自然治癒力を高める呼吸法に、集中する事にした。