表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

ぼくとホモにいさん

作者: しいたけ


 女なんて良いもんじゃないぞ



 兄さんが口癖の様に言っていた言葉だ。


 母親は『近付いてはダメ』と口うるさく言っていたが、兄さんの部屋には漫画やゲームが沢山置いてあり、子どもからしたら天国の様な場所だった。


 隣の家なのを良いことに、俺はベランダからこっそりと兄さんの部屋へと入り込み、よく漫画を読んでいた。


「お兄さん、仕事は何してるの?」


「……この前クビになった」


 子どもながらにその時は『クビ』の意味が解らなかったが、バイト先の女の子に酷くフラれて女の子が辞める話になり、その子は店の看板娘だから兄さんが辞めさせられたと言うわけだ。



「女なんて要らねぇよ……」


 その時の兄さんは椅子に体育座りをしながら拗ねた子どもの様に丸くなっていた。けど次の日には別なバイトを見つけたらしく、暫くはウキウキとしていた。きっと別な人を好きになったんだろう。子どもの俺は深く気にせず漫画に没頭していた。


「またフラれた……」


 兄さんは女の子にフラれると、ビールを飲みながらスルメを食べてくだを巻くのがお決まりだ。俺もスルメを貰って食べながら漫画を読んでいた。漫画がイカ臭くなるから箸で食べてたけど……。


「優子ちゃんが好きだから同じバイト先にして趣味や家まで調べて、ギターが好きだって言うから中古で買ったのに……!!」


 兄さんの部屋に飾られているギターはいつでも綺麗だったが、弾いているところを聞いたことは一度も無かった。



「決めた! 俺……ホモになる」


 何を考えているのか分からないのが兄さんの難点だったが、行動力の高さは兄さんの長所でもあった。



 次の日、珍しく兄さんの部屋はカーテンで中が見えず、俺はいつものようにベランダから兄さんの部屋の窓をノックした。


「お兄さん……?」


 窓が開くのには暫しの時を有したのを今でもハッキリと覚えている。それ程にその時の兄さんは脅えた顔をしていたのだ。


「ど、どうしたの!?」


「フラれたんだ……しかも男に」


「どゆこと!?」


 昨日の続きを手に取り、俺はお気に入りのビーズクッションへと腰掛ける。


「youはFuckするに値しない……ってさ。ハハハ……」


「…………」


 兄さんは寂しい顔でビールを飲んでいた。


「やっぱり、お兄さんには女の人の方が良いんじゃ無いかな?」


「そ、そうかな……そうだよな!」



 次の日、新しいバイト先でフラれた兄さんは、そのまま姿を消した…………







「あの時は焦った焦った……」


「懐かしい話……」


「それじゃあ今ではワタシ達のお姉さまなんだもの」


「や~だぁ!可愛い妹達に囲まれて、し あ わ せ~~!!」


 確かに兄さんの言葉通り、女は要らない。何故なら俺達が女になったからだ…………。

読んで頂きましてありがとうございました!!

(*´д`*)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 途中からオチまで、くっそ笑いました!ww >何を考えているのか分からないのが兄さんの難点だったが、行動力の高さは兄さんの長所でもあった。 人物説明でこれだけ笑えるとは……さすがです!!…
[一言] オチが素敵ww 優しい世界(そうか?)。
[良い点] 人間自給自足でもやって行けるもんだなあと勇気をもらいましたっ!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ