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「ニィーティスト」  作者: ニィーティス亭 夢★職
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第三章 躍動篇 4-4 まーや帝国民NO1ミィーティング スペシャルゲストあり

 翌日。


 啓一くんは「野豚さんのH(ハウス)」でのバイトがあるので、いつもの啓一くんカジュアル、アニメ柄シャツに短パン。いつもはサンダル履きですが、今日は少しは運動になるだろう。スニーカーを履いて、11時に自転車ではなく徒歩で家を出ました。


「あなた。啓一が出かけましたよ」


「なんだってー!!」


 身体中に湿布薬を貼った軟膏臭い修二さんは。素っ頓狂な声を上げると布団を跳ね上げ、がばと起き上がると。


「イタタタ!」


 すぐに片膝をつきましたが、「製造者」の俺が止めずに、誰が止める! 本人は気づいていない、悪天然、子供頭、勉強バカの三冠王の名に賭けて、それこそ老骨に鞭うち。修二さんは着替えをし、慌てて啓一くんを追いかけ、家を出ました。


 幸い標的にはすぐに追いつきました。


 昨夜、久々に美代子さん直々の電話を貰い。お兄さんがすっかり「覚悟を決め」、土曜日に「大それたこと」を決行するらしい。お前には迷惑かけるかもしれないが、これも運命、許してくれ。弟の信二にだけ「犯行予告」をした。私たちは「出禁」なので、「予備軍」から「ガチ勢」に進化変貌しようとしている社会悪、「ニートひきこもり」を止めることが出来ない。妙に大げさな涙声で懇願され。



「分かりました。不肖内海修二、こう見えて「ニッポンの侍」のはしくれです。「製造者」の名において、きっちり責任を取ります!」


「お義父さんだけが頼みです! 「確実に」お願いします!!」


 やったぜ! みたいな。美代子さんの不気味に弾む声に、今俺やるっきゃない。修二さんは「決意」こそしましたが・・


「おい啓一、平日の午前中からどこへ行くんだ! 今すぐ子供部屋に戻りなさい! 30分以内に戻ったら「自宅警備費」として、お父さんが1万円進呈しよう!」


 啓一、これはお前への「最後通告」だ。


 無理に外へ出て、一般人に「大それたこと」をされるより。鍵のかかった子供部屋で、己の怠け癖に嫌気がさして奇声をあげたり、どすどすと地団駄を踏んでくれてた方がまだましだ。


 修二さんは、すぐに啓一くんの肩をつかんで、お前の本分、「本業(ニート)」に戻れ。身分不相応な「大それたこと」などするな! 一万円札を突き付け、まずは説得を試みるつもりでしたが。


 「大量殺戮」を目論んでいるわりには、啓一の奴、耳に刺したイヤフォンで、シャカシャカ音楽を聞いたり。完全無防備で妙にリラックスした様子じゃないか。まともな35歳が外出時に着る服じゃないのはともかく。手ぶらで武装しているわけでもなさそうだし。お前は今日、一体、何をしに外に出たんだ?


 犯行現場の「下見」・・


 信二は身内だから仕方がないとしても。美代子さんには啓一のせいで、もうこれ以上迷惑はかけられない。息子が19歳のまーやに夢中なように、父修二さんも美代子さんに突き動かされ。


 今ここで警察に通報して、子供部屋の家宅捜索令状を取ってもらい。啓一の部屋に大量破壊兵器がないか調べてもらうというのはどうだろう? 一体、あの部屋には何が隠してあるのか、私も気になって仕方がない。もし法に触れる殺戮武器があったなら、啓一はその場で逮捕してもらって犯行を未然に防ぎ。「心神喪失状態」か何かで、刑務所とは別の檻の中に、死ぬまで監禁してもらうというのはどうだろう?


 美代子さんを喜ばせたい、気に入られたい一心で、啓一に「逆大それたこと」をしてもいいが。逮捕されて実刑を食らったら、美代子さんに対等な立場で会えなくなってしまう。


 私の家には「家政婦」はいても、「妻」はいない。同じように小太りの若禿げはいても、内海家の後を継いでくれる「長男」はいない。唯一、まともな次男信二は、下手を打ってしまい。外に出れない啓一に代わって、家に入れない出禁の身。


 立派に「男の仕事」を成し遂げ、「勝ち組」として悠々自適の老後かもしれないが。俺のハートはゲットノーサティスファイ、いつも・・俺は男として父として、やるべきことを果たしたはずなのに、妻も長男も次男もまるで他人。父に対する感謝も尊敬も愛もない。


 こうして妻も息子二人も。俺の頑張りで何不自由のない生活をしているのに、なんでこうも私に冷たいんだ。修二さんはなぜ自分だけがこんなひどい目に遭うのか? 皆目見当がつきませんでした。老いの孤独が心に染みるな・・また美代子さんや彩加ちゃんと、飲んだり食べたりして和気あいあいとしたい。それさえ叶えば、妻や子供たちなどいなくても結構だ。


 修二さんはまったく尾行に気づかず、平日の昼間に変なシャツを着た、気味の悪い中年男が。突然、出没して自分の進む方向に向かって来る。対抗してくるご婦人方が皆、啓一に怯えたような顔をし。逃げるように走り出しては、大急ぎで通り過ぎる姿に対し。いちいち睨み付けて威嚇する啓一くんに。こいつ、やっぱり「何かやる気」だ。絶対に「まっとうな社会」に対し、強いうらみを抱いているにちがいない。自信が確信に変わるのでした。


 俺が止めるにしても。こんな肉厚じゃ家にある刃物では、啓一の皮下脂肪を到底貫通させられず、「未遂」で終わり。自分は刑務所。啓一はもう止める者もない無法地帯に、ブレーキの壊れたダンプカー状態で野放しになり。加害者の「美人すぎる身内」として、美代子さんが興味本位のマスコミに追いかけまわされたら? それにいくら死んだのが社会悪の「ひきこもり」とはいえ、人殺しであることには変わりがない。殺人犯の祖父など、彩加ちゃんの心に暗い影を落とすし、将来の縁談にも差しさわりがあるだろう。何かいい方法はないだろうか?


 そうだ! 次男が実家出禁なら、長男は実家幽閉にすればいいじゃないか。子供部屋に突入して、無理やり外に出すのではなく。逆転の発想で、子供部屋のドアを刑務所と同じ鉄の扉に交換し。中からではなく、外から鍵をかけて閉じ込めておけば。もう物理的に「大それたこと」は出来ないはずだ。トイレはおまるでも与えて、啓一を猫可愛がりしている、房代に片づけさせればいい。バイトをクビになって、元々のひきこもりに戻った今。今度は自主的に引きこもるのではなく、親が子供部屋に閉じ込めて月2万円の小遣いを与え、「飼い殺し」にすれば、私も美代子さんもボインボインじゃないか。


 修二さんは、学校の勉強は優秀でも。どこか精神にひびがはいっているのか。「ウィンウィン」を豪快に間違えると。


 しかし、啓一をどう説得したらいいのだろう? なにしろ「話して分かる相手」じゃないからな。修二さんはお互い様な事を考えると、もし啓一が父の説得に応じず、「大それたこと」を決行するというなら・・


「なんだ」


 思わず素っ頓狂な大声が出そうになり、修二さんは慌てて口を手で押さえ、尾行がバレないよう物陰に隠れました。


 なんだここは・・啓一くんが迷うことなく、物慣れた様子で中へ消えて行った建物。「野豚さんのH(ハウス)」を見て。


 啓一、お前はこんな怪しげな店に何の用なんだ? 働きもせず、大それたこともせず。平日の昼間からこんな店で何をしているんだ? いやまて・・犯罪サスペンス映画などでよくある、まさかと思う場所がテロ攻撃の標的だった! ではないのか? こうしてはいられない! 修二さんは自分も「野豚さんのH(ハウス)に突入しました。


「いらっしゃいませ。お客さん、当店のシステムはご存知ですか?」


 煽情的な裸の女性のポスターを張り巡らせた店内を、修二さんが満更いやそうでもなく眺めていると。酒焼けした赤ら顔の、ブルドッグ顔の親父が、啓一くんとお揃いのえんじ色の三つ揃いスーツで現れました。


「店主。あなたと同じスーツを着た、若禿げ小太りのテロリストを見かけませんでしたか?」


「エロリストなら見ましたが、私と同じスーツの小太りは見ていないな」


 しまった、今日の啓一は、自殺したデーブの身体から、無理やり「形見分け」で引き剥がしてもらった。物件ならぬ、魔の「事故スーツ」姿じゃなかったな。謎めいたことを思い出すと。


「店主、安全のため、しばらくここで待たせてもらってもよいか?」


「どうぞどうぞ。まず最初にお好きなDVD5枚に、漫画一冊選んでもらい、こちらの料金プランから」


「安全確認に時間が掛かる。店主、この六時間コースで」


「かしこまり~」


 侍にも休息、癒しというものが必要だ。それにいざ鎌倉となったら、シャバの空気とも当分おさらばだ。


「店主、私はこういうDVDは、最初のインタビューからラストまで、一秒足りも無駄にせず徹底鑑賞するタイプでな」


「ごゆっくりー!」


 六時間後。


 尾行してここまで一緒に来た啓一くんが、看板持ちのバイトを終えて帰宅してから、30分後。


「大将、お疲れだね!」


 精根尽き果てような顔で修二さんが個室から出て来て。


「一期一会であった。店主、達者でな」


 DVDを返却し。


「まいどありー!」


 修二さんが「野豚さんのH(ハウス)」を出た途端。


「なんだってー!」


 また素っ頓狂な大声が出ました。


 なぜなら、この近くには市営の駐輪場があり、そこに向かう宿敵。お隣の殿塚夫妻と、「野豚さんのH(ハウス)」前で、修二さんは鉢合わせしてしまったからです。


                      ( ;∀;)

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