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「ニィーティスト」  作者: ニィーティス亭 夢★職
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第三章 躍動篇 2-4 路上にて

じりっ、じりっ。見分け方は、短パンか迷彩ズボンかのみ。限りなく啓一くんに似た男は。駅前東口風俗街に通じる細い道。その駅寄りの赤いコンビニ前から、すぐ隣にある緑のコンビニに。身を隠しながら敵陣に侵攻するゲームのように、少しづつ啓一くんに近づいてきました。


 恵体、若禿げ、おそろのアニメ柄シャツ・・いや待てよ。あのアニメ柄シャツは、まーやが主題歌を歌ったアニメのレコ発ライブ、その会場限定のみの販売だったはず。


 ぞくり。啓一くんは背筋に冷たいものが走りました。今ではネットで3万以上のプレミアがついている、このお宝アニメ柄シャツを、昔の俺(ニート)が落とせるわけがない。ていうことは、「魔王咆哮芸」による、阿鼻叫喚のこの世の地獄に。大きいお友だちを大勢突き落とした、あの「アニバーサリーライブ」に、こっちの恵一くんも参戦していたのか?


「なんだってー!」


 気が付くと、看板が邪魔で顔は見れませんが、アニメ柄シャツに迷彩ズボンが、啓一くんの前に立っているのです。


「先輩、あの時はいいゲロを吐かせてもらいました。まさか僕のトラウマ魔王、「まーや帝国民NO1の男」から、心温まるお手紙をもらえるなんて思いもしませんでしたよ。おっと、看板はそのままで。だって、我々が至近距離で顔を突き合わせても、お互い悲しい思いをするだけじゃないですか」


 確かに。人と会話する時は相手の目を見て。などとよく聞きますが、それは正社員以上限定。現元のニート同士では、かえって相手に失礼に当たります。


「それで元ニートに会いにいったんですよ。そしたら座れないんです、相手が看板持って立ってるから。もうね、アホかと、馬鹿かと。俺が。おい俺、手紙に感動したぐらいで、なに普段出ない外に出てんだよ。よーし、パパ、お願いも頼んじゃうぞー、誰がパパやねん! お願いを頼むってなんやねん! NO1の男な、時給もらうから、その看板寄越せと。ニート同士ってのは、もっと殺伐としてるものなんだよ」


 ごくり。啓一くんはまた生唾をのみました。顔の見えない恵体は、お前はなにをいってるんだなことをまくしたてると、次は啓一くんのターンとばかりに黙りました。


「殺伐としているって、顔を合わせた途端、お互いスマホを取り出して。ガンマンならぬ、ニート同士の決闘みたいに、口も聞かずに掲示板で罵り合う的な? 通はつゆならぬ、設定大盛り、「汗だく」で書き込む的な?」


「そこでまたぶち切れですよ、ケツが。クソ! してきます。そこのコンビニで」


 恵一くんは作家志望らしく、「倒置法」を駆使して、トイレにダッシュして行きました。


 でもわざわざここまで会いに来てくれるなんて・・こんな俺でも、少しは「俺たち」の役に立ったのかな。見た目はあれでも、根は心優しい善人です。啓一くんは暖かい気持ちになると。なるほど「抜けない美女より、しごけるブス」だな。啓一くんは「やらない善より、やる偽善」を、自分なりに改悪すると。


 そうだ、このことを加奈子さんにLINEで報告しよう。啓一くんはスマホを取り出すと、これはきっと運命。啓一くんの立ち位置まで、コンビニWiFiが届いているのです。


 お兄さんが、僕のバイト先に来ている、今。


 これだけ打って送信するまで五分かかりました。


「おお!」


 すぐに加奈子さんから返信が来ました。一般ピープルは、こんな便利な道具を使っているのか。


 了解です。あと既読スルーやめて。


 既読スルーってなに?


 ごめん、今、大学のレポート書いてるから。


 了解で~す。


 中々、いい感じじゃないか。啓一くんが一人にんまりしていると、恵一くんが戻ってきました。


「先輩。まあ、なんの「先輩」かは曖昧にしとくとして。はじめまして、ニー山ひき助です」


「え、恵一くんじゃ・・」


「ニートのニーに山。ひきこもりのひきに、助平の助。ニー山ひき助と申します」


「ああ、なるほど。芸人さん志望で、さっきのは「ネタ」だったんだ」


 啓一くんが、励ますように、好意的に聞くと。


「いえ、僕は純文学畑で、芥川賞作家を目指すべく、この名前をつけました」


 恵一くんも胸を張り、きっぱりと答えました。


「ずいぶん、世の中や一般人をなめたような、思い切ったペンネームだね」


「僕はね「まーや帝国民NO1の男」。この不滅のネーミングセンスを超えることは出来なくとも、せめて肉薄したい。恵体だけに。それにどんなにふざけた名前でも、それを指摘して叱ってくれる、友人知人もいないじゃないですか。我々は「無法」ではなく「無人」。やったもん勝ちですよ」


「確かに。で、どんなの書いてるの? ネットとかで読める? 俺も読ませてもらっていいかな?」

 

 30歳職歴なし、ニートが転生するラノベを書いている、なろうで。ここまで完璧に「終わっている」奴もそういない。むしろ清々しいほどの負け組だ。でも、それを俺がいっても仕方ない。啓一くんは「五年前の自分」に気を遣ってたずねました。


「ぜひ。「懲戒解雇されたらニートに転生していた」って題で、「小説家とやろう」。通称やろう系で連載しています」


 そんなのあるんだ・・


「え、「俺たち」が異世界の勇者に転生するとかじゃなくて?」


「そんなのありきたりじゃないですか。僕のは一流会社正社員、副業でトレーダー。彼女持ち、セフレあり」


「車はレクサス?」


「いえ、チャリンカス設定で。自転車通勤していて、ある日突然、会社の金を使い込んでいるのがバレてクビになり。ニートに転生するんです」


 それ「ニート」じゃなくて、単なる「無職」じゃ・・


「先輩、お願いします、俺と敵対してください。 俺は八百長(ブック)で塩ならぬ「山岡対応」をしますから、先輩も俺に対し「海原対応」してください。なぜ、料理人ばかりが無駄に対決して、俺らニートひきこもりは、無駄な時間はいくらでもあるのに、究極ニート対至高のひきこもりの対決がないんですか? ラップバトルがあるなら、「俺たち」の掲示板バトルがあってもいいじゃないですか?」


 いや、いつもやってんだろうが・・


「僕のは匿名ではなく可視化するんです。eスポーツがあるなら、ニースポーツもあっていい。僕の小説では、懲戒解雇された主人公が、パクった金を弁償しないと刑務所送りになる。それを避けるために、秘密カジノで究極ニート対至高のひきこもりが、一対一、もしくはチーム同士でレスバトルをするギャンブルを考案するんです。それを日本に100万人いるという「俺たち」が審査し、支持が多い方が勝ち。勝てば賞金がもらえるし、ネットで金も賭けられる。それを無修正AVのように、合法的に海外からネット中継をする。顔出しが恥ずかしかったら、眼鏡、マスク、覆面、頭巾もあり。レスバトル王者ともなれば、非正規の永遠の壁、年収200万越えも夢じゃない」


 ありだな・・なんだ、加奈子さんに聞いていたのとちがい、ずいぶんとしっかりした奴じゃないか。


「ニートひきこもりの一発逆転ですよ。家を出られた、バイト始めた、えらい。それだけじゃ、毒親のせいで無駄にした、「俺たち」の人生の収支が合いませんよ。「俺たち」でユーチューバーに匹敵する、稼げる非正規ビジネスを立ち上げ。創業者利益を得る。「ニートひきこもり」であることを恥じるのではなく、利用するんです」


「その発想はなかった。それで主人公はどうなったの?」 


「はい。思ったよりお金を賭ける人が少なかったうえに、保釈中で海外渡航出来ない。現場を任せたセフレに売り上げを持ち逃げされ、結局、損害賠償出来ずに収監されて、第一部は終わりです」


「そ、そう。でも面白そうだね」


「それで第二部では、刑務所で同房になった先輩に。長期間ひきこもったあげくに、親を刺して収監されている受刑者。元「にーや共和国民一等賞の男」がいて。最初の山岡と雄山な関係から、男しかいない刑務所ゆえ、恵体男同士の禁断の恋に陥るんです」


「そ、そう。最近はBL要素も必須だからね」


 恵一くん・・いえ、ニー山ひき助くんは回り込むと、キッと啓一くんの目を見、右手を差し出しながらいいました。


「ゴッドファーザー、そういうわけで、僕の小説のために、ビジネスセフレになってください! お願いします!」


                     (*'ω'*)

          

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