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「ニィーティスト」  作者: ニィーティス亭 夢★職
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第三章 始動篇 1-2 すべて裏返してみろ

 覚醒した。ような気になった啓一くんは、結局、ほぼ徹夜で三連勤。やれば出来るのバイトに向かい。安定の集合1時間前到着を決めました。


 いい事とは続くのか、今朝はウザい毒両親も、老人特権満喫でどこかへ出かけたのか留守でした。啓一くんは我が家のように昨夜の夕飯をチンして食べ。出禁のメゾネット魔狐が持参したきりのタッパーに、ごはんやおかずを詰めて、お弁当として持参することも出来ました。


 でも、さすがに眠い。バイトというのは、向かうまでは目がさえるけど、着いてしまうと気が抜けて眠くなるものだな。でも今日行けば、明日から5日はマイルドニートならぬ、「馬鹿師匠(マスター)」への道をとことん追及出来るからな。昨夜の電撃ブロックには興奮したし、これからも勘違い有名人をいじって、俺の養分にする、自分慈善活動にはとことん打ち込まないとな。そのためのSNS、売名と引き換えの、「有名税」が嫌ならやめればいいんだ。


 人生初のバイトも五回目ともなると、啓一くんにも余裕が生まれたのか。少し外を見て回ろう。集合時間までかなり余裕があるので、駅周辺を探索することにしました。


 うわっ。啓一くんは駅前ロータリーに出ると、思わず心の声が出ました。昨日と同じ位置、同じ無表情で、ヴィーガン砂田さんが駅舎を見上げていたからです。


 マジかよ・・地図盤を見て、近くに小公園があることを知り、用を足しておこうと向かうと。「エサやり禁止」の看板前で、「マイルドニートの辰」こと辰野くんが、いつもと同じ無表情で、相撲の塩撒きのように、ハトにエサをやっていました。


 今日はこいつらか・・でもいい、これも考えようによっては「修行」だ。「無言の行進」で何が出来るかだ。そう気持ちを裏返していると、


「よう、また会ったね」


「池谷さん!」


 地獄で仏、啓一くんは思わず駆け寄りました。。会社をクビになったことを家族にいえず、出勤したふりをし、公園のブランコでたそがれているスーツのオッサン。かと思いきや、そこにいたのは元祖ニィーティストの知恵、「プラカーダー剛」こと池谷さんでした。


「続けてるの?」


「はい、なんとか。今日で五回目です」


「矢野くんと会ったんだって?」


「はい。知り合いですか?」


「うん、ツイッターで情報交換している」


「ツイッターやってるんですか?」


 あの超痛恥ずかしいを飛ばしていうと。


「フォローしてよ」


 そうか、あれも裏返して精神を鍛えるための「修行」なんだ。つぶやいていることが、何も本当のことである必要はない。よっちーさんみたいな「キャラ設定」に則って、養分ホイホイでわざと暗黒ツイートしているだけかもしれないじゃないか。


「なら、僕もアカウント作ります。「まーや帝国民NO1の男」で」


「覚えた。俺は「プラカーダー剛」って、漫画描く時のペンネームでつぶやいてる」


「了解です。漫画って、池谷さんはどんな漫画を描いてるんですか?」


「ペンネーム通り、プラカード持ちの、中年非正規の話とか。あとプライベートエロ漫画も描いてる」


「マジすか」


「バイト用語でいう、「天国案件」て分かる?」


「はあ。昨日、矢野さんがいってました。女の子と一緒のバイトですよね?」


 池谷さんは急に夢見るオヤジ顔になり。


「19、20のピチピチ女子大生とかが、「社会勉強」を兼ねてこんな底辺のバイトにくる。しかもプライベートではなく仕事だから、こんな終わってる親父にも、まるで上司に対するように丁寧に接してくれる。金を払った夜職の女性のような、すれたビッチ感だけのスケと違い、女子大生バイトはピチピチの上に清楚だ。そんな時は、僕も柄にもなく紳士になってね」


 池谷さんは、はー、とため息を吐き。


「アドバイスしたり、なごませたり、それはおもてなし精神で、おじさんハッスルしたものだよ」


「そうですか。僕は生身の女性は気を使って疲れるから、池谷さんとか矢野くんみたいな男同士がいいな」


 正直にいうと。


「内海くん。底辺になじんだら抜けられなくなるよ。僕と違って君はまだ若い。僕だって漫画家になる夢をまだあきらめてはいないんだ。ただね、僕らは僕らの世界観、考え方で、全てを裏返して、そこから夢や希望を見出さないといけない。でないと、いずれマイルドニートからヴィーガンに枯れ果てて終わりだ。死ぬ間際はきっと後悔することになる。虐待も挫折もなく大人になった幸運な人と我々は、夢を見つけたり、努力したりする方法が違うんだ」


「そうですね。でも池谷さんもったいないですよ。せっかく、そんな素晴らしい考えを持っているんだから、もっと僕らのインフルエンザとして活躍してくれないと。知らないで苦しんでいる子たちが可哀想ですよ」


 啓一くんは、こぞとばかりに身を乗り出し、力説しました。


「ハッハッハ、病原菌はいいね。バイトが派遣先で、正社員を次々インフルエンザにする話とか面白うそうだ」


 啓一くんは、世間に影響を与える行動を取る人、「インフルエンサー」と、病気の「インフルエンザ」を間違えてしまいました。


「君は絵心はあるかい? 漫画を描いたこととか」


「いえ、読むだけで」


 それも今は大人漫画雑誌だけ。買うのも。


「さっきの「天国案件」に話に戻るけど、もしいたらの娘世代の女性とバイトを共にした。でも、紳士なのは終わって駅で別れるまでだ。別れた途端、僕は「都会の性恐怖 非正規レイパー剛」に変身するんだ。あとをつけて犯る。それが「天国案件」後の僕だ」


 ごくり。別人のようなキラーな顔の池谷さんに、啓一くんは思わずなまつばをのみました。


「別れたあと、どう犯るか? 僕は自転車をこぎながらプロットを考え、帰宅早々、筆を起こす。紳士の仮面の下での、プラカーダー性剛魔な妄想を絵にし。僕は自分のペンで5発、6発と、清楚な女子大生を、容赦なく犯り続ける。ただバイトに来ただけの、真面目な女子大生を、僕は己のペンで犯り続ける。机に向かい、一心不乱に徹夜で書き上げ、完成した「作品」を朝日に照らして読みながら、「大人しごき」をし。きっちりフィニッシュするまでが、僕の「天国案件」なんだ」


 ごくり。啓一くんは、ちがった味のなまつばを飲みました。


「たまに自分の「プライベートハメ撮り」コレクションのことを、男の甲斐性みたいに自慢しているクズ男がいるじゃないか? そんな「天国人生」な男もいれば、僕のようなごくまれな「天国案件」に甘んじ、「プライベートエロ漫画」をコレクションしているだけの、しがない「来世期待」の男もいる。でもね、これだけは知っておいてほしい」


 うつむいて喋っていた池谷さんが、キッと顔を上げ啓一くんを見ました。


「なんでしょう」


「それはね、次の日、疲れ果てて泥のように眠り込んでも、体力は回復する。その時なんだ、本当の己との勝負は」


「はい」


「僕は迷うことなく机に向かう。そうして己をしごき倒した「プライベートエロ漫画」に、新たに彩色してオールカラーにする。すると一本で二度おいしい、自分しごきの旅、絶頂登頂が可能になるんだ!」


 啓一くんは思わず絶句してしまいました。深い、深すぎる・・「馬鹿師匠(マスター)」への道は・・もしこれがそういう「設定」ではなく、「本当のこと」だったら・・


「なんだい喉がかわいているのかい?」


 またなまつばを飲んだ啓一くんを心配しながら、池谷さんは時計を見ました。


「おっと、そろそろ集合時間だ」


 二人で駅に向かうと、改札前で、


「・・・・」


「・・・・」


 互いに背を向けて立つ、今日の修行。ぶつかりならぬ、無言稽古の相手、マイルドニートの辰とヴィーガン砂田さんと合流しました。


 こうなるくらいなら、池谷さんみたいな「馬鹿師匠(マスター)」になった方が、生きる意味や楽しい人生が遅れそうだな。啓一くんがともに両極端な比較対象をながめながら。


 あれ、となると、池谷さんは今日はどこに入るんだろう? 聞こうとすると、



「あのー、内海さんています?」


 昨日の豪快トイレ娘の加奈子さんが、同じジャンパー姿で現れました。


「お、いきなり「天国案件」じゃないか」


 池谷さんに肩を叩かれると、


「ああ、昨日の。今日はよろしくお願いします」


 違った意味での自分しごき、試練が、突然、啓一くんに襲い掛かってきました。


                     (*'ω'*)


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