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「ニィーティスト」  作者: ニィーティス亭 夢★職
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第三章 始動篇 1-1 すべて裏返してみろ

 親が死んだらどうするかじゃない、生きているうちに何ができるかだ。


 まさに「ニィーティストの知恵」だ。自分を無駄に蔑み、掲示板で別人格を演じていた、かつての俺なら。親が死んだあと、職歴、友人、知人ゼロで。自分の人生、仕事のストレスを。俺たちを見下すことで晴らそうとする。あの単に無知なだけの子供頭どもの冷ややかな視線に、なすすべなくへりくだってへらへらしているか。虚勢を張って怒鳴り散らし、自暴自棄になるか。ネトウヨかパヨクかみたいな、二者択一しかなかったろう。


 でも人、いや「俺たちの道」は決められた道ではない、自分で切り開いた道を行くしかないのだ。


 今日は房代さんの気持ちの悪いはしゃぎぶりも気にならず。啓一くんは、心洗われたとか感動したとかとは違う、天の導き、神の教えに触れたような。以前とは全く違った気持ちで自分の部屋の鍵を開け、すぐさまパソコンに向かい、いつもの掲示板を開きました。


 <【アイラブK国】ナマポヨッチー44【クールジャパン完全制覇】>。啓一くんは忙しくマウスを動かし、最新の書き込みを読みました。


 <ナマポじゃ足りない風俗代、きっちり日払い現金で六千円いただき、鶯谷サロン三回転ペろ抜き~出し尽くした~。お前ら、通報すんなよ!><死ね!><「俺たち」の税金で行く風俗は気持ちいいのか?><半島にお帰りください><これから大好きなヤミョンくんの違法動画見ながら、男で己をしごき直す修行モード入りま~す><キチガイ、とっととくたばれ!><うんこプリプリ~! あー、違法バイト疲れた~! 明日からはタックスニートとして、反K国野郎ハンターに戻りま~す!>。


 なんて見事な。同じ掲示板でも、まるでホテルのトイレみたいに光り輝いて見える。さすがはよっちーさんの「匠の技」だ。


 馬鹿とネットは使いよう・・なるほどな。飲み屋とかで面と向かってこんなことをいいあってたら、つかみ合い殴り合い必至だけど。ネットならいくらほざき、やらかしても、何の実害もないもんな。それに、今日は日払いじゃないし、お母さんが部屋に来て、肉じゃが作って待ってるっていってたから。そういう「設定」でネット民を煽り、ボロクソ叩かれても。書き込みは全部やらせのうそだから、痛くもかゆくもなく。口喧嘩で相手を負かしたんじゃない、己の知恵と勇気でネット民を養分化して、自分の精神を鍛えた。これが本当の便所の落書きの活用法だったんだ・・俺はまじめすぎたんだ。今まで何を律儀に、22年ニートを恥じて、よっちーさんとは違った意味で別人を装い。恐怖、不安からくるうっぷんを、無駄に掲示板に書き込んでいたんだろう? 裏返して、ちがう気持ちで書き込めば。山籠もりして己と向き合った侍同様。家籠りしてネットを通じて己と向き合うだけで、自分を覚醒させることも出来たんじゃないか?


 税金による福祉で生活しながら、ネトウヨ、アニオタ、声豚、撮り鉄指導、握手会やらかし、風俗嬢ネット粘着、エセ関西弁使いといった、「悪の限り」を尽くす。という「設定」を、「キャラ」を作って。本気ではなくやらせ、八百長で「世間一般の常識」、「子供頭大人」から-の冷ややかな視線を浴びる。


 ガチでやっていて馬鹿にされたら。それは腹も立つし、無理解が悲しくて傷つくこともある。そうして、そのうっぷんを掲示板にぶつける。その己の進歩、進化のない無限ループから抜け出すには?


 やらせ、八百長。要するに市場調査、人間リサーチとして、同じ「悪の限り(世間一般の常識調べ)」をすれば。その冷ややかな視線、無知による誤解が。あかの他人の勝手な不快感であり、自分にとっては有害なだけだ。そこまでいって、ただ己の「人権」を犯して喜んでいる子供頭どもを、自分が気にする価値も必要もないことに初めて気づく、スルースキルが身につく・・


 有名レスラーのとは一味違う、よっちーさん、いや「俺たち」の「馬鹿になれ」。それは自分が装い演じている馬鹿を通し、それまで無知ゆえに、恐れ、気にしていた人たちの馬鹿さ加減を見抜き。こいつらは俺が気にする必要もない、愚かなあかの他人。初めて上に、いや「人の目」を乗り越えられるんだ。


 俺は今まで「まーや帝国民NO1の男」。その応援服で外を歩くのが、正直、恥ずかしかった。真面目に働いている人にすまない気がしたからだ。でも考え方を裏返せば。あの応援服は托鉢僧の衣装となんら変らない俺の僧衣。応援服姿で外を出歩くこと。それは羞恥プレーではなく、修行、己の魂の浄化作業だったんだ。


 啓一くんは思いました。目もくらむような原色のグッズで身を固めたアニオタも。「世間一般の常識」の目の、餌食、笑いものになる気満々の。トータルコーディネート握手会ピーポーも。夜職のお姉さんに、タダで会ってくれめんす。SNS粘着するキモオヤジも。裏返せば、自分の精神修養のために、そうと気づかず、厳しいいばらの道で、あえて自分をさらしものにしていたんだ。


 このことに気づく気づかないは、その後の人生を大きく左右する。「ニィーティスト」になるか、「人生の落伍者」になるか。それとも最悪の「凶悪犯罪者」になるかの。


 ただ、啓一くんは思うのです。撮り鉄は駄目だ。あいつらは「俺たち」じゃない。ヤンキー、DQNの仲間だ。何より群れて多勢に無勢で、堅気さんに迷惑かけているところがダメだ。己を覚醒させる「馬鹿師匠(マスター)」修行は、自分一人でやらなければいけないのだ。


 啓一くんは空腹も忘れ、夢中でネットに張りつきました。


 <清家意院長先生、あなたのツイッターにいつも激しく同意しているファンです。オリンピック応援の件ですが、院長が宿泊費を負担し、日本中の「族」を東京に集結させ。開場周辺を院長が望む「古き良き旗」で埋めつくす、という案はどうでしょう? 日本の「伝統文化」を世界にアピールする、ビッグチャンスじゃないですか?>


 これは著名人の資産家の失策をあざわらい、揚げ足を取って勝った気になる。意地悪な底辺のひがみねたみ投稿ではない。何一つチャンスに恵まれなかった底辺が、再始動するための精神修養なんだ。清家意センセイ、これは運がいい勝ち組がネット利用するときの、「税金」のようなもの。どうか俺の魂浄化、その人柱になってくれ。


 <馬鹿にしてんのか! これ以上、僕に失礼なこというと、法的に訴えますよ!>


 キター! 養分頂きました! 俺、パワーアーップ!


 <ラジャ! ただ、僕は今現在「無期限活動休止中」なんで、お金とかは親父に請求してください(*'ω'*)>


 <君は働いてないのか! 恥を知りなさい!>


 <先生の愛国男気ツイッターが気になって、仕事になんていけません。先生、口座番号教えるんで、義援金送ってください。その金を先生との裁判の費用に使います。金持ちが社会的弱者を訴えるとかおどすなら、それくらいのハンデをくれるのが人の道ですよね?>


 真剣に、ガチでやってるんじゃない。俺の精神修養ための、ネットいう大海で、でかいマグロが俺の釣り針にかかった。俺は怒りも興奮もしない。無心になっている。俺の魂の浄化のために、獲物の掛かったこの釣り竿を、ただ操るだけだ。


「先生、口座番号です。50Kほどお願いします・・ん?」


 <@seikeiはあなたをブロックしました>


 勝ったんじゃない、勝ち負けなんて関係ない。ただ俺の本当の(ロード)が始まっただけだ。クソ、まだ克服しきれていない、昔の俺の手がビビって震えてやがる。これを繰り返し、精神を強化し。無我の境地(ゾーン)に入れるようになって初めて、俺は「馬鹿師匠(マスター)」になれる。それで、今までのみじめな現実を嘆き、ただ怒っていた、昔の内海啓一から抜け出せるんだ。


 畜生、掲示板の石ころどもが、みんな宝石に見えやがるぜ・・かつて、恐れと不安、怒りに取り憑かれて張りついた掲示板が。今や啓一くんが王者になるためのリング、練習相手になり。


 家で修行、外でも鍛錬。親が生きているうちに何が出来るか? 時間なら絶望しかけたほどある。衣食住は毒親が保証してくれる。俺の生まれ変わり運動、いつやるの? 今だよ。


「テンション上がってキター!」


 俺はもう誰の奴隷でもない、まだ輝いたことのない曙光、始動するのに遅いことはないこれからの男。


 啓一くんは以前とは別人の輝く顔を、汗でテカらせながら、夢中でキーボードを叩きました。


「畜生、徹夜しちまったぜ。新しい朝が来た、希望の朝が! さてひと眠りするか」


 啓一くんがまぶしい朝日に目を細め、ベッドに横たわろうとした、その時でした。


「しまったーっ!」


 お約束の声が轟きました。寝ようとした啓一くんは、今日が三連休最終日で、今日もプラカードのバイトがあることを、すっかり忘れていたのです。


                       (*'ω'*)


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