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「ニィーティスト」  作者: ニィーティス亭 夢★職
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第二章 曙光篇 #8-2 どんなに環境が悪くても頑張っている人はいる

「なあ内海はん、ワシがなんでこんなハードで、ニートボイルドな暮らしを送るようになったか? 分かりまっか」


 ふんと鼻を鳴らすと、よっちーさんは、さも忌々しげに吐き捨てました。


「その・・勤めていた会社がつぶれて失業したとかですか?」


「ブー!」


 よっちーさんは、ちゃうちゃうと大きく手を振ると、


「ずっと「専業息子」してたんやけど、親父から離縁され。家、追い出されて、地獄落ちしかけた時、「ワロタピーポー団」と運命的な出会いをしましてな」


 よっちーさんは謎ワードを連発します。


「その「専業息子」ってなんですか?」


 話しかけるな! の辰野くんや砂田さんとは違い、何でも聞いてくれ。歩く質問箱といった顔なので、啓一くんも思い切って聞いてみました。


「なんで「世間一般の常識」の奴隷どもに、ニートひきこもりなんて、勝手にレッテル貼られなあかんねん。うちはお袋が専業主婦で、長男が「専業息子」。人様の家のことに勝手に口出しすな。そしたら専業リーマンの親父が、義雄、お前も今年35だ」


 この人、俺とタメなの?! 


「22年も家で「専業息子」してないで、いい加減、家を出て自立しろ」


「22年、ずっと家に?!」


 驚きはさらに続きます。


「兄弟、ワシら選ばれしレア人間や。でもな、掲示板では「大物」でも、外ではチワワ。親父と刺し違える前に、「月尻バイトスクール」とかの、えらいガタイのいいおっちゃんたちに、むりやり外に連れ出されてな。目の前で家の鍵を交換するの見せられて、もう子供部屋には戻れない。震えたし、もう少しで校長に牛みたいに「刻印」を押されて、逃げられないタコ部屋で奴隷労働させられるとこやった」


「「月尻バイトスクール」って繁盛してるんですか?」


 まったく同じ境遇の兄弟、いや「同級生」の出現に、啓一くんの声も裏返ります。


「ニートひきこもりは、自分で自分を駄目人間だと思いこんどるから、なんも抵抗せえへんからな。それに金持ってる年寄りからしたら、ノーパンしゃぶしゃぶ事務次官みたいに、元院長が無敵なら俺も。自分から刺しに行って、裁判は分からんけど、逮捕されて有名人になるより。金持ち喧嘩せずで、昭和のスパルタに丸投げするのが、利口ってもんや」


 すでに百人以上のニートひきこもりの親から、一人頭百万円の「入学金」を徴収し、子供部屋から連れ出して、自分たちの職場で「研修」させている。


「窓に檻が付いた寮を新築して、護送車みたいな「送迎バス」もあるいう話や」


「逃げたら「恥ずかしい動画」を拡散されるって本当ですか?」


「内海はん、えらい詳しいな」


 この際、俺も腹を割って話そう。よっちーさんなら分かってくれる。


「実は僕も」


 拉致されそうになったところを、


「魔王咆哮芸! そんなんあるんか?!」


 いきさつを話すと、よっちーさんもうなりました。


「よっちーさんは、どうやって逃げたんですか?」


「ワシは「月尻バイトスクール」に反対する人たちが、ずっと校長を尾行しとってな。その人たちが今すぐ解放しないと、誘拐罪で通報するいうて止めてくれたんや」


「月尻は引き下がったんですか?」


「百万もろたら、現場で使いもんにならない、おっさん専業息子なんて邪魔や。ほな好きにせい、ただしもう家には戻れんからな。捨て台詞残して撤収や」


「それでどうしたんですか?」


「助けてくれた「ワロタピーポー団」の藁田団長が、我々の実験に協力してくれないか? 誘ってくれたんや」 


「実験・・それはどんな?」


「元ニートによるヴァーチャル生活保護体験。分かりやすくいうと、あんたもやってみよう。おもったことあるやろ。新薬の治験みたいなものや」


 実験はまずワンルームマンションの一室が与えられ。ひと月の支給額、13万5千円から、家賃、光熱費、ネット代が差し引かれた8万円が現金で支給される。


「あとは本部からの指示がメールでくるから、その任務をこなすだけや」


 ネトウヨ、アニオタ、声豚、撮り鉄、握手会荒らし、風俗嬢ネット粘着、エセ関西弁・・


「それまでのワシには縁もゆかりも任務ばかりやから、キッツい修行やったけど、ここから逃げたらホームレスで飢え死にや。火事場の馬鹿力で、必死にがんばった」


 丸川目高議員、僕はあなたを「ニッポンの侍」と尊敬するものです。戦争の永久放棄、憲法で定められているのに、国会議員自らが日本国憲法を守ろうとせず。日本国の税金を使いながら、酔った勢いで戦争するしかない、オンナを買いに外に出させろ。堂々と主張し。これで日本中のネトウヨが総決起し、俺の名は国の歴史を変えた、憂国の士として永遠に語り継がれる。本気で信じていた丸川先生の「勉強バカ」ぶりに、しびれ、憧れてならない、同じ国の税金で生活する福祉系の者です。どうか僕たち「ワロタピーポー団」の名誉総裁に就任してくれめんす。


「ネトウヨは一人で千人分任務では。こんなリプやDMを日に数百通も送って、ブロック、新アカウント、ブロックの繰り返しや」


 そのほかにも、ラブアニメなキモオタスタイルで一人アキバを闊歩し、その姿が激写され掲示板でトレンド入りするまで帰れない。声優のコンサートで気絶するまでオタ芸をし続けなければいけない。タチの悪い撮り鉄の群れに単身乗り込み、警察が来るまで撮り鉄ともめないといけない。大所帯アイドルの握手会で、出禁を勝ち取るまでやらかし続けないといけない。外で誰かとエセ関西弁でフレンドリーに話さないといけない。


「あとツイッターで、風俗嬢に、おい、外で会おやないか? 寂しいんやろ? 遠慮せずにワシの胸にインダハウスせえや。でもな、ワシは心を鬼にして君を叱ることもある。でも、それもこれも君を思えばこそや。なんてリプライ、DM、質問箱に送り続け。キモオヤジ死ねとか、嬢にさらされたら任務完了とか。きっつい修行させられてますわ」


 啓一くんは震え声で聞きました。


「それってなんの意味があるんですか?」


「ワシは「スタンフォード監獄実験」、「ミルグラム服従実験」、有名な心理学的実験に匹敵する、「脱ニート洗脳実験」の被験者いうわけや。「月尻バイトスクール」は狂人の自己満足と金儲け。昔からあるアナログ根性論の詐欺や。でも「ワロタピーポー団」は理論的に、ニートひきこもりを社会復帰させるための、心理実験をしている民間団体でな。恥をかくこと、他人に迷惑をかけることを厭わなくすることで、繊細すぎるニートひきこもり体質を打破させ。身に着いた鈍感力で外に出るのを恐れなくする、ショック療法をさせとるんや」


「資金とかはどうなっているんですか?」


「ここが「月尻バイトスクール」と、基本的に違うところなんや。月尻連合みたいな、体育会系中卒のバカどもとは違って、「ワロタピーポー団」は、高学歴の元ニートひきこもりが運営している。資金はクラウドファウンディングで集められ、ゆくゆくは国からの資金援助や、株式公開出来るよう、動いているんや」


「その実験って、僕でも被験者になれますかね?」


 生活保護ではなく、次の「俺たち」を出さないための、人間の叡智を使った実験なら。合法的に一人暮らし出来るなら。俺は喜んで人柱になろう。啓一くんが決意の目でいうと。


「それがあかんねん」


「なんでです?」


「この実験は、親に家から追い出された就労経験のない、「現役ガチ勢」だけが対象なんや。あんさんみたいに、中途半端に家から出て、外でバイトしてるマイルドニートは、「元」やみなされて参加出来へんねん。ホンマ惜しいな。あんさんがネットの不滅のきめゼリフ、「働いたら負け」を守り抜いてくれてたら、今日にでも寮に入れたのに!」



                      (^O^)/

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