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「ニィーティスト」  作者: ニィーティス亭 夢★職
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第二章 曙光篇 #5-1 バイトはつらいよやめたいよ

 「ニィーティストの知恵」を胸に、意気軒高に帰宅したものの。家に帰れば父修二さんの。


 どうやら俺が自ら「責任を取る」、ニッポンの侍の本懐を遂げる必要はなくなったらしいが。俺のような高学歴、一流会社勤務の優秀なDNAを引き継いだ、百獣の王の息子たる啓一が。「この程度のこと」で満足していては、家族に何不自由のない生活を与えるために、無我夢中で企業戦士としてかいた、この俺の汗が無駄になる。ここで啓一を突き放すことこそが、甘え、怠け、無気力の、ひきこもり三冠王に。二度とそんな安楽は許さない。父親としての毅然とした決意を見せることになり、それが啓一への無言良薬、叱咤激励になるはずだ。啓一、お父さんは、夢中で頑張る獅子の息子にだけエールを・・


 みたいな、悪天然、子供頭おじさん思想全開の、獅子は息子を千尋の谷に。とっくに家族を顧みずに突き落としているのに、ようやく自力で這い上がってきた啓一くんを。悪いのは甘え怠けの息子で、それを辛抱強く見守った父の愛で、ようやく啓一は立ち直ったが、私は「この程度のこと」では不満だ。


 父修二さんは、ここで俺が甘い顔を見せたら、啓一のためにならない。「父の責任」、「愛のムチ」で、ここは心を鬼にして、よくやったなどといったそぶりは、絶対に見せてはならない。まさに「勉強バカ」の面目躍如でムスッとしています。


「お帰りー! 疲れたでしょう? お風呂沸いてるから入って。ごはんすぐ持ってくね!」


 精神的、肉体的虐待で、いじめに体が硬直して何も反撃できず不登校から・・こんなひどい人生を意図的に送らせた張本人が。これだけのことをしておいて、まだお腹を痛めて生んだ啓一とあたしは今も一心同体。立ち直った息子をけなげに応援する母みたいな顔を、何の疑問もない顔で平然としてんだ?


 家に入ったとたん、邪気、悪気、呑気。無責任どころか、悪いのは全て甘え怠けの啓一くん。本気で思っている毒両親に。もし「ニィーティストの知恵」がなったら?


 両親を刺殺した無職の長男(35)を逮捕。


 事案発生からの、全国のまだ「ニィーティストの知恵」のない。同じ境遇のニートひきこもりによる、同族嫌悪のネット書き込みが殺到するところでしたが、啓一くんはこんな家でも、今は耐えるしかない。両親がどんなにしょーもない人でも、運命と諦めて見て見ぬふりをするしかない。でも、この現状をあかの他人が、「世間一般の常識」に照らしてどうこういったら。


 余計なお世話だ! 俺は35の立派な大人だ! 大人が子供に説教するような言い方で、あかの他人が俺の人生に口出しすなボケ!


 今なら 俺は社会のダニのニートひきこもりだ。以前のように自分を卑下することなく、そういえる気がしました。でも毒親の遺体を放置したり。毒親に刺される、自分が毒親を刺す。「ニィーティストの知恵」を得た今。啓一くんはそんなのコントじゃん。それが日常的に起きて、ネットはともかく。テレビのワイドショーでは、いまだに知恵がないゆえの悲しい事案発生に、「ひきこもりは犯罪者予備軍」。ひどい無知ゆえの差別報道が横行し。それを見た毒母の姉、清子叔母さんのような子供頭が、ただでさえ無知で沸騰した頭と体に。甘え怠けのひきこもりには、自分のような「大人」が、心を鬼にして叱ってあげて、立ち直らせないといけない。


 無知ゆえの勘違いと、秘めた自分の心の不満を。何も言い返せないだろうひきこもりに、さも正論ぶってぶつける子供頭で。無知で沸騰した頭と体に、それこそ火に油を注ぎ、取り返しのつかない凶悪殺人に駆り立ててしまい。だから「犯罪者予備軍のひきこもり」は行政が介入し。


 自分がヒトラーや金正恩と同じことをいっているのに気づかず、自分には底辺を指導する義務がある。ただ高学歴なだけでうぬぼれている、子供頭勉強バカの自称識者。それを生ぬるく見ているだけの、私利私欲だけのチャラい雰囲気知識人。そんなテレビと、同族嫌悪のネットしかしか知らない、昔の俺たる現役ニートひきこもりが、自分の両親や清子叔母のような人に、頭ごなしに「世間一般の常識」を怒鳴られ、辛抱の限界を超えてしまい。その報道を見た、同じニートひきこもりがネットで。


 誰も救われない、スプラッターコントの無限ループ。


 中身のない自称識者、雰囲気知識人は、送迎付きのテレビであぶく銭を稼ぎ。事案を止められる知恵のある、真の識者、知識人は、チャリ通のバイト現場で、人知れず時給でしのいでいる。


 それが人生というものなら。自分も無神経な自称識者や、恥の概念がない雰囲気知識人に生まれたかった。繊細とまではいわないけど、メンタルを削られやすく、他人の目がいちいち気になって、道徳や正義に無駄に厳格な自分。お人よしだから、毒親のいいなりで子供部屋に軟禁されて、生きるしかばねとして今にいたる俺。馬鹿だよな・・


 啓一くんは、鍵を開けて自室に入り、ボススーツを脱ぎ。アニメ柄シャツに着替えてベットに腰かけ、つくづくそう思いました。バイトを2日間頑張った自分をほめてあげたくても。プラカードのバイトは、忍耐あるのみで少しも楽しくありません。たまたま「愉快な仲間たち」に助けられただけで。もし自分とマイルドニートの辰野くんと二人現場だったら? これをあとどれだけ続ければいいんだろう?


 プラカーダー剛。自分で名乗っているだけで、うだつがあがらないのわかる。っていったら失礼だけど。池谷さんは非正規を続ける秘訣は、このために金がいる。趣味を見つけることだっていってたけど。それって非正規生活30年の、確かな経験と実績から。君はもう非正規のバイトでしのぐしか、この先、生きる道はない。俺の立場、現状を見抜いて、傷つけないよう、遠回しにいってくれたのかな?


 他人からどう見られようと、今はもう気にならないけど。俺がバイト行く気になったのは、まーや帝国民NO1の男の称号を守るためで、それは今も同じだけど。


 バイトってのは、こんなにしんどいものだったのか・・


 啓一くんはうめくと、ベットに横になりました。部屋にこもること22年。ベットでごろごろしてるか、机に向かって、ネットで掲示板バトルしているか。立つのはトイレに行くときか、性筒でぱふぱふする時ぐらい。それが往復22キロ以上を走破し、休憩を挟んで6時間、一秒も休まず、2日連続で立ち尽くしたのです。


 マイルドニートなふるまいはともかく。辰野くんのように、普通に集合駅まで電車で行って。適当にトイレ休憩したり、給水したり、飴でもなめたりすれば、もう少し楽だったのでしょうが。啓一くんは小心さゆえの生真面目。融通がきかない性格で、へとへとに疲れてしまい。


「ごはんここに置いとくね」


 普段は無言な毒母の、「みそぎは済んだ」。職種はわからないが、なんだかの仕事に出た長男に。やはり自分の「しつけ」、「教育方針」は間違っていなかった。以前の啓一くんならブチギレ確実の弾んだ声も、爆睡している啓一くんの耳には届かないのでした。


 啓一くんは空腹も忘れて夢を見ていました。30過ぎて無職、実家子供部屋住まい、恋人なし年齢、友だちゼロひきこもり年数。言葉にできないほどの恥ずかしい気持ちと、当時はなぜかわからなかった、ただただ激しい怒り。独特の顔立ちで、自分よりふるまいが動物的に見える、アジア諸国、人を徹底的にさげすむネット右翼。それぐらいしか気持ちが晴れる、ような気がしたことはないので、そんなに熱心ではなかったけれど。マイルドネトウヨのようなことをしていた時。昼夜逆転問題なしの気楽な身の上でしたから、寝不足を気にせず見ていた、朝までの討論番組。


 なんとそれに「ニィーティスト代表」として、啓一くん、ウルトラニィト Hi! の矢野くんと出演しているのです。声こそくぐもっていてよく聞こえませんが、啓一くんは理路整然としたことをいい、元ニートひきこもり、現ニィーティストとして、現役ニートひきこもりを擁護し。ネットを切断して強行突入して、むりやり働かせる行政指導云々を主張する自称識者を論破し、こてんぱんにやりこめているようなのです。


 眠っていてもときめくことはできます。なんと同じパネリストの中に、ニートひきこもりを側の論客として、まーやがいるのです。そうしてボススーツ姿で、なぜか右手に大きなブランデーグラスを持ち。毅然と持論を話す啓一くんを、まーやが尊敬の目で見てくれているのです。


 夢を見ている暇があったら・・でも啓一くんは、不慣れなバイト現場で冷や汗。行き帰りの徒歩自転車で滝汗。バイトとはいえ、きちんと働いたのです。ひょっとしたらそのご褒美が、このいい夢なのかもしれません。それが嬉しい希望か虚しい現実か? 目が覚めてみなければわかりません。


 一ついえることは。これから目覚めた啓一くんが知るのは。自分はニートひきこもりから、一気にフリーターに出世したのではなく。ただのニートから、一つ格があがった「マイルドニート」なったこと。それを思い知り、「ニートフラッシュバック」に襲われる、ということでしょうか。


                      (^O^)/


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